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橘愛と異世界の仲間たち  作者: 坂本ヒツジ
プロローグ 異世界の仲間たち
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ディナーへの招待

 マリサが突然、何かを思い出した様に言葉を発した。


「ユリア王子からの言付けで、今夜ディナーへの招待を頼まれていたのを忘れていました。

 重要な事なのに。最初に言うべきでした。

 すみませんでした」

「 マリサが謝る事は全然ないわ」


 そう言った愛は、少しこまった顔になった。

 今着ている服は、男女兼用の調理の為の服で、これでディナーには出られないと思った。でも、この国の王子の招待は断れないなと困ってしまった。


「この服は料理学校の生徒が着る服なので、ディナーには相応しくないと思うのです。

 どうしたらいいでしょうか?」

「それはですね、えーと?」


 マリサは返答に困った。

 ユリア王子の要望には必ず答えなければならない。しかし、愛の言う事情も分かる。

 彼女はジュリアお姉さんを思い出し、姉さんの服が合うかもしれないと思った。アンドリュー第一王子と会うために、王宮に滞在してる。

 マリサは、姉が持っ来ている服を頭の中で呼び出して、黒髪の愛に似合うか順に確かめた。彼女に似合いそうなのが一つ見つかって、マリサの顔に笑みが戻った。


「 服ですが、姉のディナー用のドレスが似合うかもしれません。

 時間があまりないので、早速準備に取り掛かりたいと思います」


 そう言うとマリサは、愛に会釈をして、軽い足取りで部屋を後にした。

 ひとり残された愛は、ディナードレスをこれから着るのかと思うと不安になった。

 今まで、ディナードレスを着た事が一度もなかったからだ。


 しばらくすると、ドアのノックの音が聞こえた。

 返事をすると、マリサともう一人の女性が入って来た。花と鳥で見事に装飾された木箱を床に置いた。


「愛、こちらの方を紹介します。

 姉のジュリアです」

「初めまして。

 宜しくお願いします」


 姉のジュリアは青い目の美人で、薄い色の金髪を腰の辺りまで伸ばしていた。愛よりほんの少しだけ背が低かったけれど、体型は愛と同じ痩せ型だった。


「初めまして、ジュリアさん。

 こちらこそお願いします」

「さんは要らないわ。

 この三人の時や、二人の時は、お互い名前だけで呼び合いましょう」

「分かりました」

「早速だけれど、ディナー用のドレスを見てくれる?」


 ジュリアはそう言うと、持って来た木箱から見事な黒のドレスを手に取って愛に手渡した。それは、絹の様な滑らかな手触りと、見事なまでの刺繍がなされていた。

 愛は、これほど素敵なドレスを手に持つのは初めてで、自分に似合うのか全く分からなかった。


「このドレス、立派すぎて・・・。

 私に似合わない様な気がするのですが?」



「ちょっと待ってて」


 そう言うとジュリアは、ドレスを持って、愛の前に行ったり、後ろに行ったりして合わせてみた。

 愛は心配そうな表情を浮かべている。


「マリサ、貴女の言う通り、このドレスは愛にはピッタリね」

「でしょう、お姉さん」


 姉妹は、ニッコリとお互いに顔を見合わせて笑った。

 でも、まだ愛は心配顔だった。

 ふと、愛の頭の中で母の言葉が蘇った。


「人の親切を受け入れるのは、時には良いものです」


 愛は深いため息をした。


「は〜〜」


 この時がそうかもと思い、楽しそうに愛の周りを動いている姉妹に身を委ねた。

 ふと見ると、コルセットらしき物を箱の中から取り出していた。


「あのー、その様な物を付けた事が無いのですが、大丈夫でしょうか?」


 愛の心配顔をよそに、姉妹は装着の準備を始めている。

 ジュリアが意味ありげな声で話した。


「これは食事用で、お腹を閉めないからお腹いっぱい食べれるわ。

 それに、これは胸を持ち上げる効果があるのよ」


 しばらく身を任せていたら、マリサが愛の正面に来て精神を統一する様な仕草をした。そして、全身が映る鏡の様な物が愛の前に現れた。

 少し向こうが透けているものの、黒いドレスを着た黒髪の、素敵な女性がこちらを見ていた。

 胸は、先ほどのコルセットのおかげで大きく見え、肩から腰の部分まで密着しているドレスだったので、曲線美が魅力的に見えた。髪は短くまとめられ、和風の奥ゆかしさが滲み出ていた。

 黒のドレスのせいで、愛の肌の透明感がさらに引き立っており、口紅は赤で顔の印象がよりハッキリと見えた。

 まるで別人の様に見えた愛は、驚いた顔で二人を見回した。


「よかったわ。

 その顔だったら成功ね」

「よかったですね、愛」

「それでは私達も準備しますか?」


 マリサは愛の方を見て話した。


「私達もユリア王子に招待されたのです。

 最初は愛とユリア王子だけだったのですが、私達も一緒の方が話が和むとのお考えだそうです」

「ありがとうございました。

 自分ではないくらい素敵にしていただいて。

 とっても嬉しいです」

「それが、愛の持っている本当の自分よ。

 これからが楽しみ」


 そう言うとジュリアは微笑み、踵を返して部屋を出て行った。

 マリサは愛に軽くお辞儀をして、同じく部屋を後にした。


 一人残された愛は、鏡の前で初めて見る自分を見つめていた。

 魔法の世界に来て、まるで生まれ変わった様に彼女は感じていた。

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