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ドレッドノート  作者: 岩裂根裂
第2章・平和を脅かすもの
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第16話・地獄と戦う覚悟

 「な……なんだよ、これ……」


 うねうねと動く大量の木。木は多くの兵士を貫いており、床は血で満ちていた。

 この階層にほとんど兵士がいなかったのは、みんなここで死んだから……なのか?


 「……こんな、ひどい……」


 「蒼吾、フェイ!あれを!」


 ガイが指差す方向には、血だまりの中に倒れているリュウキとシキの姿が。

 俺は慌てて駆け寄り、必死に呼びかけた。


 「おい、リュウキ!大丈夫か!しっかりしろ!!」


 身体を揺さぶると、少しずつリュウキの目が開いていく。


 「ぅ……お前、は……?」


 「よかった、生きてる……!」


 本当に小さい声だけど、リュウキはなんとか話せるみたいだ。ゆっくりと起き上がるリュウキの身体を見ると、特に傷ついた様子はなかった。

 この惨状を見て、気絶したってところか?

 リュウキはしっかり意識を覚醒させたのか、俺達を驚いたような目で見ていた。


 「……お前達、なぜここに」


 「ちょっと事情があってねー。ま、その辺の説明は後で蒼吾から聞いてよ」


 「俺に丸投げかよ! ……なあリュウキ、なんでこんなことに?」


 「ハッ……! そうだ、まだイズモ様が……! お前達、今すぐに逃げるんだ!」


 「なんだと?」


 「イズモ様はもう……手遅れだ……!」


 リュウキが言い終えた次の瞬間。

 波を打つように動く、先の尖った木が、俺達を捉えていた。


 「させるか!」


 リュウキが血だまりの中から槍を拾い、襲いかかる木を退ける。


 「これは……!?」


 「……この木の一本一本が、私達を殺す意志を持っている。ここから逃げなければ、本当に死ぬぞ!」


 「イズモを止めればいいんじゃないのか?」


 「無理だ。奴の側には、まだ……」


 リュウキが玉座に槍を向ける。向けられた槍の先には、緑色の髪の女と……。

 顔以外の部分が全て木に覆われている、白い髪の女の子がいた。


 「あれが、イズモ……!?」


 「隣にいるのが、占い師か?」


 そう言うと、緑色の髪の女……占い師が手を上げる。


 「ハァーイ! 占い師でーす!」


 この状況に全く合わない笑顔を浮かべながら手を振る、占い師。

 ふとリュウキを見ると、歯を食いしばりながら震えていた。


 「ミデハぁぁぁ……!!」


 ミデハ? どこかで聞いたことがあるような……。

 そうだ! ハマシブキでガイが戦った、リザルカが言ってたんだ!


 『あとはミデハに任せるとしましょう。それでは魔女と契約者、ガイ殿。またお会いしましょう』


 七眷龍のリザルカが任せると言っていたなら、こいつは……!


 「お前も七眷龍だな!」


 「ご名答〜! 七眷龍が一人、緑龍・ミデハちゃんで〜す! よろしくね〜!」


 この状況は、あいつが……ミデハが作ったものなのか。

 汚いやり方だ……!


 「イズモちゃんはぁ〜わたしの忠実なしもべになっちゃったの〜! 早く逃げないと、あなた達も死んじゃうよ〜?」


 「こいつっ……!」


 確かにこいつの言う通りだ。このままじゃ、全滅する。

 だからってどうすればいいのか。作戦なんて、全く思いつかない。

 そんな時、リュウキが俺達の一歩前に出た。


 「私が食い止める。お前達は、逃げろ」


 「なっ……何言ってるんだ、リュウキ!」


 「あんなバケモンに一人で突っ込んだら、間違いなく死ぬわよ!?」


 「私は……守るべき主君を守れなかった。ならば、まだ生きている人間は、せめて……!」


 俯くリュウキ。俺はその表情を見て頭に血が上った。

 リュウキの胸倉を掴み、向き直る。


 「ふざけんな!お前が死んで、俺達が生き残ったって、いいことなんか何もないんだよ!!主君が死んだからって、後を追うみたいな真似すんな!主君が死んだなら、主君の分まで、死ぬ気で生きろ!でも死ぬな!!」


 「それに、俺達が逃げてしまったら、ツキノミヤの人間はどうなる?」


 「もう後になんて引けないのよ。ここにいる以上ね」


 「なあリュウキ。一人で諦めるにはまだ早いだろ?一緒に生きて、生きて、それでもどうにもならなかった時に、一緒に諦めようぜ」


 「……私は……」


 震えるリュウキ。そんなリュウキに、フェイは優しく声をかけた。


 「リュウキさん。イズモさんはまだ死んではいません。そして……助ける方法が、ない訳ではありません。」


 「なに……!?」


 「ほんとか、フェイ!?」


 いつになく真剣な表情を見せるフェイ。その手には、小さい刀が握られていた。


 「それは?」


 「……見ていてください」


 フェイはそう言うと、地面の木に刀を突き刺した。すると、紫色に染まっていた木から、紫の部分だけが消えていく。


 「これって……!?」


 「傷を治す、癒しの魔法とは少し違う……蒼の魔女だけが扱える、一部の事象を捻じ曲げる力」


 「事象を、捻じ曲げる……?」


 「分かりやすく例えると、病気にかかってしまった人の病気を、無かった事にする力……でしょうか」


 「つまり……イズモが生み出す木が持っている毒を、打ち消せるのか?」


 「すげーじゃん!これなら……!」


 「やれるかもしんないわね」


 「けど、一本一本にその力をやってたんじゃ、ラチがあかないよな?」


 「はい。ですから……イズモさんから毒を取り除けるだけの力を込めた武器を、今から作ります。ですが、時間がかかってしまうんです」


 「なんだ、そんなこと!」


 武器を構える俺とガイ、そしてリュウキ。


 「絶対守ってやる。だから安心して、武器作っててくれ!」


 「……はいっ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 木が俺達の前に群がる。

 そんな中、フォルティスだけが武器を持っていないことに気づいた。


 「フォルティス、まさか丸腰で……?」


 「んな訳ないでしょ、アタシにもちゃんと武器はあるわよ。────術式展開マテリアルオープン


 フォルティスが唱えると、両腕に文字のようなものが浮かび上がってくる。

 すると、何もない空間から黒く光るモノが出てきた。木製の持ち手から始まり、段々と細長くなっていくような形の武器。その先端には小さい穴が開いていた。


 「どこから出したんだ、それは……」


 「フェイちゃんとはちょっと違うけど、これも武器を生み出す魔法みたいなもんかしら?ほら、援護してやるからとっとと行った行った!」


 なんか釈然としないけど、戦ってくれるならそれでいいか。

 イズモ……絶対、助けるからな!


 「よし……! フェイの武器が完成するまで、みんな死ぬなよ!」


 「お前こそな」


 「イズモ様……なんとしても救い出す!」


 「さぁーて、魔物退治といきますか!」


 フォルティスの攻撃によって、戦いの火蓋が切られる。

 こんな不気味な木なんかに、負けるもんかよ!!

フェイの能力は、ゲームで言うデバフ解除と同じです。つまり、HPは回復させられません。治せるのは外傷と、病気のみ。

出血は止められても、出血によって失った血は、取り戻せません。

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