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転生令嬢ヴィルミーナの場合  作者: 白煙モクスケ
第3部:淑女時代

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301/336

21:6

一部文章がR18ルールに触れそうだったので修正しました(8/15)

大陸共通暦1785年:王国暦267年:春

大陸西方メーヴラント:ベルネシア王国:西部某都市

――――――――――――――

 冷え込む春の夜更け。灯りの落ちた寝室に魔導式ストーブの淡い青光が揺れる。


 アラサー美女のカーヤ・ストロミロは一回り以上も年下の美少女イネス・バラーサに組み敷かれ、メリハリのある肢体を弄ばれていた。


 イネスに甘く冷たい言葉と性技に責め苛まれ、カーヤは肉の快と被虐の悦に喘ぎ哭く。

 はしたなく乱れるカーヤの姿に、イネスの嗜虐と情欲が一層燃え上がり、より激しくカーヤを貪っていく。


 白肌の美女と薄褐色肌の美少女が互いの肌を合わせ、美女の栗色の髪と美少女の淡い栗色の髪が混ざる。

 互いの唇が重なって舌が絡ませ、唾液と汗が交じり合う。


 2人が情愛と情欲を通わせる様は愛情深くも淫らで。

 寝室で奏でられる2人の嬌声は恋愛的で背徳的で。

 2人の睦み合いはどこまでも妖しく美しくて。


 快楽の熱で蕩けきるまで互いに貪り合った末、2人は完全に脱力してベッドに横たわる。

 カーヤは長い手足を巻きつけるようにイネスを抱きしめ、その小振りな胸に顔を埋めながら快楽の余韻に浸っていた。

 そんなカーヤの頭を慈しむように撫でながら、イネスは肉悦の残滓に揺蕩う。


 イネス・バラーサに与えられた“役割”はカーヤ・ストロミロという天才が十二分に能力を発揮できるようサポートすること。それは仕事の補佐だけでなく、生活の面倒から性的な“お勤め”まで含まれる。


 そして、イネスは役割に不満などない。

 生活力皆無のコミュ障持ちの天才を補佐し、世話し、面倒を見ることは大変だが、労苦に対して十分な給与を得ている。


 エルンスト・プロドームから役割を命じられ、この時代において不道徳極まる同性愛的性行為の務めを告げられた時も、イネスは平然と受け入れた。

 12の時から二年に渡って母の情夫に犯され、母から虐待されていた日々を思えば、カーヤとの性交など御飯事(おままごと)みたいなものだから。


 もっとも、そんな妥協は今や欠片もない。

 この関係にハマっているのはカーヤではなく、むしろイネスの方だ。


 男達を振り回す同性の鬼才を性技で弄ぶ支配感。長身の美女をはしたないほど肉悦に乱れさせる征服感。年上のおんなが臥所で幼子のようにいじましく振る舞う様がなんとも愛おしい。


 可愛い可愛い私のカーヤ様。

 イネスは愛情を込めてカーヤの汗ばんだ長髪を梳きながら、初めて閨の務めを申し出た時のことを思い出す。


 寝室にイネスが姿を見せた時、カーヤはイネスが困惑するほど取り乱した。思わず同性愛者という報告が間違っていたのかと疑うくらいに。


 半ベソを掻いたカーヤにワインを与えつつ事情を聴きだしてみれば、どうやら魔導学院時代のことがトラウマになっているらしい。

 寮で同室の女子生徒と愛し合うようになったが、関係が発覚すると相手は同性愛の事実を隠そうとし、あまつさえカーヤに襲われて関係を強要されたと言い出した。カーヤは平民で、相手は準貴族とはいえ令嬢だったことも、背景にあっただろう。


 繰り返すが、同性愛が排斥されていた時代だ。相手の行動は護身の一環。理解できなくもない。

 ただカーヤは本気で愛した相手に手酷く裏切られ、心を砕かれた。さらに有り余る才能に相応しい進路を断たれた。もしもエルンスト・プロドームに見いだされなければ、市井の変人として孤独な人生を送っていたに違いない。


 事情を知ったイネスは、カーヤが自身を信用して求めてくるまで様子見するか。あるいは――


 ともかく事実として、イネスは半ベソ顔のカーヤを押し倒した。緊張で震えるカーヤの唇を奪い、着衣を剥いで肌を重ねた。


 憐憫か。打算か。イネス自身にも分からない。

 一つ言えることは、今イネス・バラーサは公私ともにカーヤ・ストロミロのパートナーで、心からカーヤを愛おしく大切に思っている。


 赤子のように寝息を立てるカーヤの頭に口づけし、イネスも微睡みに身を浸す。

 可愛いカーヤ様。私は貴女を裏切ったりしません。決して。


       ○


 イネスを得て、カーヤ・ストロミロは大きく変わった、りはしなかった。

 仕事に没頭すれば寝食を忘れ、基本的な生活行動を放りだす。その度にイネスがカーヤの私室やオフィスを清掃して片付け、幼子を世話するように、仕事場から自宅へ連れ帰り、食事を与え、風呂に入らせ、眠らせ、清潔な服に着替えさせ、化粧をばっちり施し、出勤させる。


 シモン・フランソワ・ディメはこの様子を「手間のかかる幼児の世話をしているというか、犬猫を飼育しているというか」と称している。


 ともあれ。


 イネスの献身的な世話と補佐により、カーヤの仕事能率と作業効率は大きく上がった。褥を共にするようになってからはその鬼才振りに磨きが掛かっている。


「性欲の発散になれば、程度に考えていたけれど……愛は偉大ということだね」

 下世話な御節介を働いたことを棚に上げ、エルンストは自身の手配を迂遠に自画自賛した。


 さて。


 レース大会まで残り三月ほど。

 常識で考えれば、マシンの開発を終えてレーサーの慣熟訓練とマシンの調整に入る時期だ。

 しかし、ステラヒール社は未だ開発を終えていない。まぁそんなところは他にもあったが。


 ステラヒールがマシンの開発を完了していない理由は一つ。

 新型エンジンの開発が進んでいないからだ。


 イネスと寝室で乳繰り合うようになって以来、カーヤはキレッキレで『レース大会用に新しいエンジンを設計した』と言い出した。

 設計図や仕様書を精査した限り、カーヤの新型スターリング・エンジンもとい、ストロミロ・エンジンは従来のエンジンより優れていた。


 従来のストロミロ・エンジンは加熱気筒4本と冷却気筒4本をVの字に据えて、温度差が大きくなるようにして出力を向上させたアルファ式V型8気筒エンジンだった。


 新型のエンジンは加熱と冷却を1気筒内で完結させるダブルアクティング式V型4気筒エンジン。従来に比べてエンジンを小型軽量化しつつ高出力化できる。


 が、熱交換機の取り回しやピストン駆動機構などの構造が複雑化するし、高精度かつ厳重なシーリングが求められる。技術的なハードルが高く整備がとても困難になる。


 ぶっちゃけ、ステラヒールの工作技術と製造能力では精度的にかなりキツい。さらにステラヒールの人的能力面から見ても、とてもキツい。


 だが、カーヤは妥協しない。

「このエンジンならレギュレーション内で最も高出力を発揮する。他の蒸気エンジンよりも速いマシンを作れる」


「確かにな。でも、こいつはキワモノすぎる。製造段階で精度が甘ければ間違いなく故障するだろうし、整備が十全に出来なくてもアウトだ。最悪走行中にピストンが吹っ飛びかねん」

 シモンが難しい顔つきで応じるも、カーヤは噛みつくように言い募る。

「社長は完走できなくても良いと言った」


「多くの金と資材を使って最初から負けを見込んだ博奕をするのは、会社と社長に対して不誠実だろう」とシモンがもっともな回答を返す。


 カーヤは拗ねるように頬を膨らませ、

「ステラヒールはエンジン優先。エンジンに合わせて作る。つまり、私の意見が第一」

「それも確かにな。だがね、ストロミロ主任技師。制作管理者として俺には最善の成果を目指す務めがある。この新型エンジンは今のウチには手に余る。従来のエンジンをチューンアップする方向で収められないか?」

 シモンが代替案を提示するも、納得しない。

「――なら作れる人間を集めれば良い」


「んん?」と訝るシモンへ、

「社長は能う限り支援するとも言った。だから、資金や資材だけじゃなくて人間も用意してもらう」

 カーヤの言い分にシモンは目を瞬かせ、次いで、ガハハと笑う。

「なるほど。金や資材だけでなく人間も、か。社長に相談してみよう」


      ○


 ステラヒールが盛り上がっている頃、市井のマッド達もやる気満々だった。


 たとえば、強烈なマッドであるクェザリン郡の技術屋共も、レースに参加する気満々だった。

ゼーロウ男爵家代官領クェザリン郡のマッド共は今や『クェザリン・ワーケン』と名乗る技術集団となっていた。筆頭出資者はゼーロウ家、を経由した王妹大公家である。


 マッド達はいつも通りマッドだった。

「車輪、四つも要らなくね?」「じゃあ、前輪二つの後輪一つで」「マジか。旋回時の安定に欠くぞ?」「チャリンコみたく運転手が体を動かして荷重を掛けりゃヘーキヘーキ」「仮に事故っても死ぬのは運転手だ。俺達じゃねェからヨシッ!」「ははは~」

 イカレてる。

 余所のマッドも大概だったが、やはりクェザリンのマッドはヤバい。


 ちなみに参加希望者はベルネシアに留まらない。イストリアやクレテアからも少なからず参加希望者がいた。


 特に、クレテアの若者達は特に意気軒高だった。

 大クレテア王国は協商圏の設立後、人材育成/開発を目的とした高等教育機関(グランゼコール)を創設した。従来の大学や魔導学院が聖職者や貴族、その子弟しか入学できなかったことに対し、高等教育機関は平民にも広く門戸が開かれていた。


 グランゼコールの王立高等師範学校、王立工芸院、王立理工科学校の三校はエリートやテクノクラート育成機関として開花している。そして、王立理(エコール・)工科学校(ポリテクニーク)の生徒達は隣国のお祭りに参加する気満々だった。


 元来、クレテアとベルネシアの関係は険悪な物があった。ただし、ベルネシア戦役から20年近く過ぎて協商圏の準同盟国関係に至り、地中海戦争で共に戦ったことから、クレテア人の反ベルネシア意識はいくらか和らいでいる。


 何より、ベルネシアで開催されている自転車競技大会や障碍者陸上競技大会には、クレテア人選手が参加して久しく、クレテア人優勝者も現れている。協商圏内で国際的な蹴球大会が催された時は、聖冠連合とアルグシアから『なんでウチを誘ってくれないのっ!』と苦情が来たほどだ。


 つまるところ、小癪なイストリア人や小生意気なベルネシア人を正々堂々と競技で鼻を明かす。高慢かつ勇敢さを尊ぶクレテア人の気質にぴったりだったわけだ。

 そんなわけで、協商圏内では蒸気自動車レース大会に向けて盛り上がっていた。


 一方。


 東メーヴラントではカロルレン軍の春季攻勢に先駆け、アルグシア連邦の春季反攻が行われていた。

 弱体化の著しい東部軍ではなく、新領土権益を失ってブチギレた北部閥が中心の重編成3個歩兵師団と2個騎兵連隊。さらに南部閥からも4個旅団が投入されている。


 戦線南北からの挟撃攻勢に対し、カロルレン第一軍と第二軍は一時的な後退と反撃を繰り返し、アルグシア南北軍の突進力減退を図った。加えて、北部軍の攻勢を押さえ、少数の南部軍を逆撃で破る計画が進められた。


 後世の戦史家が『紙一重の策』と評したこの計画は、優勢なアルグシア北部軍の抑えることが要諦であり、そのため矢面に立つ第二軍を支えるべく最大限の努力が払われた。


 もちろん、アルグシア側とて第二軍を弱らせるため、翼竜騎兵や民兵による兵站線の襲撃を加え続ける。

 飛空船の空輸。輜重隊の陸運。どちらも損害を重ね、第二軍の兵站線が細く衰えていく。


 攻勢下にあった第二軍の苦境を示す一例を挙げよう。

 第二軍将兵の食事量は北部軍の攻勢開始時、一日三食の定量が給与されていたが、攻勢開始からわずか十日で一日一食まで減らされたという。


 この厳しい補給状況を最後まで支え続けたのが、急遽投入された装甲ロードトレインだった。

 ラインハルト・ニーヴァリ少佐の指揮下から8輌の装甲ロードトレインが兵站部のレグニッツ大佐の管理下に置かれ、第二軍の支援に回された。


 この装甲ロードトレイン団は後に兵士達から『レグニッツ運送』と呼ばれるようになった。

『レグニッツ運送』の装甲ロードトレインは大口径手動式機関銃と平射砲を装備し、翼竜騎兵の空襲をしのぎ、民兵の破壊工作を払い除け、最低限の補給を第二軍へ送り続けた。


 ロードトレイン勤務は常に敵襲を受ける危険なものだったが、ロードトレインを稼働させる整備兵こそ過酷極まりなかった。なんたって整備兵達はベルネシア人技師から数カ月~数週間の促成教育を受けただけだった。そんな彼らが文字通り不眠不休で稼働状態を維持し、部品不足や知識不足を機転と思い付きで補い、無理やりロードトレインを走らせ続けたのだ。


 春の戦いが終わるまでに2輌が戦闘で完全に破壊され、3輌が修理不可能な故障から脱落したが、残る3輌が物資を過積載して第二軍を支え抜いた。


 この活躍と運用の報告書はベルネシア本国と白獅子財閥にも届けられ、特に白獅子の技研を大いに喜ばせた。


 自社製品が活躍したことを、ではない。


 戦場での実戦データと臨機応変なノウハウなど貴重な情報を得たことに歓喜したのだ。

 白獅子財閥にとって、第三次東メーヴラント戦争は実験場でしかなかった。


     ○


 ただ走るだけなら、ミニ四駆と同じで動力と駆動系と足回りを揃えれば良い。そこに操縦系を組み込めば、自動車の完成だ。


 動画サイトを検索すれば、ド素人がDIYで蒸気機関自動車や原チャリのエンジンを積んだミニカーをこさえるものが山ほど見つかる。


 ちょっと手先が器用な子供が夏休みの自由研究に空き缶で蒸気機関を作ったり、工業高校や高専の生徒が卒業制作で自作の原付ミニカーを作ったり、なんて話は決して珍しくない。発展途上貧困国で小型耕耘機を改造して自動車代わりに、という話も少なくなかった。


 要するに工作技術と構造的知識を持っていれば(あとお金があれば)、黎明期水準の自動車を自作することは決して不可能ではない。


 ヴィルミーナはワークスの工房を視察で訪れ、制作された二台――本機と予備機のマシンをしげしげと眺める。


 小型舟艇を思わせる細くスマートなカウリングは、地球史1900年代に登場した蒸気機関レースカー(有名なホイッスリング・ビリー)のようだ。配置は前方からカマボコ型ボイラー。駆動部。燃料と水のタンク。最後部に複座シート。車体両側面排気管。車体下部に駆動軸を配した後輪駆動。タイヤは現代の小型二輪車並みの細さ。


 そして、艶やかなミッドナイト・ブラックに塗られたカウリングの両側面に、赤い盾とチューリップをくわえた白獅子の紋章が描かれていた。


 地球史19世紀に登場した蒸気自動車が馬車型や貨物車型が中心だったことを考えれば、技術的先行者である白獅子らしい“チート”なマシンだろう(ただ同時代でもレースカー使用車は様々な軽量化や小型化が図られていた)。


「複座式なのね」

 ヴィルミーナの指摘に、名優マット・デイモン似のワークス主任技師が応える。

「搭乗者は運転手と機関士になります」


「ふむ。運転とボイラー管理の役割分担が必要なのか」

 ヴィルミーナは車体を眺めて回り、

「マシンの名前は?」

「型式登録でモデル84R。Rはレース仕様を指しています」

「車体の愛称はあるの?」

「本機にアルファ、予備機にベータと」

「味気ないわね」

 くすくすと楽しげに笑って、主任技師へ言った。

「マシンの愛称は好きにして良いわ。貴方の御家族の名前を冠しても良いし、皆で相談して付けても良い。可愛がって扱いなさいな」


「よろしいのですか?」と主任技師が戸惑い気味に問い返す。

「構わない。世界初の機械車輛競技大会よ。歴史に名を残す栄誉は貴方達のものなのだから」

 ヴィルミーナの言葉に主任技師を始めとするワークスの面々が歓喜を湛えた。


 視察に同道していたマリサが拗ねたように唇を尖らせる。

「そういうことなら、尚のこと、あたしが運転したかったなあ」


 マリサはレース車のドライバーとして参加を目論んでいた。が――

「ダメッ! 絶対にダメですッ!」「あんたは運営側でしょーがっ!」「立場を弁えて下さいっ!!」「万が一ボスの身に何かあったら、総帥に殺されちまいますっ!」「御自重っ!」

 部下達の猛反対に加え、アレックスやニーナ達から『大会実行委員長がドライバーとか無いでしょ』と釘を刺されてしまい、どうにもならず。


「立場を考えなさいな。それに、大会実行委員長が運転手を務めて優勝して御覧なさい。お手盛り大会だったなんて言われるわよ」

 ヴィルミーナも微苦笑をこぼしつつ、マリサを窘めた。


「総帥。彼らが大会にてマシンに乗るドライバーとエンジニアです」

 ワークスの総監督が運転手と機関士を紹介する。


 乗馬服を改造した着衣をまとう運転手は、オージーの俳優ルーク・ブレイシーを思わせるイケメン。

 やはり乗馬服を改造した衣服を着る機関士は宮崎駿アニメに出てきそうな髭面のオヤジ。


「レクス・ヴァン・ハウブルトです。よろしくお願いします」とイケメンが丁寧に名乗り、

「ヨブ・ヴァンダーカム。お会いできて光栄です、総帥」とオヤジが一礼。


「よろしく、ハウブルト君。ヴァンダーカム技師」

 ヴィルミーナは2人と握手した後、イケメンのハウブルトに尋ねた。

「ハウブルト君。失礼だけれど、マウリッツ・ヴァン・ハウブルトの御親族かしら?」

 マウリッツ・ヴァン・ハウブルトは白獅子財閥の流通事業部重役だ。


 イケメン・ハウブルトは少しばかりバツが悪そうに眉を下げ、答える。

「はい。マウリッツは俺、失礼しました。自分の伯父になります。自分は翼竜騎兵を満期除隊後に、その、プラプラしているところを伯父に誘われまして」


「言葉遣いは自然で良いわ」とヴィルミーナは喉を鳴らし「貴方の伯父御殿はよく働いてくれている。貴方にも伯父御殿に負けぬ活躍を期待するわ」

「御期待に応えられるよう頑張ります」とイケメン・ハウブルトが力強く頷く。


 柔和に微笑み、ヴィルミーナは髭面親父へ向き直る。

「ヴァンダーカム技師。この“子”達はどう?」


「こいつらは少々じゃじゃ馬気質ですが、大したもんです」

 ヴァンダーカムは髭を震わせるように笑い、自信たっぷりに言った。

「大会を楽しみにしていてください。白獅子の看板に相応しい走りをお見せしますとも」


「結構。大いに結構」

 ヴィルミーナは2人とワークスの面々、マリサ達が息を呑むほど美しい笑みを浮かべ、告げた。

「世界に見せつけてあげなさい。先駆者たる白獅子の力を。貴方達の優秀さを」


      ○


 そして、迎える共通暦1885年の夏。

 メーヴラントの東と西で趣の違う熱戦が繰り広げられる。


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― 新着の感想 ―
[良い点] しょっぱなのカーヤとイネスのアレコレ。 ギィのアレコレに続いてR18ルール違反が心配。 『クェザリン・ワーケン』達のマッド振りが素敵。序でに白獅子の技研に所属する人達も。安全運転って言葉…
[一言] 冒頭部分大丈夫?
[良い点] 盛り上がってきて、更に面白くなりました。 間に装甲ロードトレインの話を挟んだのが 上手いですね。
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