表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドレッドノート  作者: 岩裂根裂
第3章・その矢、月の煌めきを纏いて
22/56

第19話・ある日森の中

 「城に戻ってこいだって!?」


 「はい。お父様からの手紙には、そのように」


 オイラの名はリーフ・ベルトムット。

 ある日オイラは森の中で、一人の女の子を助けた。その女の子の名はフェアリ・リムサス。このアリシバン大陸一の大国、アヴァロンの王女だ。

 フェアリは見聞を広める……っていう名目で、城を飛び出してきたらしい。そんなフェアリが魔物に襲われてるところを、オイラが助けたってわけ。

 そんなフェアリと一緒にしばらく旅をしていた頃、フェアリが住んでいた城の兵士から手紙が届けられた。

 オイラ達の場所が筒抜けなことにも驚いたけど、それより何より、手紙の内容にオイラ達は驚いていた。


 「わたし達はかなりの期間、旅をしていたはずですが……なぜ今になって?」


 「そこが謎だよね。もっと早くオイラ達を捕まえに来てもおかしくなかったはずだけど……」


 「それも、一人で来るようにと……何か、嫌な予感がします」


 「ん〜……でも、エルローデさんの命令じゃ、フェアリは断れないよね?オイラの事は心配しないで、行っておいでよ!」


 「リーフ……はい!でも、でも……お話を終えたら、すぐに帰って来ますから!」


 「ん!待ってるよ!」


 兵士と一緒に、城への道を歩いていくフェアリ。

 しばらくそれを見送ったオイラもフェアリに背を向け、今日の食料を探そうと歩き出すことにした。

 けどその歩みは、すぐに止まる。


 「────なんだ?」


 奇妙な感覚。フェアリからもらった紋章の力で、オイラは五感が普段よりも研ぎ澄まされている。

 そのおかげで、どんな小さな音でさえも聞こえるようになった。

 さっき聞こえたのは……。


 「足音が4つ……けど、1つはかなり大きい……魔物に追われてたりするかな?」


 音が聞こえた方に駆け出す。

 木に登り辺りを見回すと、何かに追われている三人を見つけた。

 その何かとは……。


 「カエル……!そうか、池の主を刺激しちゃったんだな」


 この近くにあるカエルの池。

 その池の主は、さほど凶暴ではないのだが……子供達に危害を加えようと近づく者や、そうでない者にも、すぐに襲いかかってしまうのだ。

 恐らく三人は、カエルの習性を知らない余所者。このままではさすがにマズいな。


 「ちょっと手を貸してあげよっかな」


 フェアリと契約した時にもらった弓を構える。名前は獣緑弓じゅうりょくきゅう

 右手を弦にかけ、緑色に輝く矢を生み出す。

 この位置なら外さない!


 「行け!速矢そくし!」


 矢は木々の合間を縫うように進み、巨大なカエルへと吸い込まれてゆく────。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 リカバ草を探すため、アリシバン大陸に来た俺とリュウキとフォルティス。

 必死に薬草を探していると、俺は足を滑らせ、池に落ちてしまった。

 すぐリュウキに助けてもらって、溺れるって事はなかったんだけど……問題はその後。

 勢いよく池に落っこちた俺は、この池に住む生き物を怖がらせてしまったみたいだ。

 シンガジマで遭遇した魔物並みにデカい、緑色の生き物から、俺達は逃げていた。


 「薬草探しに来ただけなのに、なんでこんな事に!!」


 「あんたが足元に気をつけないからでしょ!!なんとかしろ!!」


 「デカすぎだろ!!無理だって!!」


 「だが、このままでは追いつかれるぞ!」


 「くそっ、さっさとリカバ草を見つけなきゃならないってのに……!!」


 距離をどんどん詰めてくる、巨大な生き物。

 ついに捕まりそうになってしまう、その時。


 「速矢そくし!」


 声とともに緑色の光が、巨大な生き物に刺さる。ヤツは俺達を睨みつけたまま、倒れていった。


 「危ないとこだったね。カエルには、気をつけた方がいいよ」


 木の上から聞こえてくる声に顔を上げると、緑色のハチマキを頭に巻いた、茶髪の男がいた。

 目が合うと男はフッと微笑んで、そのまま木から降りてきた。


 「あ……あんたは?」


 「オイラは、リーフ・ベルトムット!三人とも、無事でよかった」


 リーフと名乗ったその男はくしゃっと笑い、右手を差し出してくる。

 その右手を取り、立ち上がろうとすると……。


 「うわっ!」


 「うおっ!?」


 一瞬だけ、蒼と緑の眩い光が走った。俺達は互いに仰け反り、尻餅をついた。

 初めて蒼紋を使って戦った時みたいに、右手が痛い。それはリーフも同じみたいで、不思議そうに右手を抑えていた。


 「今の……君も、紋章を?」


 「あんたも、なのか?」


 緑色の紋章を持つ男、リーフ・ベルトムット。

 これが、俺以外の契約者との、初めての出会いだった。

第3章開幕。ご指摘などございましたら、ツイッターや感想欄によろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ