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転生令嬢ヴィルミーナの場合  作者: 白煙モクスケ
第2部:乙女時代

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151/336

13:6

大陸共通暦1769年:ベルネシア王国暦252年:秋。

大陸西方メーヴラント:ベルネシア王国:王都オーステルガム。

――――――――――

 カスパーによる暴露と告発が行われた翌日。

 宰相ペターゼン侯は朝早くにエンテルハースト宮殿の国王執務室へ呼び出され、国王カレル3世からカスパーの告発内容を聞かされた。


 朝っぱらからとんでもない内容を知らされ、ペターゼンはしばし絶句し、内心の動揺を表すような大きく息を吐いた。

「恐ろしい」


 その一言は“どこ”へ向けられたものだろう。とカレル3世は他人事のように思う。

 信頼性が失われた王国府外務筋か。帝国宰相の幾重にも連ねられた謀略か。それとも躊躇なく報復案を提示してきた我が姪か。あるいは、この20年余に至る“我々の”クリスティーナに対する仕打ちか。


「粛清を行うぞ。爵位も職務も関係ない。現状ではとても信用して仕事を任せられん」

 カレル3世は心底忌まわしそうに吐き捨て、強い眼差しをペターゼン侯へ向けた。

「本土と外洋領土を問わず大掃除を行う」


 今回の件は王国府内と帝国総領事館だけの問題とは思えない。おそらく大なり小なり各外洋領土統治府でも似たようなケースがあるはずだ。

 膿は徹底的に取り除かねばならない。


 最悪……造反や蜂起の類も生じるかもしれない。

 が、そうした事態を差し引いても、この機は逃せない。アルグシアがカロルレンを襲うのに注力し、クレテアが内政に掛かりきりの今を除けば、干渉を恐れず大掃除を出来る機会はなかろう。


 ペターゼンは少し考えこんでから主君へ回答を返す。

「おそらく、国際会議で帝国側がリストを寄こすはずです」


「売国奴共のリストをその飼い主から受け取るのか……物笑いの種だな」

 カレル3世が唾棄するように言った。

「その情報網を信頼できるのか?」


「ソルニオルの屋敷を襲撃して情報を得るか、組織の幹部を拉致して拷問にかければ、裏取りできるでしょう」

 ペターゼンはさらりと言った。

「少なくとも、闇雲に大鉈を振るうよりマシです。冤罪なども防げます」


「分かった」

 大きく深呼吸し、カレル3世はペターゼン侯を真っ直ぐ見据えた。

「この件に関しては決して妥協しない。分かるな?」


「膿を取り除くには痛みを伴うは必定です。しかし、急激に身を削り過ぎては、体がもちません。最悪衰弱死する恐れもあります。段階的かつある程度は許容しないと――」

「どのみち、粛清を始めれば国情は荒れる。大身貴族も絡んでいるだろうからな」

 王は宰相の言葉をさえぎって断言する。

「それでも、妥協はしない」


「そこまで御覚悟を決めていらっしゃるならば、臣として御意に従うのみです」

 ペターゼンは恭しく一礼した後、改めて主君に告げた。

「報復に関してですが、これも帝国側と協議すべきです」


「このうえ、さらに奴らの意向におもねよと言うのかっ!」

 カレル3世が声を荒げ、執務机を殴りつけた。

 それでも、ペターゼンは怯むことなく意見し続ける。

「帝国も我が国の報復は織り込み済みでしょう。しかし、度の過ぎた報復を行えば、帝国側も許容しきれません。そうなれば、カロルレンの次に狙われるのは、我が国です。粛清で国情が荒れている状況で戦になれば、先のような勇戦敢闘は望めません。亡国を避けるべく、どうか耐え忍んでください」


 ペターゼンは申し訳なさそうに顔を歪めた。

「どうか、御堪忍のほどを」


 くそっ! とカレル3世は心の底から憎らしげに罵る。

「国際会議中にエドワードと図って掃除の準備を進めろ。会議にはヴィーナを連れて行く」

「ヴィルミーナ様を、ですか?」


「外務省の奴らは信用できん。それにヴィーナは商売でアルグシアとクレテアにも影響力がある。イストリアも一目置いているようだ。外交官の真似事くらい勤まるだろう」

 憤懣のこもった鼻息をつき、カレル3世は慨嘆をこぼした。

「戦争が片付いたと思えば、王都で殺人鬼が暴れ、不況が本格化してる時に、今度はオヤジの負債の清算だ。まったくいったいなんなんだ。この次は何が起きる?」


「東メーヴラントで起こる戦争が延焼を起こすか、あるいは、ベルネシア内戦ですかね」

 宰相が疲れ顔で生々しい予想を返すと、王は頭を抱えて嘆く。

「ありえそうなことを言うな。現実になったらお前のせいだぞ」


     〇


 同じ頃、ヴィルミーナはドレス姿のまま、エンテルハースト宮殿から小街区オフィスへ出社し、側近衆を集めた緊急会議を開いていた。


「晩秋にサンローランで催される国際会議。私は御供を仰せつかった。つまり、一月ほど社の方には出られない。連絡は常時取れるようにしておくけれど、基本的には私不在で白獅子を経営する、と考えて欲しい」


 ヴィルミーナは会議室へ集まった面々へ告げた。その秀麗な面差しにはいつもと違って冷徹さがはっきりと浮かんでいる。

「組織の統括代表はこれまでどおり、アレックスに任せる。ただし、対外的な公式行事などの代表はデルフィネが出席して。名門ホーレンダイム侯爵家の看板を借りたい」


「私は傀儡ですか」と微苦笑するデルフィネ。

「なんなら、統括代表も務めてみる?」

 ヴィルミーナに問われたデルフィネは小さく肩を竦めた。

「いえ。アレックスの方が適任です。私は傀儡で結構」


 控えめに微笑み、ヴィルミーナは話を再開する。

「各種事業の方針は概ね現状通りに進めて構わない。緊急の判断を要する場合に私と連絡がつかなかったなら、貴女達の判断で進めて良い。ただし、絶対条件として、必ず話し合いの場を持って意見のすり合わせと認識の共有化を図ること。独断や単独決行が必要な場合はあくまで各自の裁量権の中でやりなさい。もちろん、その後は必ず話し合うように」


 ヴィルミーナは側近衆の一人一人と目を合わせて、

「私が一番恐れているのは、経営上の失敗ではなく、私という最大権力者が不在で生じる組織内人間関係の不和だ。互いの立場や役割が違う以上、譲れないことや対立することもある。その時、決裂だけは絶対に避けたい」

 学校の教師が倫理道徳を解くように語り、最後にフッと口元を緩めた。

「まあ、私の不在を利用して下克上を試みても構わないけれどね」


「そんな奴は私が消します」と目が怖いニーナ。

 こいつ目がマジだよ……とニーナの隣に座っていたテレサが呆れる。


 ニーナの忠臣振りに苦笑した後、ヴィルミーナは居住まいを正して、告げた。

「それから……これから話す件は秘中の極。情報が漏れた場合、私も庇えない。心して聞きなさい」


 瞬間、全員が姿勢を正し、表情を強張らせた。会議室に緊張感が満ちる。


 ヴィルミーナは言った。

「国際会議後、我が国は不正規な軍事活動を行う」


 軍事活動。その単語に皆が息を呑む。はっきりと。あるいは、密やかに。アレックスとデルフィネが身を小さく震わせた。


 全員を見回した後、ヴィルミーナは言葉を続ける。

「これは国の御稜威が懸かったものであり、事の善悪と正否はもちろん、大義名分の有無すら関係ない。貴方達の賛否もこの件では考慮しない。御国の御稜威によって貴顕の誉れと幸を得ている以上、臣の務めと覚悟して粛々と臨むべし」


「相手は、どこですか?」

 どこか呻くようにデルフィネが問う。


 ヴィルミーナは端的かつ明確に即答した。

「聖冠連合帝国よ」


 ぎょ、とする面々。リアが狼狽気味に問う。

「て、帝国は友邦では?」


 その問いは全員の問いだった。聖冠連合帝国は友好国だ。まあ、実態は知り合い以上友人未満みたいな関係だが、帝国皇族にベルネシア王女が嫁いでいるし、メーヴラント諸国の国交状況を考えれば、十分な友好国と言える。


 動揺を隠さない一同へ、ヴィルミーナは注意深く言った。

「事の詳細は貴女達にも現段階では明かせない。ごめんなさい。ただし、帝国は我が国との信義に大きな瑕疵を付けた。その償いをさせる。これがこの軍事活動の理由よ」


「……我々は何をするので?」ヘティが不安そうに尋ねる。

「資金と物資の提供、それから、不正規戦争に必要な現地工作の支援。具体的には地中海において活動する軍の援助。場合によっては戦闘員の供給もありえる」


 ヴィルミーナの回答にテレサがおずおずと口を開く。

「我々には地中海方面に伝手がありません。あ、ヴィーナ様のご出自はベルモンテですけれど、その」


「気を使ってくれてありがとう、テレサ。」

 ヴィルミーナはテレサへ柔らかく微笑んでから表情を引き締めて、

「私の血の半分はベルモンテ公王家だけれど、母の帰国と同時にベルモンテとの関わりは事実として断絶している。私もベルモンテには何の思い入れもない。正直なところ、自身のルーツの半分と言われてもピンと来ないわ」

 対案を口にした。


「先の大規模仕手戦でタウリグニアに伝手を作った。そこから手を伸ばしましょう。あるいはクレテアを中継しても良い。南クレテアの地中海沿岸地域から手を付けることも可能なはず」


 大クレテア王国の地理の話を大雑把にすると、王国南部地域が地中海とコルヴォラントに接している。クレテアの主要港湾はこの地中海方面に集中しており、ここから外洋へ出ている。


 ちなみに、北洋方面の沿岸地域もあるにはあるが、そちらはベルネシアとイストリアという凶悪な敵がいるため、大規模港湾がほとんどない(作っても商船が襲われるだけだから)。クレテアの北洋側港湾が発展するには、まだ多くの時間と情勢変化が必要だった。


 蛇足に加えておくと、クレテアの地中海航路を牽制するため、王女ユーフェリアがコルヴォラントの海洋国家ベルモンテ公国へ嫁がされた。まあ、目論見は失敗に終わったけれども。


「とりあえずは手掛かり足掛かりが作れれば良いわ。利をチラつかせて食いつかせるも良し、多少手荒な方法で従わせても良い。やりようは貴女達に任せる」

 ヴィルミーナはフッと息を吐いて、話を切り替える。

「最後にドラン君の件だけれど」


「現地でかなり楽しんでるみたいですね。たしかマキシュトク奪還作戦で参謀総長の真似事をしてるとか」

 マリサが笑う。緊張が抜けた他の面々も気楽に表情を和らげる中、アレックスが仏頂面を浮かべた。


※     ※     ※

 カロルレン王国では、秋の到来と同時にマキシュトク奪還作戦が始まっていた。

 王国中央や軍の黙認の下、民間主導による自主的な復興活動として。酷い欺瞞である。まるで喜劇だ。


 当初の計画通り、作戦は簡単。

 マキシュトクまでの主要道路を確保/整備し、マキシュトクを確保して活動拠点化。街の復興は後回し。まずは狩猟拠点として街の周囲にいるモンスターを狩りまくる。そうして獲得した素材を片っ端から各産業へ出荷する。

 兎にも角にも食い扶持を得ることを目的とした作戦だった。


“作戦総司令部”はオルコフ女男爵特別税制領とマキラ大沼沢地王家直轄領の領境に据えられている。その総司令部で万事の実務を担う総参謀長がノエミ・オルコフ女男爵のお抱え外国人兼“愛人”のオラフ・ドランだった。


とはいっても、純軍事的なことや対モンスター絡みは全てその筋のプロに任せており、ドランがしていることは兵站管理――いつ、どこへ、誰に、何を、どれだけ、届けるか。


 そして、ドランはそうした仕事を自分自身だけでなく、下に付けられた者達へきちんと差配し、分業して見事に切り盛りしていた。

 卓越した組織管理、緻密な作業管理、臨機応変の指揮統率。次から次へと津波の如く押し寄せる細かなトラブルを創意工夫で片付け、あちこちで生じる面倒と問題をきっちり処理していく。


 ベルネシア海軍の誇る後方支援業務の達人ヤン・ヴァン・キーツもドランの手際の良さを知れば、舌を巻いたことだろう。

 ドランに反抗的な立場の者達でさえ、オラフ・ドランという小デブな青年の有能さは認めざるを得なかった。


 同時に、ドランの下に付けられた者達――ドランの能力を認めているオルコフ女男爵家やラランツェリン子爵家、ペンデルスキー男爵家、カロルレン王国冒険者組合、他商会やらなんやらから出向してきた者達は、“白獅子”式の各種ノウハウやテクニックをドランの下で学習していった。


 加えて、奪還作戦に参加できなかった孤児達もドランの下で働いていた。

 自身の良心に基づき、ドランは14歳未満の児童を戦場へ駆り出すことを、絶対に認めなかった。

 籠城脱出で死闘を経験していた子供達の中には、“今更”の処遇に不満を覚える者も少なくなかったが、少年少女達はこの『ドラン学校』で多くを学んだ。

 このことの意味を、ドランは全く考えていない。ある種、無責任とも言えよう。


 ともかくとして、先行する戦闘部隊が街道周辺のモンスターを駆逐し、二線級部隊(経験の乏しいルーキーや体力の欠けるロートルなど)が警護する中、志願労働者達が道路を舗装し直し、川に仮設橋を掛ける。


 ドランはその報告を基に大地図に色分けしたピンを差し、人員配置と物資の移送状況、作業状況などを常に把握し、遅れやズレなどを逐次修正する指示を出す。


「計画通りに進んでるんだか、進んでないんだか。微妙なところね」

 大地図を見下ろした妙齢の御婦人が呟く。

 ラランツェリン子爵家から来た嫡男夫人だ。男衆のほとんどが命を落としたラランツェリン子爵家では、女衆が気丈に立ち回ってお家と領地を支えている。


 ドランは大地図と作戦計画書を見比べ、小さく肩を竦めた。

「大枠では順調ですが、現場レベルではかなりズレが生じてます。ま、逐次作戦を修正しましょう」


「作戦の方を修正するの? 現場の尻を叩く方が良いのでは?」

「現場が必死に動いていてこの状況なんです。計画を修正する方が楽ですよ」

 ドランはこともなげに言う。


 ヴィルミーナ辺りなら大モルトケの『緒戦で覆らぬ作戦無し』という格言を口にしたかもしれない。荒事は相手があることなのだから、計画通りに進むことなど滅多に存在しない。臨機応変に作戦を修正し、戦略目標の達成を図るべし。


「しかし、想定したより交戦状況がぬるいですね」

「相手はモンスターだからね。人間みたいに拠点防衛とか戦線維持とかそういうことは考えないもの。“食べ物”が無ければ移動するわ。そもそも、大災禍の発端が春の水害よ。水が引いて沼沢地の縄張りに戻ったのも多いんじゃないかしら」


 嫡男夫人の意見に首肯し、ドランは再び大地図へ目を向けて眉根を寄せた。

 マキシュトク奪還と確保が早まるのは喜ばしい。だが、マキシュトク周辺のモンスターが想定より少ないというのは、それはそれで別種の問題が生じる。

 この奪還作戦は素材資源経済の各種産業従事者の生活維持のため、マキラ難民の生活手段獲得のためだ。さて、この問題をどうすれば良いか。


 かくして、ドランは新たな問題の解決策を模索し始めた。

 ドランも他の面々も眼前の問題解決に掛かり切りで、カロルレン国外のことなど完全に意識外だった。


 西メーヴラントのサンローラン共和国では、今この時も国際会議の準備が着々と進められ、カロルレン王国の命運を他国が勝手に左右するという事態が進行している。もっとも、事態を知っていたからと言って、ドランやノエミ達にはどうすることも出来なかったが。


 そして、どうすることも出来なかったのは、カロルレン王国も同じだった。

 彼らは聖冠連合帝国の動きをある程度把握していたが、外交能力に乏しいために打つ手がなかった。

 いわば、死んだ亀状態。手足はもちろん頭も尻尾も出せない。

※     ※     ※


「戦に復興に交渉に大活躍して、現地貴族女性と恋愛。まるで冒険譚の主人公みたいなことしてるなあ」

 楽しそうだなあ、と聞こえる発音でマリサが呟く。

「組織の勤め人としてどうなの、とは思うけれど」と振り回されたアレックスがぼやく。


 ヴィルミーナは背もたれに深く体を預け、言った。

「放蕩息子が無事に帰ってこられるよう、注意して見てあげて」

「ドラン殿はヴィーナ様より年上ですよ」とデルフィが口端を緩めた。


 ヴィルミーナは内心で密やかに思う。

 魂の年齢的には、私の孫か曾孫みたいなもんやけどな。


 会議が終わりかけたところで、

「あの、良いですか?」

 エステルが手を挙げた。ヴィルミーナの首肯を受け、意見を開陳する。

「ヴィーナ様、秘書の同行はどうしますか?」


「え? 秘書?」

 予期せぬ議題に目を瞬かせるヴィルミーナに、『あ、コイツ分かってねーな』という面持ちになるエステル。

「ヴィーナ様に傍仕えする秘書は、私共の部下が当番制の持ち回りで対応していますが、一月の出張となれば、専属秘書の選抜が必要です」


「まあ、そうなるわね」

 いまいちピンと来てないヴィルミーナの様子に、アレックスが横車を押す。


「ヴィーナ様。若輩者の私達が曲がりなりにもこの大組織を差配できているのは、ヴィーナ様の御傍に侍り、多くのことを学び、経験してきたからです。つまり、ヴィーナ様の専属秘書となれば、次期幹部と見做されます。それに、申し上げ難いことですが、誰を選ぶかによって私共の勢力関係に影響が出ます」


 あ、そういうこと。ヴィルミーナはようやく合点が行き、ついで、次期幹部の選抜という想定外の面倒が生じたことを理解する。


 ヴィルミーナは大きく嘆息を吐いて、言った。

「資料を用意して。それから専属秘書希望者を面接する。貴女達の推薦を付けるなら、資料に添付しておくように」


 予期せぬ面倒を抱えたヴィルミーナは思う。

 んんんん……組織統率者としては当然の仕事なんやけど……あれやな。なんかこう、陣頭に立って自分でプロジェクトを動かしたくなってくるな……

 今回の国際会議で一月任せてみて、つつがなく回るようなら、私が直卒するプロジェクトをやっても良いかもしれへん。うん。そうしよ。なにやろーかな。


 腕を組んで百面相を始めたヴィルミーナに、側近衆の乙女達は揃って同じことを思う。

 ――あ、また何か企み始めた。


 彼女達は会議の流れから極当然のように、その企み事が国際会議絡みか対聖冠連合帝国と想像する。

 そして、これまでの経験に照らし合わせ、結論を抱いた。


 ――今度の仕事は大変なことになるかもしれない。気合を入れて取り組まなければ。

 こうして白獅子は本気で爪牙を研ぎ、磨き始めた。




 

 季節は晩秋に移り、いよいよ国際会議が開催される。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >>少年少女達はこの『ドラン学校』で多くを学んだ。 >>このことの意味を、ドランは全く考えていない。 白獅子式の効率的なマネジメント手法という表面的なもの以外というと…能力のある平民…
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