第5話・双剣、炸裂
俺、生きてる。あの魔物にやられた傷は、しっかり治ってる。
けど力をもらっても、武器がない。そう思っていたら、紋章が光り、何もない空間から『蒼い刀』を生み出してくれた。
「木刀が二本だったので、蒼紋も武器を二本用意してくれたみたいです」
「すげぇな蒼紋。いいやつだな!」
嬉しくなって、蒼紋のある右手の甲を撫でてやる。
その瞬間、頭に電撃のようなものが走り、同時に聞き覚えのある声がした。
〔その武器の名は、天蒼刀〕
「天蒼刀……カッコいいじゃん!」
天蒼刀。それがこの双剣の名前、らしい。
俺が誰かを守るための刀。俺を守ってくれる刀。
この双剣なら、やれる!
〔行って!〕
「おう! あいつを、絶対に倒す!!」
魔物に向かって、全力で走る。
不思議だ。さっきまであんなに怖かったのに、今は全然平気で。
どんなやつにだって負けない自信でいっぱいだ!
「うおおおぉぉぉーーー!!」
魔物が右手の爪を振り下ろす。それを右手の剣で、斬り落としてやる。
痛みに耐えられないのか、魔物が吠える。
このままでは終われないと言わんばかりの咆哮。堪らず耳を塞いでしまう。
「うるさいんだよ、お前……!!」
ようやく咆哮が止んだと思った次の瞬間。魔物は残った左手の爪を、さっきと同じように突き出してくる。
それを見た俺は反射的に双剣で防御の構えを作る。そして思い出す。
この状況は、木刀が折られた時と同じだ、と。
マズい。また折られる……!そしたらもう……!
恐怖を感じ、俺は思わず目を閉じてしまった。
キィン!という金属音が響く。
俺も、刀も無事だった。魔物は目を見開いて、驚いたような表情で俺を見ていた。
右手の紋章が少し痛むことに気づく。ちらりと見ると、紋章が淡い光を放っていた。
これが、蒼紋の力なんだろうか?
魔物を見ると、まだ立ちすくんでいた。仕掛けるなら今しかない!
俺は双剣を構え直し、一気に魔物へ突っ込む。
「よくも散々痛めつけてくれたな、バケモノ! 死にかけた恨みとガイの痛み、ついでに折れた木刀の分まで、目一杯返してやる!!」
口元から首までを左の刀で斬り裂きながら、走り抜ける。右手に持つ刀でさらに、魔物に追撃を加える。
斬る。斬る。斬る。バケモノを倒す。その想いに身を委ね、ただ斬り刻む!
やがて魔物が倒れると、俺は魔物の身体を使って空に跳ぶ。
これで終わらせてやる!
「天蒼刀!! いっけぇぇぇ!!!」
攻撃を防いだ時のような痛みが、また右手を襲う。けどそんなのは気にしてられない。
魔物の首を捉え、天蒼刀を一気に振り下ろす!そして────。
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「や、やった……!」
ピクリとも動かなくなった魔物を見ながら、地面に腰を落とす。
勝った。俺、勝ったんだ。
強くてデカい魔物に……勝てたんだ。
初めての戦いだったけど、この蒼紋のおかげでなんとかなった。命のやり取りなんて、初めてだったからな。
「フェイ、ホントありがとな。天蒼刀とこの蒼紋のおかげで、勝てたよ」
「いえ。あなたの想いの強さがあったからこそ、あの魔物を倒せたんです……かっこよかった、ですよ」
フェイが笑顔でそんなことを言うもんだから、顔が熱くなってしまう。
そっか……俺が頑張ったから、倒せたんだ……。
安心したら、なんだか眠くなってきた。ガイが遠くで何かを言いながら近づいてくるけど、何を言ってるかわからない。
フェイも何か言ってる。でも眠気には逆らえなくて。
俺はそのまま、倒れてしまった。