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転生令嬢ヴィルミーナの場合  作者: 白煙モクスケ
第2部:乙女時代

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148/336

13:4

 大陸共通暦1769年:ベルネシア王国暦252年:晩夏。

 大陸西方メーヴラント:ベルネシア王国:王都オーステルガム。

 ――――――

 晩夏の蒼穹に白い入道雲が昇っていく。北洋から吹き込む涼風は控えめで暑気を和らげるには至らない。燦燦とギラつく陽光が煩わしかった。


「帆が無いのに進むとは……面妖な」

 湾内を進む試験船ユーフェリア号の甲板上で、カール大公は青白い煙をもくもくと吐き出す煙突を見上げて呟く。


「仕組みを聞きましたが、さっぱり分かりません」

 隣に立って煙突を見上げるカスパーもしみじみと呟く。


「もう一度ご説明しましょうか?」

 案内係として蒸気機関の説明を行ったヘティがにこやかに微笑む。

「え、あ、いや」「それは、その」

 カール大公とカスパーの腰が引けた。


 というのも、ヘティの説明は学術的表現が多すぎて門外漢の2人にはさっぱり分からない。先の説明を受けた時も、金融デリバティブ商品の説明を聞かされた一般人みたいな顔になっていた。


 が、ヘティは空気を読まずににこやかに微笑みながら、言った。

「では、改めてご説明しましょう」

 カール大公とカスパーはげんなり顔を浮かべ、再び『ヘティ先生の蒸気機関講座』を受けることになった。


 一方、エルフリーデは船首甲板手すり傍のベンチに腰掛けて休んでいる。船酔いになったらしい。ヴィルミーナが隣に座って様子を診ていた。

「飛空船は平気でも海上船はダメ。ということがあるのね」

 ヴィルミーナは興味深そうに呟く。

 エルフリーデが蒼い顔で呻く。

「なにかずっと揺れてるような感覚がします……」

「湾内だからほとんど揺れてないと思うのだけど」


「エルフリーデ様は平衡感覚が繊細なんだろう。ヴィーナは図太くてよかったな。船酔いとは無縁だ」

 ヴィルミーナの傍らに侍るレーヴレヒトがからかうと、ヴィルミーナは鼻息をつく。

「そーよ。私が図太いおかげで貴方を婿に獲れたのよ」

「参りました」とレーヴレヒト。


 エルフリーデはくすくすと微笑む。それから、真顔になってヴィルミーナに問う。

「……やはり、反対がありましたか?」


「恋愛婚なんてとんでもない。政略結婚して然るべき。なんて意見が強かったし、レヴは家格がちょっと低かったし」

「男爵家の次男坊はちょっとどころじゃないと思う」とレーヴレヒトは苦笑い。


「でもまあ、邪魔する連中は蹴り飛ばしたわ」

 主にお母様が。と心の中で付け加えるヴィルミーナ。不敵に口端を緩め、言った。

「私達は生まれながらにして多くの責任を負わされている。もちろん、その責任に見合った富や権利を有している。だからといって、責任の負い方が牝馬みたいな生き方だけとは限らないはずよ」


 ヴィルミーナの不敵な笑顔を、エルフリーデは眩しそうに見つめる。


 当初、エルフリーデがヴィルミーナに対して抱いた感情は、妬ましさだった。

 自分達姉弟と共通点のある出自ながら、ヴィルミーナは大空を泳ぐ飛竜の如く自由気ままに生きている(少なくとも、姉弟にはそう見える)。

 そして、その自由な生き様は母ユーフェリアから与えられたものばかりではなく、ヴィルミーナ自身の力で掴み取ったものであることも、姉弟の感情を刺激した。


 強さ。それは姉弟が幼い頃から渇望してやまないものだった。


 姉弟の今ある立場は、カール大公という尊敬すべき人物に助けられた末であり、姉弟が自らの力で得たものではない。むろんカール大公は『与えている』などと奢った感情は持っていない。ただ愛する者達を守り、必要と考えたことをしただけだ。


 強さ。それは姉弟が執着してやまないものだった。


 ただし、大公妃エルフリーデにはある種の精神的余裕があり、ヴィルミーナへの嫉妬を憧憬と尊敬に昇華させることが出来た。

 それに、ヴィルミーナはエルフリーデとカスパーに対し、憐憫や同情を一切見せない。敬意と家族の親愛をもって接してくれる。それでいて、無思慮に踏み込んでくるような真似をせず、丁寧な心配りしてくれた。

 ゆえに、エルフリーデはヴィルミーナを好ましく思っている。


 会話をすることで多少船酔いが和らいだエルフリーデは、ヴィルミーナへ問う。

「その責任の負い方が商いなのですか?」


「私は貴族の務めや責任とは、つまるところ、富や権力を基盤に対する利益配分だと考えている。家のため、領地のため、有益な相手に嫁ぐことで責任を果たす。ならば、家と領地、領民に利益を配分できれば、必ずしも政略結婚にこだわる必要はない。商いで富を家や領民に配分すればいい。商いで領地を富ませればいい。社会に富を還流させればいい」


 ヴィルミーナが自信満々に語る傍らで、レーヴレヒトが忠告のように言った。

「話半分で聞いてください。理論武装していますが、商いはヴィーナの趣味です」

 身も蓋もない言い草だが、図星らしい。ヴィルミーナが目を泳がせている。


「ヴィーナの考えや行動はベルネシア国内でも十分に異端です。聖冠連合帝国で許容されるとは限りませんし、カール大公閣下も御認めになるか分かりません。決して感化なされませんよう」

 レーヴレヒトの忠告には善意と苦労がこもっていた。


 どうやら彼がヴィルミーナの安全弁を勤めているらしい。エルフリーデは柔らかく微笑み、言った。

「御二人はお似合いですね」

 レーヴレヒトが面映ゆそうに眉を下げる隣で、ヴィルミーナが腕組みしてふんぞり返る。

 まるで『そうでしょうとも』と言いたげに。


      〇


 カロルレン王国北東部。ベースティアラントに属するこの地域では、着々とマキシュトク奪還作戦の準備が進められていた。


 周辺国の不穏な動きや雰囲気はオルコフ女男爵領にも届いていたが、ぶっちゃけた話、彼らにとって『そんなこと』は二の次だった。いつ起きるか分からない戦争のことより、目先の生活を立て直す方がはるかに大事だったし、何よりも優先すべきことだった。


 作戦の裏方仕事を一手に仕切っているオラフ・ドランは、今や方々から完全にマキシュトク奪還作戦の参謀総長と見做されていた。そして――


 オルコフ女男爵特別税制領の領都にあるオルコフ男爵屋敷。その寝室のベッド上。

 着衣を脱がされ、ノエミは顔を真っ赤にしていた。大災禍の戦でノエミの体にはあちこちに傷痕が残っている。ドランがそうした傷痕の一つ一つへキスをしていく。ノエミの口から甘い喘ぎ声が漏れた。


 当初、一線を越える際、ノエミは肌を見せることを酷く恐れ、不安を抱いていた。

 傷だらけの体を恥じてはいないが、それはあくまで武人としての感覚であり、乙女としては強い憂慮を抱いていた。女らしさに欠ける筋肉質な体と体中に残る傷痕。もしも引かれたら、疎まれたら、嫌われたら……


 もっとも、ノエミの不安は杞憂だった。ドランはノエミを鍛えられた裸体と傷痕を見て、ただ一言。

 ――とても奇麗です。


 と、まあこんな調子でオラフ・ドランとノエミ・オルコフは、国籍も貴賤も立場も超えた愛を育んでいた。周囲も2人の関係を容認している。


 2人が二人三脚で働き始めて以来、大災禍被災地の復興がテンポよく進み、難民も最低限の衣食住が確保されている。また、ドランが常にノエミを立て、職務以外で決して出しゃばらないという弁えた態度を取っていることも、周囲が容認する理由だった。


 もちろん、2人が伴侶となることは極めて難しい。ドランはこの地に根を張ることを許されていない。仮にドランが根を張ることにしても、ヴィルミーナに許しを求めるため、仁義を通すために一度はベルネシアに帰国せねばならない。


 もしも、現代地球のアレな新卒社員みたいにメール1通、SNSのメッセージ1つで退職を図るような真似をしたら、ドランは“商事”の工作員によって拉致同然に連れ戻されるだろう。そのうえでかなりキツいお叱りと罰を与えられることになる。


 ノエミにしても、男爵家の女当主という立場上、カロルレン王国貴族の婿を取る必要があった。旧態的な価値観の強いカロルレン王国で貴賤結婚は厳しい……


 いわば、2人の関係は期間限定の恋愛ごっこだ。そんな関係を許容する程度には、2人は大人だった。


 さて、睦み合いを終えたドランとノエミは並んでベッドに寝そべり、天井を見上げながらポツポツと言葉を交わす。


「ノエミ、本当にマキシュトク奪還作戦へ参加するんですか? おそらくモンスターはまだ相当数残っていると思われます。かなり危険ですよ」

「それは重々承知だ。それでも行かねばならない。あの街には、今も多くの友があたしを待ってる。彼らを家族の許へ連れ帰る。あの日、生かされたあたしの宿命だ」

「損な生き方ですね」

「呆れた?」

「貴方が損する分だけ、僕が稼ぎ直さないとなりませんね」

「ありがと」


 ノエミは体を横向きにしてドランを見つめ、そのちょっぴり出た腹を突く。

「それにしても、あれだけ忙しく働いて、食い物も少ないのにオラフは全然痩せないな」

「代わりに愛情をたっぷり受け取っているので」

 甘いんだか甘くないんだかよく分からないピロートークを交わす2人。


 他愛ない会話を進めていくうち、ノエミがどこか不安そうに言った。

「……国外が不穏な空気になっていると聞く。オラフにはマズいことになるかも」


「我が国も敵に回りそうですか。参ったな。命懸けで助けようとした人達を傷つけるのか」

 ドランは珍しく険しい顔つきになる。胸の奥で祖国の動きを不誠実と感じる情実的な感覚と、脳裏で実利的には妥当な判断だと思う商人の思考がよぎった。


 そして、ドランは喉元まで出掛かった言葉を飲み込む。

 ――僕と一緒にベルネシアへ行きませんか。

 代わりに出た言葉は、ある意味でドランらしいものだった。

「どんな状況になっても貴女に追い出される瞬間まで、ここにいます」


 ノエミははにかみ、ドランを抱きしめる。

 2人はまだ眠らないようだ。


     〇


 白獅子の情報組織である“商事”の幹部二人が商品売込みを装い、王妹大公屋敷を訪ねてきた。もちろん、本当の目的は情報収集の報告だ。

 報告内容は2つ。


 1つはカロルレンの国内情勢。

「……現地の貴族婦人と懇ろになってる? ドラン君が?」

 報告を聞いたヴィルミーナは思わず問い返す。


「オルコフ女男爵閣下の愛人、ということになっています」

 初老の男性幹部が、何とも言えない面持ちでヴィルミーナへ告げた。

「本人に接触した限り、いずれ帰国しなければならないことは双方共に了承しているそうですが……」


 ヴィルミーナは眉間を押さえて唸る。

 あのガキァ、なに三文恋愛小説みたいなことしてんねん!


「そんな言葉、何の当てにもならないわ。恋愛で頭が煮えたら即時撤回される」

「――覚えがあります」

 男性幹部の微苦笑混じりな肯定に、ヴィルミーナは溜息をつく。

「カロルレンはどうなの? 諸国の動きを察知して外国人の排除とかに動いてない?」


「そちらはまだ。防諜活動は活発になっています。連中も状況が不味いことは理解しているようですな。社の潜入工作員達には脱出の準備をさせています。ただドラン殿は……」


「無理はしなくていい。貴方達はいざとなればドラン君を無視して脱出しなさい。連中も彼がベルネシア王国府と関わりがある人間であることも知っているし、現地で多大な貢献をしている人間を即座に捕らえて拷問にかけることはないはずだ」


「ヴィルミーナ様。見込みは危険です。いざという時は無理にでも連れ戻すべきかと」

 同席している“商事”の壮年女性幹部の忠言を受け、ヴィルミーナは頭の中で算盤を弾く。

「分かった。いざという時は手荒にでも国外へ脱出させて。行動の時期は現場判断に任せる。ただ……可能な限りドラン君の要望も聞いてあげて欲しい」


「と、おっしゃいますと?」

「国際会議の結果次第だが、上手く転がれば、マキラ大沼沢地のモンスター素材利権はベルネシアで押さえられるかもしれない。その時、ドラン君の活躍は確実に活きてくる」


「なるほど……では、猶のこと、ドラン殿に死なれては困りますな」

 初老の男性幹部は少し考え込み、顔を上げた。

「インセンティブに色をつけて貰えますか? そうしていただけるなら、志願して死地に飛び込む者が幾人かいます」


”商事”の社員達は多くが自身の贅沢のためではなく、家族に不自由させないため、自らの命を賭ける。その貢献に必ず報い、応える限り、彼らはヴィルミーナを裏切らない。


 ヴィルミーナは首肯して了承する。

「良いわ。志願者に具体的な条件を持ってこさせなさい」


 カロルレン国内情勢の報告が済むと、壮年女性幹部がもう一つの報告を始める。

「聖冠連合帝国の国際会議ですが、クレテアは我が国同様、話に乗ります。アルグシアとは交渉が難航しています」

 ヴィルミーナは首肯して先を促す。

「それと、帝国はイストリアにも接近しています。現場レベルですが、既に幾度か協議を持っているようです」


「ようです、ということは内容までは把握できていない?」

「かなりの防諜体制でしたので……」

「や、無理はしなくていい。君達は充分によくやっている」

 申し訳なさそうな女性幹部へ、ヴィルミーナはいたわりの言葉を返す。


 それから、ヴィルミーナは幹部二人と情報収集活動に関する相談と陳情の議論を交わし、いくつかの指示を与えた。


 彼らが王妹大公屋敷を辞した後、ヴィルミーナはリビングのソファで百面相しながらあれやこれやと思索する。


 いつの間にか足元にやってきた子犬のガブが、そんなヴィルミーナの豊富な表情変化を興味深そうに眺めている。

 ガブに気づくことなく、ヴィルミーナはメーヴラント情勢を推察し、思索する。


 聖冠連合のやろうとしていることは、地球史近代に起きたポーランド分割に似ているようで、大きく違う。実質的な内容は独ソのポーランド侵攻だ。


 ただし、そのやり口は如何わしいナチや薄汚いボルシェビキより狡賢い。カロルレン分割に西メーヴラントを巻き込み、イストリアの干渉と介入を防ぐようきっちり根回ししている。


 公開的な多国間首脳会談――国際会議の開催にしても、コンセンサスの確立と利権調整に加えて、カロルレンに孤立無援と思い知らせることでカロルレンの国内を揺さぶるつもりか。

 交渉自体はかなりの困難を伴うだろうが、実現する見込みと自信があるのだろう。


 青写真を描いた奴はかなりのやり手やな。地金は私より上かもしれへん。

 まあ、そういうのが居てもおかしくはないわな。どの時代のどんな国にも一廉の人物はおるもんや。この先、そんなのが次から次へと出てくるんやろなぁ。怖いわぁ。


 ともかく、聖冠連合帝国は本気だ。

 本気でカロルレン王国を地図から消し、メーヴラントを再編しようとしている。もちろん、カロルレンも死に物狂いで抵抗するだろう。戦争は数年掛かりになるはずだ。


 理屈で言えば、絶好の商機。まして、ベルネシアの役割は兵站策源地だ。儲けてくれというようなもの。

 血を金穀に変える簡単な商売。


 気になるとすれば、聖冠連合はカロルレンの中で市民意識が勃興しつつあることを、きちんと把握しているかどうか。

 市民革命の炎が燃え盛ったら大変なことになる。もしも、ナポレオンみたいな怪物が現れたら、あるいは、大モルトケ&ビスマルクみたいな天才達が表舞台に出てきたら……


 ヴィルミーナの逸れていく思考は止まらない。


 蒸気機関や内燃機関の実用化と量産化が完結するまで“もつ”か? 鋼材や資材の開発成功は間に合うか? 金属薬莢弾薬と遊底式小銃の開発、量産が追いつくか?


 それに……産業革命で先を行くイストリアから鉄道開発の情報が入ってこないのは、どういうこと? ひょっとしてこの世界では鉄道の導入が難しい? エリンに調べさせても芳しくないし……何かあるのか?


 鉄道ビジネスはそれこそ国家事業と言えるほどデカい。迂闊に手を出して『失敗しました』ではシャレにならない。


 ん~~わからん! これも先送りやな。棚上げ案件が積み重なってくなぁ……


 ヴィルミーナは思索を打ち切り、腰を上げた。どこか官能的な呻き声をこぼしつつ、体を伸ばす。ガブは尻尾を大きく振りながら、ヴィルミーナの足に頭を擦り付けて『遊んで遊んで』とせがむ。

 小さく微笑んだヴィルミーナは、ガブと共に中庭へ向かった。





 さて、夏の終わり某日。聖冠連合帝国主催の国際会議開催が決定し、クアトロ・ボーダー国のサンローラン共和国で開催されることになった。


 会議は早くも本年の晩秋に催されるという。

 これはカロルレンが大災禍と大飛竜襲撃の被害から立ち直る前に動きたい、というアルグシアの意向だった。ベルネシアとクレテアは準備期間の不足に難色を示したが、聖冠連合帝国の執り成しで妥協した。


 国際会議の参加国は、聖冠連合帝国・アルグシア連邦・大クレテア王国・ベルネシア王国。

 オブザーバーとして、ヴァンデリック侯国とイストリア連合王国も参加する。会議の議長は開催国としてサンローラン共和国議会議長(事実上の国家元首)が行う。


 この国際会議はカロルレン分割を中心に議論されるが、メーヴラント再編に伴う各種通商や安全保障、領土問題なども合わせて扱われる。


 開催期間はおよそ一月。

 メーヴラントの未来を一月で決めようというわけだ。


 仮にこの国際会議が成功し、カロルレン分割を前提とした連合軍が結成されれば、勝敗はその段階で確定する。


 先のベルネシア戦役で、ベルネシアが勝てた理由は『一対一』の状況が成立し、自国の強力な経済力とイストリアとアルグシアの支援を得られたこと。加えて、クレテアに破綻寸前の財政という『時間制限』があったおかげだ。

 五分の状況で戦っていたら、ベルネシアは敗北していただろう。


 翻って、連合軍対カロルレンはどうか。


 現状、あらゆる条件がカロルレンの圧倒的不利である。

 付け入る隙があるとすれば、アルグシアと聖冠連合帝国が決定的に不和ということ。ベルネシアとクレテアは勝ち馬に乗っているだけで利が無ければ、すぐに手を引くだろうこと。


 カロルレンが勝つには、アルグシアと聖冠連合の各個撃破。長期抵抗による戦費負担を強いてベルネシアとクレテアを離脱させること。

 これを成し遂げたなら、カロルレンは伝説となるだろう。それくらい、実現の目は低い。

 ただし……










 運命の女神がサイコロを手にウォームアップを始めていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 神にサイコロを振らせてはいけない(固定値教信者)
[気になる点]  伝染病(ペスト・コレラ・インフルエンザ)や風土病(天然痘・マラリア)が蔓延して戦争どころではなくなる?又は >>ナポレオンみたいな怪物が現れたら、あるいは、大モルトケ&ビスマルクみた…
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