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ドレッドノート  作者: 岩裂根裂
第2章・平和を脅かすもの
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第18話・夢と希望はまだ消えない

 「おい、フェイ!起きろ、起きてくれ!フェイ!!」


 「落ち着け、蒼吾!まずはここから出るんだ!」


 「だけど……!」


 「フェイを死なせたいのか!!早く手当をしなければ本当に死ぬぞ!!」


 「っ……分かった……!」


 「よし。リュウキ、シキ!フェイを宿へ!イズモ様は俺が連れて行く。フォルティス、蒼吾を頼んだ!」


 「任せてくれ!」


 「すぐに手配しよう。蒼吾君とフォルティス君も、早く!」


 「オラ、とっとと行くのよ!」


 「分かってるよ……!!」


 イズモに浄化の剣を刺して、イズモと木から毒が抜けていって、イズモも木から解放されて。

 全部上手くいったと思った。でも、甘かった。

 ミデハがいる事を、俺は完全に忘れていた。


 その油断が、フェイを傷つけた。

 俺が守るって、言ったのに。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「どうだ、フェイの様子は?」


 「治療薬、解毒薬、治癒魔法……あらゆる手は尽くしたが、身体から毒は抜けていない」


 フェイとイズモを宿で休ませてから、しばらく経った。

 フェイはまだ目を覚ましていない。


 「生きてはいる。だが、どれだけ保つかは分からない」


 「ツキノミヤにある全ての薬草も、医師の治癒魔法も駄目となると……この大陸における治療法は、全て出し尽くしたと言っても過言ではない」


 不安になる情報ばかりをつらつらと述べていく、シキとリュウキ。

 フェイを前にしながらそんな事を言われて、俺は苛立ちを覚えた。


 「じゃあ……じゃあどうするんだよ!このまま見殺しにするなんて、絶対、イヤだ……!」


 「だが────」


 「はいリュウキさん、ストーップ。それ以上余計なこと言ったら、アタシがあんたをぶん殴るわ」


 リュウキを制止し、睨みつけるフォルティス。

 その顔には、確かな怒りが満ちていた。


 「すまない、蒼吾……フェイが倒れて一番堪えているのは、お前だものな」


 「自分も、悪かった。不安にさせてばかりで」


 リュウキとシキが謝ってくる。

 確かに腹は立ってたけど、フォルティスが代わりに怒ってくれたおかげで、俺は冷静さを取り戻すことが出来た。


 「別に、大丈夫だよ。二人も悪気があったわけじゃないだろうしさ」


 笑ってそう言うと、リュウキもシキも微笑み返してくれた。

 フェイが寝てる前で、喧嘩なんかするもんじゃないよな。それを分かってたから、フォルティスは早めに止めてくれたのか……?

 ちらりとフォルティスに目を向けると、ガイと小声で何か話していた。

 何を話しているのか気になったけど、フォルティスはすぐにこっちに向き直ったため、聞けなかった。後でガイに直接聞いてみよう。


 「さて!落ち着いたみたいだし、ちょっとアタシの話を聞いてもらおっかな」


 パン、と手を鳴らすフォルティスに、みんなの視線が集まる。


 「とりあえず結論だけ言うわね。フェイちゃんを治す方法はある。あの毒は、治せるわ」


 「ほんとか!?」


 「はいはーい落ち着けー」


 フェイを治せる。それを聞いた俺は、思わずフォルティスに詰め寄ってしまう。すぐに押しのけられたけど。


 「このシンガジマのすぐ隣の大陸、癒しのアリシバン大陸!この大陸は薬草の宝庫って言われてるくらいに、草だらけ木だらけよ」


 草だらけ、木だらけ。一面が緑色って事か?

 ミデハのせいで緑にいいイメージを抱けない俺はすでに、アリシバン大陸に癒してもらえそうになかった。

 そんな事を考えているうちにも、フォルティスは話を進めていく。


 「このアリシバン大陸にある特別な薬草。名前は『リカバ草』。このリカバ草を煎じた薬は、どんな病気にも効くって言うわ。それを採るか薬を買って、フェイちゃんに飲ませようってワケ!どう?」


 「よし、行こう!」


 「ちょーっと決断早すぎるんじゃない?」


 「フェイが助けられるならなんだってやってやる。それに、フェイだってずっと毒に耐えてられる訳ない。急がないと!」


 リカバ草。それがあれば、フェイを助けられる。それを聞いた俺は、居ても立っても居られなかった。


 「しかし、誰が探しにいく?自分はイズモ様が不在の間、ツキノミヤを管理しなければならない。しばらくは動けないぞ」


 「私が行く」


 手を挙げたのは、リュウキだった。


 「いいのか、リュウキ?」


 「蒼吾もフェイも、イズモ様を……このツキノミヤを救ってくれた恩人だ。戦士として、この恩は返さなければならない」


 「リュウキ……ありがとう」


 「当然、アタシも行くわ。情報提供者としてね」


 「サンキューな、フォルティス!」


 心強い仲間が二人。この二人が一緒なら、知らない大陸でもきっと大丈夫だ。


 「俺は残る。誰か一人くらいは、フェイの側にいてやらないとな。ここでフェイと一緒に、お前達の帰りを待っているよ」


 「ガイ、ありがとな。すぐ帰ってくる!」


 「ああ。気をつけてな」


 ガイと拳を合わせて、お互いに笑う。

 そして、フェイの寝顔を少しだけ見つめる。


 「フェイ……待ってろよ。すぐにリカバ草を持ってくるからな!」


 フェイに背を向け、フォルティスとリュウキを連れて部屋を後にする。

 次なる目的地は、アリシバン大陸。

 この大陸にも、七眷龍がいるのかもしれない。それでも俺は、止まれない。


 絶対に、フェイを助けるんだ!

次回は幕間。その次の話から、第3章となります。

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