第18話・夢と希望はまだ消えない
「おい、フェイ!起きろ、起きてくれ!フェイ!!」
「落ち着け、蒼吾!まずはここから出るんだ!」
「だけど……!」
「フェイを死なせたいのか!!早く手当をしなければ本当に死ぬぞ!!」
「っ……分かった……!」
「よし。リュウキ、シキ!フェイを宿へ!イズモ様は俺が連れて行く。フォルティス、蒼吾を頼んだ!」
「任せてくれ!」
「すぐに手配しよう。蒼吾君とフォルティス君も、早く!」
「オラ、とっとと行くのよ!」
「分かってるよ……!!」
イズモに浄化の剣を刺して、イズモと木から毒が抜けていって、イズモも木から解放されて。
全部上手くいったと思った。でも、甘かった。
ミデハがいる事を、俺は完全に忘れていた。
その油断が、フェイを傷つけた。
俺が守るって、言ったのに。
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「どうだ、フェイの様子は?」
「治療薬、解毒薬、治癒魔法……あらゆる手は尽くしたが、身体から毒は抜けていない」
フェイとイズモを宿で休ませてから、しばらく経った。
フェイはまだ目を覚ましていない。
「生きてはいる。だが、どれだけ保つかは分からない」
「ツキノミヤにある全ての薬草も、医師の治癒魔法も駄目となると……この大陸における治療法は、全て出し尽くしたと言っても過言ではない」
不安になる情報ばかりをつらつらと述べていく、シキとリュウキ。
フェイを前にしながらそんな事を言われて、俺は苛立ちを覚えた。
「じゃあ……じゃあどうするんだよ!このまま見殺しにするなんて、絶対、イヤだ……!」
「だが────」
「はいリュウキさん、ストーップ。それ以上余計なこと言ったら、アタシがあんたをぶん殴るわ」
リュウキを制止し、睨みつけるフォルティス。
その顔には、確かな怒りが満ちていた。
「すまない、蒼吾……フェイが倒れて一番堪えているのは、お前だものな」
「自分も、悪かった。不安にさせてばかりで」
リュウキとシキが謝ってくる。
確かに腹は立ってたけど、フォルティスが代わりに怒ってくれたおかげで、俺は冷静さを取り戻すことが出来た。
「別に、大丈夫だよ。二人も悪気があったわけじゃないだろうしさ」
笑ってそう言うと、リュウキもシキも微笑み返してくれた。
フェイが寝てる前で、喧嘩なんかするもんじゃないよな。それを分かってたから、フォルティスは早めに止めてくれたのか……?
ちらりとフォルティスに目を向けると、ガイと小声で何か話していた。
何を話しているのか気になったけど、フォルティスはすぐにこっちに向き直ったため、聞けなかった。後でガイに直接聞いてみよう。
「さて!落ち着いたみたいだし、ちょっとアタシの話を聞いてもらおっかな」
パン、と手を鳴らすフォルティスに、みんなの視線が集まる。
「とりあえず結論だけ言うわね。フェイちゃんを治す方法はある。あの毒は、治せるわ」
「ほんとか!?」
「はいはーい落ち着けー」
フェイを治せる。それを聞いた俺は、思わずフォルティスに詰め寄ってしまう。すぐに押しのけられたけど。
「このシンガジマのすぐ隣の大陸、癒しのアリシバン大陸!この大陸は薬草の宝庫って言われてるくらいに、草だらけ木だらけよ」
草だらけ、木だらけ。一面が緑色って事か?
ミデハのせいで緑にいいイメージを抱けない俺はすでに、アリシバン大陸に癒してもらえそうになかった。
そんな事を考えているうちにも、フォルティスは話を進めていく。
「このアリシバン大陸にある特別な薬草。名前は『リカバ草』。このリカバ草を煎じた薬は、どんな病気にも効くって言うわ。それを採るか薬を買って、フェイちゃんに飲ませようってワケ!どう?」
「よし、行こう!」
「ちょーっと決断早すぎるんじゃない?」
「フェイが助けられるならなんだってやってやる。それに、フェイだってずっと毒に耐えてられる訳ない。急がないと!」
リカバ草。それがあれば、フェイを助けられる。それを聞いた俺は、居ても立っても居られなかった。
「しかし、誰が探しにいく?自分はイズモ様が不在の間、ツキノミヤを管理しなければならない。しばらくは動けないぞ」
「私が行く」
手を挙げたのは、リュウキだった。
「いいのか、リュウキ?」
「蒼吾もフェイも、イズモ様を……このツキノミヤを救ってくれた恩人だ。戦士として、この恩は返さなければならない」
「リュウキ……ありがとう」
「当然、アタシも行くわ。情報提供者としてね」
「サンキューな、フォルティス!」
心強い仲間が二人。この二人が一緒なら、知らない大陸でもきっと大丈夫だ。
「俺は残る。誰か一人くらいは、フェイの側にいてやらないとな。ここでフェイと一緒に、お前達の帰りを待っているよ」
「ガイ、ありがとな。すぐ帰ってくる!」
「ああ。気をつけてな」
ガイと拳を合わせて、お互いに笑う。
そして、フェイの寝顔を少しだけ見つめる。
「フェイ……待ってろよ。すぐにリカバ草を持ってくるからな!」
フェイに背を向け、フォルティスとリュウキを連れて部屋を後にする。
次なる目的地は、アリシバン大陸。
この大陸にも、七眷龍がいるのかもしれない。それでも俺は、止まれない。
絶対に、フェイを助けるんだ!
次回は幕間。その次の話から、第3章となります。




