表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドレッドノート  作者: 岩裂根裂
第5章・大陸間戦争
54/56

第48話・ドレッドノート

あけましておめでとうございます。

 蒼吾とフェイ。

 戦場に行くという少年と、それについて行く事のできなかった少女は、戦場で再会を果たしたのだった。


 久しぶりの対面に喜びを隠せない二人は、話すわけでもなくただ抱き合う。

 しかし、それを見守り続ける訳にもいかない。


「いい加減離れろ、二人とも」


 首根っこを掴んでひっぺがすガイ。

 言葉も必要のない仲の良さは大変よろしいのだが、それを見せつけるには不釣り合いな場に彼らはいる。


「後の楽しみにしておけ」


「う〜んごもっとも」


 蒼吾とガイのやり取りすら久しぶりなフェイ。笑みを浮かべて見つめる彼女を、新しい友人ユクは嬉しそうに見つめる。


「よかったね、フェイ」



 だが、幸せな時間は長く続かない。

 彼らの周囲に敵が押し寄せる。


「動きの早い連中だ!」


「それなら────ユクちゃん!」


「はいはい!」


 ジャガーノートに乗り込むユク。

 膝を折る巨人は再び立ち上がり、その大きな足で威嚇するように、大地を踏み鳴らす。


 潰されればひとたまりもないと分かる図体のモノが動き出すと、獣たちは来た道をすぐさま引き返した。


「これなら本陣まで一直線だな!」


 山ほどの巨人が襲いかかってくる、その様に恐怖を覚えない者はいないだろう。

 連合軍が目的とする、総大将撃破までの道は開けた。

 しかし……。


「よーし、このまま……ん、あれっ?」


 突然それは起こった。

 ジャガーノートが停止したのだ。

 何故か……ゼルドヴィンからこの平原へ来るまでに、ほとんどのエネルギーを使ってしまっていたから。


「そんなぁぁぁあッッ」


「そう簡単にはいかねーか……」


「さっきまではしゃいでた奴が何言ってる」


 そんなやり取りをよそに、巨人が進軍しないと見た獣たちは再び集まる。

 どう切り抜けるか、考えあぐねていたその時。彼女は、やってきた。


 風を切って飛ぶ、何か。

 地面に付いたそれは、なんと爆発を引き起こした!

 獣を吹き飛ばしたそれを放ったのは……。


「ハァイ♪」


 フォルティス。

 蒼吾たちがよく知る者だった。

 そして────。


「ギャウッ!?」


 フェイの背後から襲いかかる獣に、すぐさま弾をぶち当てる。

 その実力もまた、よく知るものだ。


「無粋なワンコロね」


「死んでるのか?」


「いんや。気絶弾ショックバレットっつーもんで眠らせたの」


 三日三晩は眠れる優れもの、らしい。それを撃ち込まれて無事で済むかは怪しい。

 だが蒼吾は、この血を流さない弾丸を見てある作戦を思いついた。


「フォルティス、その弾ってあとどれくらいだ?」


「予備はまぁまぁあるよ。どうしたの?」


「これ以上誰も死なせたくない。協力してくれ」


「いつになくマジね。ま、いいわ。やってやろうじゃない!」


「ガイ!フォルティスから銃を借りてくれ。フェイとユクはジャガーノートの中に!」


 言われるがまま動くそれぞれの仲間。

 蒼吾が編み出した策、それは。


「ガイ、フォルティス!俺に撃て!」


「正気!?」


「考えが読めんぞ!」


「いいからやるんだよ!任せとけ!」


 ガイとフォルティスは銃を構え、そして撃つ。

 蒼吾はそれを────弾き飛ばした。


「なんだと!?」


 弾かれた銃弾はそのまま獣の方へ。とにかく、とにかく蒼吾は刀を振り回した。


「奇想天外ってやつね!」


「二人ともまだまだ足りないぞ!」


 その言葉に釣られてフォルティスは持つ銃を増やし、ガイにも一丁を投げ渡す。

 二丁拳銃の乱れ撃ちを捌く、二刀流の舞い。

 誰がやっても上手くいくわけではない。

 信頼……それこそが、この作戦を可能としている。


 全ての弾丸を撃ち尽くし、全てを敵にぶつけた三人。

 周囲を取り囲む獣の群れは、いずこかへと消えていた。


「意外ね、大成功」


「正直、気が気じゃなかったがな……」


「まーまー上手くいったんだしいいじゃん」


 蒼吾へのお仕置きは両頬を押されるだけで済んだ。

 今度こそ、道は開けた……はずである。


「しかし、アタシらだけで突撃ってのはね」


「本陣の目の前でさっきのやるわけにもいかないよなぁ」


 どう考えても、手が足りない。


 しかしそこへ、機を伺っていたとでも言わんばかりに、味方の大軍が押し寄せた。


「なんだ!?」


「俺だ」


「なんだあんたか……」


 現れたのは、ガングレイヴ率いる本隊。

 その傍らで、アリシバンの援軍──リーフ達が手を振っていた。


「あいつらも来てくれてたのか」


「でなければ、無謀な作戦を通すはずがないだろう」


「なんだよ嫌味か?」


「独り言だが」


 顔を真っ赤にした蒼吾が掴みかかるが、難なくかわすガングレイヴ。


「俺やっぱコイツ嫌い!!」


「落ち着いてください蒼吾……」


「そうだ、落ち着け。もうすぐこの戦いも終わるのだからな」


 どういう意味だ、そう聞く前に。

 ガングレイヴは左手に持つ刀で、進むべき方向を指し示す。


「お前たちのおかげで、本陣までの風通しが良くなった。いよいよ最後だ」


 最後。

 この戦争が、ようやく終わる。


「なんか、あっという間だったな」


「蒼吾……まだ終わってないんだぞ」


「ですが、私たちが揃えば」


 そう。

 蒼吾、ガイ、フェイ。

 はじまりの三人が揃った今、倒せない敵などいないはず。

 そして────。


「こっちも忘れるなよ!」


「これ以上手柄はやらねえぜ、坊主!」


「オイラたちにも活躍させろ!」


 竜騎、ジーク、リーフ。出会った全ての仲間たちとなら。


「絶対勝てるッ!!」


 士気、最高潮。

 ガングレイヴは高らかに号令する。


 「これで終わりにする!全軍、進め!!」


 「オオオォォォ!!!」


♦ ♦ ♦


「カムイ様!」


「なんだ、騒々しい」


「連合軍が……!」


「なに?まさか!」


 カムイが目を見開くとそこには。

 部下たちを蹴散らして進む、忌むべき人間の姿があった。


「馬鹿な……あり得ん!!」


 人間たちが何千集まろうと勝てると、カムイは確信していた。実際、その自信を抱かせるほどの精鋭を揃えたつもりだった。

 だが今はどうだ?


「ふざけるな……貴様ら人間に押されているなど……!」


 敵の力を見誤り、本陣に噛みつかれている。なぜか?


「奴らは恐れを知らぬのか……!?」


 銃で射抜く者もいれば、拳を掲げて突き進む者もいる。

 弓、槍、太刀、大剣、浮遊する奇妙な兵器。そして紋章に反応する者。

 それらを操る十人の戦士も当然、自軍にとっては脅威だ。だが要因は恐らく、違う。


「(紋章の反応が大きい奴が一人。そいつが────!)」


 その十人の先に飛び出す、一人の少年。

 二刀を眼前に向けられ、カムイは少年を睨みつけた。


「貴様が支柱か、蒼紋ッ!!」


「あんたをやれば全部終わる……!勝たせてもらうぜカムイッ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ