幕間・思惑と予感と
とある城の一室。
そこには、一人の男と、その周囲を漂う七色の光の玉がいた。
「今回の蒼紋は、中々興味深い能力を持っているようだな」
男が呟くと、紫色の光が仄かにその輝きを増して答える。
「はい。ただの子供と侮っていましたが、敵に回すのは少々骨が折れます……クルギフが敗れたのも納得のいく力かと」
男は嬉しそうに口元を歪め、部屋の中心に置かれた水晶に近づく。
その水晶には、青い双剣を振るう少年が映し出されていた。
「フフ……順調に仲間を増やし、強くなれ。そして……」
そこから続く言葉はなく、男はただ拳を握る。
そんな男に、青い光が近づいていく。
「高槻 蒼吾の次なる目的地は、レスタリカ大陸のようです。ここで恐らく……」
「紅紋との衝突か……」
「それだけではありませんよ。紫紋も、何か企んでいるみたいです」
黄色の光も、男に寄り添うようにして話す。
だが男は何を言われようと、笑みを崩さない。クツクツと喉を鳴らし、ただ水晶を見つめていた。
「壁を乗り越えるだけの力があるかどうか、見ものじゃないか。だが……」
男は振り返り、七色の光一つずつに目をやる。
「死なれては困るのでな。常に目は光らせておけ」
「ハッ!」
「そして……レバンツ、フオ、ゴアムス。お前達にも、役目を与えよう」
「役目だぁ?」
レバンツと呼ばれた赤い光が揺れる。白と黒の球体もまた、淡い光で男の体を照らす。
「蒼紋、紅紋、緑紋の力は分かった。次は、他の大陸の契約者どもの元へ出向いてもらう」
「マジかよ、だりぃなぁ……」
「……でも、命令なら、やるよ」
「我らの使命の為にも」
「期待しているぞ、お前達」
男が両手を広げ微笑むと、七色の光はその場から散っていく。
部屋には、静かに佇む男と、何も映し出さなくなった水晶だけが残っていた。
「せいぜい励むことだ、生贄ども……宿命を知らぬまま、戦え……!」
光が消えた暗がりの中で、男の高笑いが響いていた……。
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「ぶぇっくしゅ!!」
自分でも驚くくらいの大きなくしゃみ。風邪でも引いたかな……。
「大丈夫ですか?」
心配そうに俺を見つめてくるフェイに「全然大丈夫!」と返す。誰かが噂してるとかだろう、多分。
ガイとフォルティスも少し不安そうな顔をしてるけど、笑って親指を立てると、「これは大丈夫そうだ」と言わんばかりの表情になってくれた。
「皆さん、もうじき到着しますよ!」
馬車を運転しているあんちゃんが俺達に声をかける。
もうすぐレスタリカ大陸。ソムラのみんなも憧れてた、いわゆる大都会。
ワクワクする気持ちを抑えられず、俺は馬車の中をゴロゴロと転がった。
「どんなとこなんだろうなぁ、レスタリカ大陸!すっげー楽しみ!」
「もう、蒼吾さん。お行儀が悪いですよ!まぁ、楽しみなのは私も一緒ですけど……」
「まっ、のんびり楽しみましょーよ」
「……俺達の目的は人探しだってこと、忘れてないよな?」
まだ見ぬ新天地『レスタリカ大陸』に思いを馳せ、俺達四人は馬車に揺られながら、ゆっくりとした時間を過ごしていた。
そこで俺とフェイの運命を、大きく変える出来事が起こることも知らずに……。




