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ドレッドノート  作者: 岩裂根裂
第1章・蒼の紋章
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第2話・ありふれた日常、そして

 いつもの朝。

 今日も俺……高槻 蒼吾のありふれた日常が始まる。

 飛び起きて、顔を洗って、服を着替える。

 寝癖気味の髪の手入れもほどほどに、部屋から出る。


 「父さん、母さん、おはよう!」


 「おう、起きたか」


 「おはよう、蒼吾」


 両親──高槻 蒼真と高槻 深青──への挨拶。

 いつもの日常の、いつもの習慣。


 「今日もチャンバラか?」


 「チャンバラじゃないよ、修行!」


 「怪我しないようにね」


 「心配しすぎだって! んじゃ、行ってきます!」


 愛用の木刀二本を手にして、家を飛び出す。

 畑の野菜にも少し挨拶をして、目的地に向かって走る。

 これが俺の、一日の始まりだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 “平和”の名を冠する七大陸の一つ、『シンガジマ大陸』。

 そのシンガジマ大陸の端っこにある、のどかな村『ソムラ』で、俺は暮らしている。

 周辺に魔物はまったくいない、賊も来ない。たまに来るのは紙芝居。

 俺はソムラが大好きだ。

 いわゆる都会に、憧れがない訳じゃない。

 けど父さんと母さんと過ごす時間、親友との他愛ない話、自然に囲まれている環境、可愛い動物達。

 そんな、シンガジマ大陸でのありふれた生活が、俺にとってはなによりも大切だ。


 その中で最も気に入っているのが……。


 「遅いぞ、蒼吾」


 親友──眞壁 ガイ──とのチャンバラ……もとい、修行。

 ガイは村一番の武芸者、って言われてる。二番目は絶対俺だ!

 強くて、優しくて、カッコイイ。そんな親友との修行は、俺の大好きな生活の一部だ。


 「ガイが早すぎるだけだって」


 軽口を言い合う。俺とガイは、いつもこんな空気だ。


 「じゃあ早速……やるか」


 ガイが、いつもの大きめの木刀を構える。


 「おう!」


 俺はいつもの二刀流の木刀を構える。

 俺とガイの修行が始まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「んがーーっ! また一本も取れなかった!」


 木刀と木刀で打ち合ってから数分後。

 やっぱりガイに負けた!

 俺は地面に突っ伏し、ジタバタと暴れ出す。

 攻め方が毎回同じじゃ結果も変わらない、と冷静に言うガイ。耳にタコができるくらい聞いたセリフだ。

 俺はガイとの修行は大好きだけど、始めてこの方、一度も勝てていない。

 通算、297敗。


 「もうすぐ300戦か……キリのいい数字だし、その時は勝てるかもな?」


 「そう言ってお前、100戦目も200戦目も本気だったろ!!」


 俺は地面から身体を起こし、指を指しながら抗議する。いつもは手加減してくれてるのに、キリのいい数字の時は本気を出してくる。

 手加減ありで1本も取れない俺も俺だけど、やっぱり悔しいもんは悔しい。


 「そろそろ一本は取ってもらわないとな。勝ちっぱなしも飽きてきた」


 「ぬぐぐ……次やるとき、吠え面かかせてやるからな……」


 呆れた表情にカチンときた俺は、いつか絶対勝利すると心に誓う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「さて、そろそろ切り上げるか」


 修行もひと段落。ここらでいいかとガイが言う。


 「蒼吾。この後、予定はあるか?」


 「無いけど、なんで?」


 「村の外に魔物が出たらしい。村長に討伐を頼まれてな、一緒に行くか?」


 ガイが訪ねてくる。魔物の討伐はいつもガイが一人で行く。誘ってくるのは、かなり珍しい。

 ガイが一人で倒せないような魔物が出たのかもしれない。それで俺を誘ってくるって事はだ!


 「俺の力が必要ってことだな!」


 「…………まぁ、そうだ。細かい説明は必要ないな?」


 「おう!早速行こうぜ!」


 初めての討伐のお誘い、テンションが上がってくる!俺の本当の実力を、ガイに見せてやる時がきた。

 討伐の依頼をこなすべく、俺達は村の外に出る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「魔物なんていないじゃん」


 草と木と花と道を眺めながら、歩くこと数十分。早くも俺は飽き始めていた。

 魔物のまの字も出てこない、変わらないソムラ周辺の風景。

 これじゃあいつもの散歩と変わらないなぁ……。


 「うちの村は争い事には無縁だからな、子供が動物か何かと勘違いしたんだろう。魔物だとしても、別の獲物を探しに、もう他所へ行ったかもしれないな」


 俺達は歩き損になるのかとネガティブなことを考えていると。


 「あっ!!」


 木陰に横たわる人を見つけた。突然のことだったから思わず大きな声を出しちまった。


 「どうした?」


 「あれって、人、かな」


 俺は人が倒れている方向を指し示す。


 そこには、銀髪の少女が倒れていた。

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