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転生令嬢ヴィルミーナの場合  作者: 白煙モクスケ
第2部:乙女時代

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103/336

10:4

大陸共通暦1768年:ベルネシア王国暦251年:初夏。

大陸西方メーヴラント:ベルネシア王国:王都オーステルガム。

――――――――――

 イストリア王太子の親善訪問が始まって以来、ヴィルミーナはイストリア王太子夫妻の相手や通商団との会談や折衝に忙しく、小街区オフィスに出勤していない。


 もちろん、ボスがおらずとも小街区オフィスでは普段通りに業務が行われ、ナンバー2の“侍従長”アレックスが差配を振るっている。


 二十歳のアレックスは美しく成長していた。奇麗な細面や滑らかな長身痩躯はどう見ても女性的なのに、その美貌はなぜか女性の琴線を強く刺激する。まあ、異性より同性に好かれる人っているからね。しょうがないね。

 休憩時間を迎え、アレックスは独りでヴィルミーナの執務室へ向かう。


 側近衆達の間で奇妙なルールが出来ていた。

『休憩を取る時はヴィルミーナの執務室で』。

 これはヴィルミーナが居ても居なくても変わらない。

 なんで? といえば、側近衆達は基本的にヴィルミーナが大好きだから。


 そして、大幹部である彼女達が社内で部下や他の職員の目を気にせず、気楽に振舞える場所がヴィルミーナの執務室だけだから。

 一方、側近衆達のこうした行動に対し、ヴィルミーナは『悪戯しなければ、好きにしてよし』。


 アレックスが執務室に入ると、応接セットでエリンとニーナが駄弁っていた。

 二十歳を迎えるニーナは、現代の女子大生的に垢抜けている。背中まで届く髪。160台後半の身長に程よい肉付きの肢体。男受けする容姿といって良い。ただし、過去の手痛い失態以来、ニーナは男性不信であり、浮いた噂は一度もなかった。


「お疲れ」

「そっちも」「おっつー」

 アレックスの挨拶に、ニーナとエリンは軽く手を振って返す。


 キャビネットの一角からマイ・カップを手に取り、アレックスも応接セットへ。

「今日は面子が少ないわね」


「マリサは大会の練習。チーム・デルフィは大会準備の最終調整とチェック。他の連中はそれぞれ担当案件で外回り」

 エリンが説明しながら、自分の隣へ座るようにソファを叩く。

 アレックスの男装に感化されたクチのエリンは、言うまでもなくアレックスが大好き。


 そんなエリンの様子に苦笑いしつつ、アレックスはエリンの隣に座る。カップへ御茶を注ぎ、氷糖を一粒入れた。


「ヴィーナ様は今日も出社なさらないのね」

 ニーナがどこか寂しそうに呟く。

「ヴィーナ様は御多忙だもの。仕方ないわ。イストリア王太子御一行が帰国するまで、オフィスに戻れないかもね」

“侍従長”アレックスもどこか寂寥感を滲ませて言った。

「まもなく競技大会だけど、ヴィーナ様抜きで大丈夫かしら」

 エリンが不安げに呟く。


「ちゃんと報告は上げてるわ。ヴィーナ様はその内容に目を通されたうえで、デルフィネ様達に一任なさってる。大丈夫ってことよ」

 アレックスは御茶を上品に啜る。


 ヴィルミーナの側近衆が減ったように、デルフィネの側近達も年明け後にそれぞれの人生を歩んだが、三分の一ほどが白獅子に残って側近衆を続けている。そもそもデルフィネ自身が実家の意向を無視してヴィルミーナの側近衆をやっていた。


 で、そのチーム・デルフィは競技大会の運営を任され、開催日を目前にして大忙しだった。デルフィネは個人的にもボランティア活動に熱心だから、めっちゃ気合が入っている。

 なお、実務のほとんどは、デルフィネの親友にして忠臣リアが担っているが……そこには触れないであげよう。


「そう言えば、テレサの話は聞いた?」

 アレックスが話題を振ると、

「メル様と商談対決する件でしょ。本人から聞いたわ。チョー煽られた」

 ニーナは仰々しい不満顔で鼻息をつき、

「え? 煽られた?」

「ヴィーナ様にメル様との対決を任されちゃったぁ。ごめんねぇニーナぁ」

 テレサの声色と口調を真似てのたまった後、忌々しそうに吐き捨てた。

「あの野郎」


「似てねー。全然似てねー。笑いどこに困るわー」

 エリンの指摘に、

「別にウケを狙ってないわよ」

 ニーナは眉目を吊り上げて毒づく。


 繰り返しになるが、ヴィルミーナの側近衆は仲良しクラブではない。

 固い絆で結ばれた親友達であることは間違いない。その一方で、常に競争し、切磋琢磨し合うライバル関係でもある。きつい言葉や態度でプレッシャーを掛け合うこともザラだ。


「任されてる仕事の規模で言えば、ニーナの方が上でしょ。クレーユベーレの先行開発を任されたようなものなんだから。少しからかわれたくらいで、そうへそを曲げなくても」


 アレックスの指摘通り、ニーナは一部前倒しされたクレーユベーレの開発を任されていた。つまり、白獅子の本拠地開発、その橋頭堡を築く重要な任務を負っている。

 メルフィナとの価格交渉とどちらが重要かといえば、ニーナの方といえるだろう。


 しかし……

「仕事内容の軽重じゃないのっ! メル様はヴィーナ様にとって特別な御友人の一人。そんなメル様との交渉対決を任されるって、そんなん成功させたら……ヴィーナ様から特別褒めて頂けるじゃんっ!」

 めちゃくちゃ悔しそうに吠えるニーナを見て、アレックスとエリンは思う。

 私もヴィーナ様のことは大好きだけれど、こいつには負けるわ……


「その調子だと、競技大会に出るマリサのことも羨ましいんじゃない? マリサも絶対ヴィーナ様から特別なお言葉をいただくわよ」

「そんなん、羨ましいに決まってんじゃんっ!」

 ニーナのあまりに期待通りな反応に、アレックスもエリンも笑うより呆れた。


 と、ドアがノックされ、ドラン青年が顔を見せた。

「あら、珍しい。ドラン殿もこちらでお茶?」

「まさか。ボスの執務室で休憩しようなんて発想、私にはありませんよ」

 ドランは大げさに首を横へ振ってから用向きに入る。

「ちょっと厄介な売り込みを受けたんですけど、私個人では判断がつかなくて。御協力いただけますか」


「売り込み?」

 エリンが訝る。

 商売や発明のアイデアはあるが、金がない。という連中は現代地球でも、魔導技術文明世界の近代でもそれなりに居る。そうした連中が金の当てにする先は、まず親兄弟親戚友人、次に銀行やお金持ちに金貸し。と世界と時代が違えど大差はない。


 ヴィルミーナが工房や製作所などへ出資したり買収したりするようになった頃から、自称発明家や自称事業家の類が様々なアイデアを売り込みにやってきて、出資や雇用を求めた。


 そのうちの7割は『バカの浅知恵』『アホの愚考』『間抜けの妄想』で、2割が詐欺目的(これはきっちり灸を据えた)。残り1割は検討する価値があったものの、ヴィルミーナが実際に金を出したり、雇ったりした実例はさらに少ない。


 それでも、挑戦者は絶えない。ヴィルミーナが白獅子を勃興させた頃からは、むしろ増えていた。ゴブリンファイバーやオークポリマーのように全く予期せぬ大発明もあるから、話も聞かずに追い返すことはしない。

 ただまあ、担当者は「バカ話ばかり聞かされて疲れる」と嘆き気味。


「具体的にはどんな内容の売り込みなんです?」

 ニーナが尋ねると、ドランは眉を下げながら言った。

「なんか動力がどうのこうのって。私は技術的なことは門外漢なのでさっぱり。担当は皆さんだけでなくヴィルミーナ様にも報告すべきと言っています」


       〇


 この日、メルフィナ・デア・ロートヴェルヒが王都オーステルガムへ到着した。


 目的は二つ。

 イストリア御一行の女衆がメルフィナの美容サロンを利用するため、オーナーであるメルフィナが店舗の御案内役を担う。

 そして、もう一つは―――


「この度は遠路お越しいただきありがとうございます。メル様」

 テレサは親愛を込めた微笑を湛え、小街区オフィスを訪ねたメルフィナを出迎える。


「いえいえ。手厚い歓迎をしていただけて光栄ですよ。テレサさん」

 メルフィナは鷹揚な微笑を浮かべ、テレサの挨拶に応える。


 もっとも――

 メルフィナの柔和な笑顔と双眸の奥には、『おいコラ、ヴィーナ様はどうした』と書いてあった。

 テレサの穏和な笑顔と眼鏡の奥の双眸には、『ヴィーナ様を引っ張り出したいなら、私を倒して見せな』と記されていた。


 貴族令嬢+王立学園生活+年の割に豊かなビジネス経験=相手の秘めた意思を正確に読む。を成し遂げた二人の乙女は、フフフホホホと朗らかに微笑みながら、冷たくも激しい火花を散らしていて、周囲にいる双方関係者の顔を引きつらせた。


「さ、どうぞ中へ」

「ええ。ありがとう」

 テレサに促され、メルフィナは小街区オフィスへ足を踏み入れた。ニコニコと和やかな面持ちでテレサと雑談を交わしながら、会議室へ向かう。

 が、メルフィナの内心は超高熱の憤激が燃え盛っていた。


 ヴィーナ様ったらあんまりです。側近衆に任せるなんて軽く見るにもほどがあります。私の腕前が見たい、これはそういうことですよね。良いですよ、受けて立ってやりますともっ!

 密やかに拳を握り、力を籠めるメルフィナ。意気軒高、やる気満々。


 それはテレサも同様だった。顔を隠すように眼鏡の位置を修正する。

 ヴィーナ様に褒めていただく絶好の機会。やってやるぜ。


 ※   ※   ※


 かくして勝負の時である―――と、その前に、ちょっと事情説明。

 ロートヴェルヒ公爵領は煉瓦とセメントと変異樹木材、建設用主要資材を扱っている。

 同領で製造される煉瓦は高品質で知られており、また、薪炭用として始まった人工林が良質な変異樹を安定供給していた。


 セメントについて触れておくと、地球史ではローマン・コンクリートの伝承が絶え、コンクリートは17世紀頃まで歴史から姿を消す。しかし、魔導技術文明世界ではその技術が完全に途絶せず、脈々と伝えられていた。


 もっとも、中世期の大飢饉や頻発した戦争、疫病流行などにより、原料供給の途絶や生産拠点の破壊、技術者の減少で、コンクリート利用は大幅に衰退した。


 なんせコンクリートは成分適正比率や利用濃度は非常にデリケートで、現代でも扱い方を間違えれば、強度不足などで事故を起こす。

 技術者の減少でまともな運用が出来なくなった結果、薄ら馬鹿な連中がコンクリート=信用ならねぇ。と断じてしまい、コンクリートは煉瓦や石材に劣る扱いを受けていた。

 少なくとも、ここ数十年前までは。


 評価が変わったのは、クレテアの大運河工事でコンクリートが使われたことだ。先々王アンリ14世の時代。放漫治世と浪費で金がなかったために煉瓦や石材より安いコンクリートが使われ、『あれ? これ悪くないやん』と評価の改善が始まったのである。


 当然、ヴィルミーナの麾下にもセメント会社も存在する。

 ただし、扱っている案件が大規模のため、他の資材同様、要求量に生産量がおっつかない。で、諸々から調達を図ったわけだ。


 が、仕事なれば冷厳冷徹なヴィルミーナである。親友の実家だから、と遠慮などしない。

 一方、ロートヴェルヒとてそう簡単に膝を折ったりしない。大企業に追い込みをかけられ、泣き寝入りするしかない中小企業とは違う。王国内でも有数の大貴族であり南部閥の領袖であり、家業を持つ大実業家で、領民達の生活に責任を負う治世者だ。

 となれば、交渉が刺し合いになるのは必定といえよう。


 ※    ※    ※


「大口取引ですから商品の単価割引はかまいません。しかし、あくまで適正と判断する範囲です。当家の煉瓦、木材、セメント。いずれの価格もロートヴェルヒ公爵家の看板で付けられた価値ではなく、その品質が優れているからこそ、とご理解ください」

 メルフィナは資料を突きながら続けた。

「それと購入物資の運搬に関して、当領の運搬業者を指名していただくことをお願いします」


「商品単価の取引額変更に関しては、統帥からも許可を得ておりますので、前向きに検討しましょう。ですが、購入商品の運搬に関しては要請をお受けすることは出来ません。当財閥は信頼できる流通事業を商っておりますから」

 テレサは澄まし顔で眼鏡の位置を修正し、言った。

「あくまで貴領の業者を利用することにこだわるのでしたらば、ロートヴェルヒ家の経費負担でお願いします。むろん、当社はその費用を負いません」


「商慣習上、運送運搬は地場業者を利用するものでしょう? 中長期的にみた場合、地場業者を軽んじることはそちらにとっても不利益を招くのでは?」

 メルフィナは射貫くようにテレサを見据えた。

「そもそも、そちらは製造業の販路開拓に地場業者と共栄的な関係を模索していらっしゃる。この件だけ例外というのは筋が通りませんよ」


 メルフィナはヴィルミーナへの直談判で白獅子の製造事業とつながりを持っている(9:3参照)。その関係から白獅子の“やり口”をある程度把握していた。


 白獅子の製造事業は商品の販路に各地の地場業者を取り込み、現地の販売網を利用する形態をとっていた。この観点に立てば、メルフィナが運搬にロートヴェルヒ領の業者を使うことを求めてもおかしくはない。


 テレサは不敵に口端を緩めた。

「お言葉ですが、地場業者では我々の要求する移送能力を満たしません。それに、当社の事業形態と地場業者は競合しませんから、問題ないと思いますよ」


 しかし、製造事業部と流通事業部は全く別だった。

 販路は現地に乗っかることを良しとしていたが、流通事業に関しては独自流通網を構築しようとしていた。各地域内の細々とした配達に関しては地場業者へ委託しても、主要都市間の運搬、大口運送に関しては国内シェアを押さえんばかりに展開している。

 現代日本で言えば、個人相手の宅配をやらず、企業や法人など大口専門の運送業。それが白獅子の流通事業だった。


「それに、貴領から王都やクレーユベーレまで配送能力があるのですか? 近場のデポまでしか運べないというなら、それこそ最初から当社が扱う方が安上がりですよ」

 眼鏡の奥で眼を鋭くし、テレサはさらに続ける。

「そして、当社が取引を求めている相手はロートヴェルヒ公爵家様です。ロートヴェルヒ公爵領の地場業者へ配慮する必要性を認めません。どうしても、当社に地場業者を利用することが条件とおっしゃるなら、その経費負担分を取引額に反映させることを要求します」


 すなわち――『ロートヴェルヒ公爵家自体には配慮しても、閥や領のことは知ったことではない』。


 現代地球の感覚で言えば、メルフィナの要求は『町工場に発注をしたら商店街のことも考えて』と言っているに等しく、テレサの言い分が真っ当に思えると思う。

 しかし、地元の横のつながり、というのは外の人間が思っている以上に大きい。特にこの時代は人の往来が限られた地域に限られるから、田舎ほど持ちつ持たれつの関係になる。


 ロートヴェルヒ公爵家ほどの大貴族でも、いや、大貴族だからこそ領内産業や派閥に配慮を怠れず、利益誘導と分配を欠かせない。それが、この時代のベルネシア王国社会だった。


 想像していた以上に厳しく攻めてきますね。

 メルフィナは眉をひそめた。


 ロートヴェルヒ公爵家の面子を無視した意見に、苛立ちすら覚える。しかし、一実業家として自由競争に身を置くメルフィナとしては、テレサの言い分も充分に理解できる。白獅子は王妹大公令嬢の財閥であるが、実態は貴族財閥というより企業財閥だ。社会責任は認めても、商売の競争原理を軽んじたりはしない。


 あるいは、ロートヴェルヒ公爵家が相手だから、という点もあるかもしれない。

 ロートヴェルヒ公爵家相手に競争原理に基づく取引を成功させれば、今後、貴族相手の商売に対しても安易な妥協はしない、と周囲に示せる。

 となると、白獅子はこの件で妥協しないと見て良い。


 運送料金の価格を下げて取引しますか? いや、その譲歩額を基準にされると不味いですね。仕事を採るために安い金で請け、結果として『働けど働けど楽にならじ』では意味がありません。


 メルフィナは少し考えこんだ。

 最悪のケースはこの取引が破談になり、大口注文を余所べ持っていかれること。ロートヴェルヒが製造する煉瓦、木材、セメントは高品質だけれど、独占ではありません。他領でも作っています。大口の案件を取られるのは不味いですね。


 仕方ないか……領内業者のために本命の魚を逃しては敵いません。ま、良いでしょう。その辺は私の事業で補えます。


 それに―――“準備体操”はこの辺で十分です。

 メルフィナは小さく頷いて言った。

「分かりました。領内運送業者の件は諦めましょう」


「ご理解いただけて助かります」

 テレサが”勝った”と微笑みかけた、その間際。


「ですが、当初こちらが要求していた負担分が解消したのですから、こちらの希望納品額も見合った見解が得られるものと考えます」

 ぐさりとメルフィナが釘を打ち込む。

 本命交渉では妥協しない、と宣言され、テレサの顔が微笑みかけたまま引きつった。


 ここからはまさに刺し合いである。

 煉瓦。木材。セメント。その品目ごとに取引額の交渉が行われた。これがまた重箱の隅を爪楊枝でほじくる如き細かな数字の刻み合いだった。

 しかも、交渉条件で互いに互いの裏を掻こうと細かな条件を提示しては、吟味し、拒否したり、変更を求めたり、代案を要求したり、と同席した周囲がげんなりするほど執拗な攻防戦が繰り広げられる。


 結局、交渉は夕刻間際までもつれ込むも決着つかず。続きは翌日と相成った。


 メルフィナは小街区オフィスを後にして、ロートヴェルヒ公爵家王都屋敷へ向かう。

 馬車に乗りこんだメルフィナは、ふ、と疲れた息をこぼし、

「思ったより粘りますね。流石はヴィーナ様の側近衆。よく鍛えられています。テレサ嬢はどう出るかしら」

 新しい玩具を見つけたように冷笑した。


「て……手ごわい……っ!」

 メルフィナが辞した後、自身の執務室に戻ったテレサは、執務机に突っ伏して呻いた。


 甘かった。テレサは眼鏡を外して眉間を揉みながら反省する。

 メルフィナが度々ヴィルミーナに事業や商売の件で相談を持ち込んだり、助言を求めたりする様を見ていたから、心のどこかでメルフィナを侮っていた。

 とんでもない過ちだった。

 なんという粘り強さ。運送業者の件で引かせることが出来たからいけると踏んだが……

 甘かった。なんだよ、あのねちっこさッ! 


「くそぅ……このままやられてなるものか。なんとしても、交渉に勝ってヴィーナ様に褒めて貰うんだから……っ!」

 テレサは両手で顔をバシッと叩き、眼鏡を掛け直す。

 こうなったら徹夜で戦略を練り直しだっ! 絶対に負けないんだからっ!

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[一言] (こいつらどこでも仲良く喧嘩してんな……)
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