閑話27b:ユリウス5世の突撃
『向こうの弾は届いて、こちらは届かない。向こうは隠れていて、こちらは身を晒している。こんなの公平じゃない』
クラトンリーネ会戦を生き延びたランドルディア兵が家族へ送った手紙の一節である。
実のところ、ランドルディア軍の扱うアルグシア製元込め銃は、椎の実弾頭の紙薬莢式弾薬を用いて、射程が最大で6~800メートル届く。
クレテア軍の遊底駆動式小銃は蛋形弾頭の金属薬莢弾薬を使って、最大射程が1000メートルを超える。
が、実際に歩兵が最大射程で戦うなどあり得ない。撃っても当たらねえもん。弾の無駄。
加えて、戦闘中――戦塵と煙硝漂う戦場で敵弾に身を晒しながら発砲した場合、カタログのいう『狙って当たる距離』で撃っても、やっぱり当たらない。
クラトンリーネ会戦では、クレテア軍が400メートル前後から統制射撃の弾幕を張り続けた。
この距離ならランドルディア軍の戦列斉射も充分届くはずだが、ここでカタログスペックには載らない事情が作用する。
砲撃や銃弾の弾幕に晒されながら、塹壕に半ば身を潜める敵をまともに狙って射撃が出来るか、という話だ。
この戦況を生んだ要素は、兵器の差ではなく戦術や戦闘教義の差だ。加えて、兵士の練度の差も無視できない。
クレテア銃兵達は敵弾に晒されながらも、冷静に戦い続けていた。
射撃をした後、流れるように槓桿を引いて遊底を下げる。励起反応に焼けた金属薬莢が排出され、泥に落ちて湯気を燻らせる間に、装填口へ新たな弾を入れ、遊底を押し込んで薬室へ弾を送る。そして、銃を構えて狙いを定め、指揮官の号令に合わせて引き金を引く。
連続射撃を繰り返し続けた結果、小銃や機関銃が故障や不具合を起こしても、充分な訓練を積んでいたクレテア兵は動じることなく問題に対処し、射撃を再開した。
機関銃の激発ハンドルや小銃の槓桿が折れたり曲がったりしても、ガンオイルの品質から励起反応熱で焼き付きを起こしても、不意の部品破損にも、異物混入による不具合にも、弾薬の工作精度や品質などから空薬莢が裂けて薬室に貼りついたり、薬室や排莢口に詰まったりしても、兵士達は訓練通りに、もしくは臨機応変に対処して戦い続ける。
クラトンリーネの街にあるクレテア東部軍第32軍団総司令部もまた、絶え間なく変化する戦況に慌てることなく対応し、作戦指揮を執り続けていた。が、前線諸部隊と同様に酷く忙しかった。
両翼の防御は上手くいっており、中央の誘引も順調に進んでいる。ただし――
「弾薬消費量が想定以上です。このままだと本当に軍団の備蓄を使い切りかねません」
「使い切っても構わん。弾切れで犠牲を出すよりマシだ。補給を絶やすな。街の馬匹や馬車、人間を徴用しても良い。急げ」
ベルネシア戦役後、14年の歳月をかけて近代化し、高い練度を蓄積していたクレテア軍であるが、近代化後の実戦経験が乏しかった。弾薬消費量の見込みが甘く、前線への補給に四苦八苦している。
第32軍団総司令官のグラモン中将は窓を窺う。雨脚は弱いままだが、止む気配はない。この土地の冷涼さを考えると、野営の手当てをしておかねば疾病が流行るかもしれない。ベルネシア戦役で銃弾に倒れるより凍傷と疾病に倒れる者の方が多かったことを、忘れていない。
同時に、グラモン中将は従来の軍略を知り尽くしている世代の人間として、ランドルディア側の動きを察していた。
「そろそろ空と騎兵の警戒を強めておけ。両翼が膠着すれば投入してくるぞ。それと中央だ。そろそろ動かす」
グラモン中将は戦況図を見下ろしながら、思案する。
ランドルディア軍はこのまま中央を突出させるのか。それとも、中央から転進して両翼の支援に回るのか。
相手の選択肢によって、どれほど痛めつけてやれるかが決まる。
いや、後詰の1万を引きずり出し、決定的な打撃を与える方が良いかもしれない。
老農夫然とした顔に軍人らしい獰猛さを浮かべ、グラモン中将は参謀長へ言った。
「少々冒険してみるか」
○
オヤツ時が迫った頃、戦場の中央でいよいよ本格的な交戦が始まった。
街道の上空で双方の翼竜騎兵が魔導術を撃ち合う。雨の関係か水系や氷系魔導術が多い。クレテアの翼竜騎兵達は積極的に戦わず、ランドルディア翼竜騎兵の牽制と妨害に専念している。あくまで地上部隊の上空援護が主らしい。
そうして、攻防が繰り広げられる空の下、幹線道路沿いに進撃を続けていたランドルディア軍中央部隊2万は、クレテア軍第72銃兵旅団と第74銃兵旅団が張った迎撃線へ頭から飛び込んだ。
道路沿い集落の家屋に潜んだ平射砲や直射砲が火を噴き、塹壕に据えられて地表すれすれから弾丸をばら撒く手動式機関銃が、ランドルディア軍の最前衛を射止めた。
足を止められたランドルディア軍の戦列へ、クレテア軍の騎乗砲兵がロケット弾を浴びせる。
新機材のロケット弾発射器はベルネシア軍が用いた『蜂巣』と同じく、陳腐なほど簡素な構造をしている。要は発射筒たる鉄管を何本も積み重ね、馬で牽引できるよう架車に積んだだけだ。
その鉄管の束にロケット花火のお化けを装填して魔導術で点火すれば、あら不思議。ロケット弾の群れが一定範囲へ降り注ぐ面制圧兵器になりましたとさ。
命中精度も破壊力も火砲の集団効力射に劣るが、効力範囲内の瞬間火力と焼夷効果、破片散布面積は火砲に優る。
炎熱の雨に打ちのめされたランドルディア軍前衛部隊が士気崩壊を起こしたところへ、クレテア銃兵旅団の一部がタコツボや塹壕から飛び出し、逆撃を開始する。
クレテア陸軍はベルネシア戦役の敗北から14年の歳月を費やし、これまで蓄積してきた隊形戦術や戦列運用から脱却し、戦闘教義の刷新を実現していた。
ベルネシア陸軍はそれこそ分隊や小隊規模に分かれて運動するが、クレテア陸軍はそこまで小部隊で動く意義を認めず、隊形戦術時代の火力を考慮して運動最小単位を中隊、作戦最小単位を大隊と定めた。
大隊に与えられた攻撃目標を各中隊が地形を利用して運動、相互に連携しながら射撃&機動を繰り返す。もはや戦列を組んで敵前を行進。なんて二度としない。
逆撃に出たクレテア部隊は、こうした新戦闘教義に則って攻撃を始める。
中隊単位に分かれて地形なりに運動。機関銃班が提根付き銃架に乗せられた手動式機関銃を神輿のように担ぎ、射撃位置につくと掃射を開始。その間に銃兵が移動して地面に伏せたり、物陰に身を隠したりしながら速射を重ねる。そして、擲弾銃班の援護攻撃の下、再び機関銃班が移動していく。
そうして2個銃兵旅団はランドルディア軍を削りながら半円状に両端を伸ばし、ランドルディア軍中央部隊を半円状に包み始めた。
ランドルディア軍中央部隊の指揮官はクレテア軍の意図を見抜き、激怒した。
「たかだか2個旅団で2万を半包囲する気かっ!? 背教者共が、なめくさりおってっ!」
限られた戦力で両翼を伸ばせば真ん中が薄くなる。となれば、中央突破を図って分断後に各個撃破が常だ。
「騎兵を出せっ! 中央突破だっ! ぶちぬいてやるっ!」
ところがぎっちょん。
「まあ、私でもそうするだろうな」
グラモン中将は偵察の報告を聞いてにんまりと笑い、
「しかし、彼らは忘れているようだ。彼らの前進が我々の“誘引”だったということを」
命令を出した。
「支援砲兵へ伝えろ。“予定座標”へ全力射撃だ」
ランドルディア王国軍騎兵は騎士階級や貴族子弟、その縁者によって形成されている。
クォーターアーマーや全身甲冑を着込んだ重装騎兵はもちろん、胸甲と兜だけ装着した軽騎兵も、ランドルディア貴族制の土台を支える下級貴族とその兄弟や息子達だ。
その貴き血を持つランドルディア騎兵達がクレテア軍榴弾砲の効力射に飲み込まれていく。
彼らも彼らの駆る馬も砲弾に引き裂かれ、砕かれ、吹き飛ばされた。彼らの貴き血肉は大地に撒かれ、雨水と混じり泥濘となり、大地の養分となった。
運命の女神が放ったサイコロの出目により砲火を潜り抜けた者達も、機関銃の弾幕と平射砲の散弾に捉えられ、泥濘に倒れていく。
その間にも、逆撃に出たクレテア銃兵部隊は攻撃を継続し、半円状陣形の両端からランドルディア軍中央部隊の兵力を削ぎ落し続けていた。
ランドルディア中央部隊は騎兵部隊が為す術なく壊滅し、両側から兵力を削がれていく状況に音を上げる。
「おのれええええっ!! 後退、後退だっ! 後方の集落まで下がれっ!! そこで立て直すっ!」
雨に濡れているのか冷や汗に塗れているのか分からない中央部隊指揮官は、がなるように命令を発し、次いで伝令に命じる。
「予備兵力の投入を要請しろっ! いや、魔導騎士団だっ! ベルサリエリを寄こすよう言えっ! 通常戦力ではあの弾幕を突破できんっ!!」
○
高地、丘陵、幹線道路。各戦闘の“惨劇”。ランドルディア王国軍総司令部は誰もが顔から血の気を引かせている。
中央部隊からの応援要請の是非を議論する参謀達を余所に、軍務大臣が胃痛を堪えるような顔で言った。
「……これ以上の損害は軍の維持に危険が生じます。陛下。撤退を進言します」
「撤退?」
戦況の凄惨さに顔を青くしていたユリウス5世は、軍大臣の進言を理解すると、一転して顔を真っ赤に染める。
「撤退だとっ!? バカなっ! まだ我が軍には無傷の予備兵力が残っているっ! 魔導騎士団とて健在だっ! これを投じれば戦況を覆せようっ!!」
「陛下、既に全軍の死傷者は1万を超えているでしょう。これ以上の損害を被れば、軍の維持そのものが危うくなります。
まして我が軍の最精鋭ベルサリエリを失えば、士気に回復不可能な打撃を被るだけでなく、我が国の貴重な高位魔導士が失われてしまいます。そうなれば、取り返しがつきませんっ!
今なら主力を維持して脱出できますっ! 諸国軍と連携を取れば、クレテアとも戦えましょうっ!」
軍務大臣も顔を真っ赤に染めて訴える。彼の言葉は真実だった。
「なにとぞ御決断をっ!」
「ならんっ! 2万もの数的優勢を持ちながら一方的に敗走したとなれば、それこそ士気が底まで落ちるっ! クレテア本隊7万が到着したら二度と戦えんっ! ましてや諸国などは我が国を酷く侮ろうっ! 連携どころか、こぞってクレテアにすり寄るわっ!!」
ユリウス5世の意見も正しい。
将兵はクレテア軍の凄まじい火力をその眼で見て、その身で体験した。たった3万でこれほどの殺戮と破壊を可能とするのだ。これに7万もの大軍が加わったなら、将兵の士気はどん底まで落ちるだろう。銃弾一発砲弾一発で士気崩壊に駆られ、逃げ出しかねない。
それに、数的優位な状況でクレテアに敗北したとなれば、諸国が手の平を返すことも予想できた。なんせコルヴォラント諸国にはランドルディアより強力な陸軍を持った国がない。
風見鶏気質のモリア=フェデーラなどクレテア軍の旗が見えた時点で降伏するか、裏切ってランドルディア王国を攻撃しかねない。
ヴィネト・ヴェクシア共和国やフローレンティアにしても、ランドルディア王国が蹂躙されている間に手打ち工作を試みるだろう。元々裏切りそうなベルモンテやナプレは言わずもがなだ。
ここで大出血を被り、最終的に撤退の憂き目を見るにしても、眼前のクレテア第32軍団に痛打を与え、ランドルディアが戦えることを示さねばならない。でなければ、クレテアと講和交渉も持てない、はずだ。
「もはや仕儀は無用っ!」
ユリウス5世は吐き捨てるように言い、天幕内の全員を見回して吠えた。
「後詰は余が自ら率いるっ!! 卿らが付き従わぬならそれで構わんっ! 共にあらんとする者のみ来いっ!」
「陛下っ!!」
顔を真っ青にする軍務大臣。司令部の将官達も『お待ちください、陛下ッ!』『危険すぎますっ! ご再考をっ!』『しばらくっ! しばらくっ!』と翻意を促す。
も、ユリウス5世は一切の声を無視して天幕を出て、雄叫びを上げる。
「馬、引けぃっ!! 出陣じゃあああああああああああああああっ!!」
○
後世、クラトンリーネ会戦といえば『ユリウス5世の突撃』である。
ランドルディア軍最精鋭の魔導騎士団を前衛に、国王自ら率いる近衛騎士団が続き、王国軍将兵が伴って大突撃を実行した。
王を中心に魔導術士、騎兵、歩兵が一丸となって突撃する様は全くもって叙事詩的であり、コルヴォラント的ロマンティシズムが現実に顕現した事例、ともいえる。
コルヴォラント的ロマンティシズムが顕現した事例、ともいえる。
実際、クレテア東部軍は度肝を抜かれた。
もさっとしたライチョウの羽飾りが付いたツバ広の高山帽を被り、インバネスコートを羽織ったベルサリエリの魔導術士達――一個中隊150名以上の高位魔導士達が猛烈な銃砲弾幕の中、犠牲を払いながら集団魔導術を使った。雨水を用いて巨大水塊を作り出し、半円状陣形のクレテア銃兵旅団へ叩きつける。
大質量の水塊は激流と化し、クレテア軍二個銃兵旅団の半円状陣形、その中央部分を文字通り押し流した。
そうして、幹線道路に大きな突破口を築き、ベルサリエリの魔導術士達は巨大な泥傀儡(目撃者達は山のようにでかいナメクジと呼んだ)を作り出し、突撃を開始。
「進めっ! 進めェいっ!! 余は諸君らと共にありっ! 我に続けェいっ!!」
馬上で聖堂騎士の剣を掲げ、雄々しく吠えるユリウス5世。
「陛下に続けっ!!」「陛下に後れるなっ! 駆けろ駆けろっ!」「突撃じゃあああっ!!」
王の勇敢な鼓舞に刺激され、近衛もベルサリエリも傷つき疲れた将兵達も猛り狂ったように雄叫びを上げ、突っ走る。
巨大泥傀儡が火砲の効力射や小銃の弾幕を受け止めながら(砲弾で吹き飛ばされるたびに補修しながら)幹線道路を激走。その背後に王が率いる近衛騎士団とベルサリエリの山岳兵、中央部隊の残余が続き、魔導術士達が氷や土壁で王の側面を守り続ける。
たとえるなら、道路を泥色の巨大なナメクジがブルドーザーの如く突き進み、その後に幹線道路の両端に高速道路みたく防音壁が立っていく、みたいな光景だろうか。
繰り返すが、クレテア兵達は度肝を抜かれた。
魔導技術文明世界古代の神話や伝説みたいな出来事と光景に、前線の将兵もグラモン中将以下第32軍団司令部も、観戦武官のユルゲン・ヴァン・ノーヴェンダイクも、イストリア観戦武官も、目と口を真ん丸に開いて言葉を失くしている。
メーヴラント人は銃砲主体の戦争――少数の超越的な個頼りの戦いではなく、大多数の凡庸な衆による戦いに転向して久しい。大量破壊魔導兵器ですらなく、高位魔導術士達の途方もなく時代錯誤な力押しに、理解と認識が追いつかない。
余談ながら、クラトンリーネの住民も旧防壁や建物の高層階などからこの様子を見物しており、あんぐりと口を開けて唖然呆然としていた。
とはいえ、軍事的現実は待ってはくれない。一瞬で最前線に大穴が開き、そこから二万強の敵が一直線に街へ迫ってくる。
「なんとまぁ……竜玉より高価な高位魔導術士を一個中隊も集めれば、こんなこともできるのか……」
窓の外の光景に絶句するグラモン中将。
「費用対効果で言えば恐ろしく馬鹿馬鹿しいですが、この戦況には有効と認めざるを得ませんな」
隣で辛うじて冷静さを保つ参謀長を横目にし、グラモン中将は理性を取り戻したのか、憤慨して眉目を吊り上げた。
「ピエール。策だ。あの時代錯誤も甚だしい大馬鹿者共を潰す策を言え。こちらの手札は軍団直属戦闘団と重装騎兵一個大隊、それと補給に戻っていた騎乗砲兵のロケット部隊、先ほどの広域魔導術の範囲外だった支援砲兵。あとは軍団付の魔導術士達だ」
参謀長は数秒ほど考え込んだ後、グラモン中将へ提案する。
「こちらも古典的手法で迎え撃ちましょう。支援砲兵の榴弾砲を前に出して近距離阻止砲撃。あれっぱかしの泥の塊くらい撃ち抜けるはずです。それと、ロケットで側面砲撃し、泥傀儡の後続を漸減。彼らは王と近衛が危機に陥れば、足を止めざるを得ません」
「戦闘団で陣地防御はしないんだな? それに、騎兵はどうする?」
「砲とロケットで足を止めたところへ逆襲に投入し、頭を押さえる。また中央を突破された二個銃兵旅団も両端は無事ですから側背を突かせます。仕上げに重装騎兵大隊を投じ、踏み潰す。如何ですか?」
グラモン中将は参謀長の献策を数秒思案し、
「やろう。手配を急がせろ」
命令を下す。窓の外へ目を向け、一心不乱に突進してくる泥色の巨大ナメクジを睨む。
「時代遅れの気狂い共め」
○
支援砲兵隊が大急ぎで街の前面へ再配置された。
据えられた大口径榴弾砲の射角はほとんど水平に等しい。巨大泥傀儡へ高初速で榴弾を叩きつけるため直射を行うのだ。危険極まりない任務だが(水平直射は自分達も榴弾の破片散布界に含まれる)、勇敢なクレテア砲兵は怯えたりしない。目の前の異常な事態にも『俺達にぶっ飛ばせねェもんは無い』と意気軒高。
砲撃をより確実なものとするため、搔き集められたクレテア軍魔導術士達が集団魔導術の準備を始める。彼らの能力はベルサリエリに劣るため、魔導術の攻防戦では勝てない。あくまで砲撃の補助と支援だ。ゆえに、仕掛けるタイミングが肝となる。
砲兵と魔導術士達が巨大泥傀儡を撃破することを信じ、軍団直属戦闘団が迎撃の用意を進めていく。
その編成は軽騎兵中隊と騎乗砲兵中隊。擲弾兵大隊と手動式機関銃を搭載した馬車からなる機動打撃部隊で、南小大陸独立戦争へ干渉した際、活躍していたカロルレン義勇兵部隊(ラインハルトという若い指揮官の部隊だった)を参考に創設された。
予定では追撃に投入するはずだった虎の子部隊を引きずり出され、グラモン中将は業腹だ。
そんな中、第219重装騎兵大隊は湧いていた。
「敵の最精鋭に近衛、しかも王まで居るってよっ!」「マジかよ、最高じゃねーかっ!!」「王の首を獲ったら末代まで語られる大手柄だっ!」「ひゃっほーっ!」
クレテア重装騎兵もまた、ランドルディア騎兵と同じくクレテアの騎士階級や貴族子弟、その従士家系の者が主体だった。その気質は個人主義的傾向――自身の名誉や武功を重視する――が強い。
彼らは敵の最精鋭部隊と近衛を相手にチャンバラ出来ることに興奮し、敵国の王を討ち取れる機会――後世に語り継がれるほどの大手柄を得る好機にテンションMAX。脳筋ってやぁね。
そして、クラトンリーネ一帯を覆っていた雨雲が薄れ、ぱらぱらと注いでいた小雨が止み始めた矢先、市街の前面にランドルディア軍の津波が迫った。
会戦の大一番が始まる。
今日中にもう一本上げます




