表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドレッドノート  作者: 岩裂根裂
第2章・平和を脅かすもの
17/56

第15話・牢屋脱出、地獄への到達

 ツキノミヤ王宮の地下にある、薄暗い牢屋。

 俺達はまだそこに座っていた。

 フォルティスの言う何かは、まだ起きていない。


 「何も起きないな」


 「……そもそも、何かってなんなんだろうな?」


 「考えられるのは、占い師が裏切る……などでしょうか。リュウキさん、それにシキさんという方は、占い師をあまり信用していないようでしたし」


 確かにあり得るかも。

 俺達の拘束は、占い師を通してイズモって人から命じられた……って言ってた気がする。

 そんな占い師の事を、リュウキとシキはよく思ってないみたいだった。イズモがいなかったら絶対に従ってなかったはずだ。


 「あいつらと話して、納得させられれば……イズモから占い師を引き離せるかも?」


 「そうだな。あの二人を味方につけられれば、この状況を打開出来る可能性はある」


 「その為にもこの部屋を出ないと、ですね。出る方法は分からずじまいですけど……」


 ここで俺は、一つだけ案を出してみた。


 「そうだ!この扉、フェイのガンビットで壊せたりしないか?」


 フェイが目を閉じて両手を握る。

 すると、フェイの周りが少しずつ、青く光っていく。そういえば初めてガンビットや人形を見た時も、こんな光から作ってったっけ……。

 けどその光はすぐに消えてしまう。フェイは目を開け、ふう、と小さく溜め息をつく。


 「魔力が安定していないのか……私の魔法が、この牢屋では使えないんです。恐らく脱出を防ぐために、魔力を封じる術式が施されているのかもしれません」


 「マジか!本当に八方塞がりって感じだな」


 「結局、今俺達に出来る事は何もないか……」


 三人で溜め息をついてしまう。

 こんなとこでじっとなんてしてられないってのに……このままじゃ本当に旅が終わっちまう。

 俺はゴロンと寝転がり、目を閉じる。

 その時。上からかなり大きな音が響き、牢屋を激しく揺らした。


 「な、なんだ!?」


 「地震、でしょうか……!?」


 けど揺れはすぐに収まった。


 「いや、地震にしては短い。この建物だけが揺れたのか?」


 オロオロと慌ててしまう俺とフェイ。そんな中、ガイが壁に手を当てて問いかける。


 「フォルティス。これがお前の言っていた、何かか?」


 「……ええ。始まったわ」


 その声を聞いた俺も、壁にトン、と手を当てる。


 「あんたは、上で何が起こってるか、知ってるのか?」


 「いーや、細かいことは知らないわ。ただ……」


 「ただ?」


 「あのイズモとかいう子が、占い師にヤバイ事されてんのは確かよ」


 ヤバイ事ってなんだ?

 気になったけど、この場は追求しない事にした。

 とにかく、このままここにいるのはまずい。でも動く事も出来ない。そんな時、地下室の扉が勢いよく開けられた。


 「お前ら!今すぐに逃げろ!」


 「この王宮、もうやばいっす!」


 「助けに来ました〜」


 「あんたらは……!?」


 「通りすがりの、看守三人組だ!今鍵を開ける、少し待っていろ!」


 看守三人組に鍵を開けてもらい、外に出る。


 「ようやく出れた……ありがとな!」


 「フン、礼には及ばん」


 「恩返ししただけっすから!」


 「これで貸し借りなし。ですね〜」


 「恩返し、って……?初対面だよな?」


 「……とにかく、義理は果たした!お前達!謁見の間には、絶対に近づくなよ!絶対だ!分かったら、さっさと逃げるんだぞ!」


 言い終えると、看守達は慌てた様子で地上へ走っていった。あいつら、どっかで聞いたような声だったな……?

 俺達もすぐ地上に行こうと思ったけど、足元に光っている何かを拾うため、足を止めた。


 「これって……鍵か?」


 「みたいだな。奴らが落としていったのか」


 俺達が入っていた牢屋の鍵はまだ刺さったまま。だとするとこの鍵は、フォルティスの牢屋の……?

 俺は迷わずに、その鍵を鍵穴に差し込んだ。扉はすんなりと開き、中には目を細めながら笑う、黒い髪をポニーテールにまとめた女の姿があった。


 「へぇ……アタシを助けようっての?大したお人好しね、あんた」


 そんなフォルティスに、俺は右手を差し出す。


 「……なんの真似?」


 「フォルティス、一緒に来てくれないか?今回の敵、ちょっとやばそうなんだ」


 「手伝えっての!?言っとくけど、死ぬのはゴメンよ」


 「死なせるつもりなんてない。俺達も死ぬつもりはないぜ!それにさ、罪もないのにこんなとこ閉じ込められて、腹立つだろ?一緒に占い師って奴、懲らしめてやろう!」


 俺が言い終えると、フォルティスは悩むように、首をひねりながらうーんと唸る。

 しばらくするとフォルティスが立ち上がり、俺の手を掴んだ。


 「いいわ。面白そうだし、ちょっとの間だけ組んだげる。あの占い師、気に入らないしね」


 「よっしゃ!改めてよろしくな、フォルティス!」


 「……よろしく」


 「よろしくお願いしますね!」


 三人から、四人へ。

 ガイはちょっと不満そうにしてたけど、気にしない。

 階段を駆け上り、俺達はついに地上に出た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 地上に出た俺達は、ただただ走っていた。

 だって俺達。

 丸腰なんだ。


 「なんか違和感あると思ってたんだよな!」


 「なら先に言え!!」


 「まあまあガイさん、落ち着いてください」


 「アタシなんか、牢屋に入ってた理由なのにすっかり忘れちゃってたわ。タハハー!」


 「笑い事か!!」


 「そうだよ、笑ってる場合じゃない!早く武器を見つけないと!」


 王宮の通路をひた走る。

 通路の角を曲がると、そこには王宮の兵士達が。


 「ん!? 貴様ら、脱走者か!」


 「逃がすな! 捕らえろ!」


 武器を構え、こっちに向かってくる三人の兵士。俺達を逃がしてくれたのは、この王宮の看守のはずなのに、なんでまだ兵士が襲ってくるんだ?

 理由は分からないけど、とにかくまた捕まる訳にはいかない!


 「フェイ、ここならガンビットは使えるか?」


 「行けます!」


 「よし、なら突破できるな!」


 「どうするんだ?」


 「逆に奴らをとっ捕まえて、武器の場所を聞き出してやるんだ!」


 左の手のひらに拳を当て、パン!と鳴らす。

 ガイとフォルティスが隣に立つ。同時にフェイのガンビットが五機、俺達の周りに展開される。


 「ガイ、フォルティス、やるぞ!」


 「気は乗らないが、仕方ないか」


 「アタシ好みの作戦だわー。そんじゃフェイちゃん、援護よろしくぅ!」


 フェイのガンビットが兵士達の足元を撃つ。

 兵士達は動揺してる、今がチャンス!


 「いっくぜぇぇ!」


 「無茶するなよ、蒼吾!」


 「熱血バカねぇあんたら……とりあえず、やりますかぁ!」


 三人一斉に飛び出し、一対一の構図を作る。

 相手が武器を持ってようが、ビビるもんか!勝負は、最初にビビった方の負けだ!


 「くっ……! 抵抗するなら、子供だろうと!」


 「こいつ……! リュウキもそうだけど……!」


 兵士が槍を突き出してくる。

 俺はギリギリのところで、槍を跳んで避ける。

 そのまま槍の上に乗り、兵士目がけて蹴りを繰り出す!


 「なっ……サルか、こいつは!?」


 「子供子供って、うるせぇんだぁーーっ!!」


 「ぐっっっぼ!?」


 渾身の蹴りが、兵士の顔面に炸裂する。

 痛みに耐えられなかった兵士はそのまま地面に倒れこんだ。


 「子供を甘く見るからだぜ、オッサン!」


 「こっちも終わったぞ」


 「フェイちゃんの援護のおかげで余裕だったワ。ありがとね!」


 笑顔を浮かべて親指を立てるフォルティス。それを見たフェイは、頰を赤くして、照れたようにはにかんでいた。

 俺達もその様子を見ながら安心して笑っていると、フォルティスが兵士に近づいていく。どかっと座り、兵士の顔を食い入るように見つめている。


 「さぁーて……武器の場所教えてよ、オジサマ」


 さっきまでの笑顔とはまるで違う表情を見せるフォルティス。

 そんな様子に、恐怖が限界に達した兵士の一人は、気を失ってしまう。


 「あらら。根性ないわね、このオッサン」


 「いや、今の顔は怖すぎるって。な?」


 「俺に同意を求めないでくれ……」


 「フォルティスで無理なら、フェイかなぁ……フェイ、ちょっと聞いてきてくれるか?」


 「はい!」


 ガンビットの展開をやめ、優しい笑顔を浮かべながら兵士の元へ歩いていくフェイ。

 しゃがみ込んで兵士に話を聞いているみたいだ。さっきの兵士とは打って変わって、落ち着いた表情で話している。


 「さっきと同じことやってるとは思えねーな……」


 「天使と悪魔が目の前にいたら、誰だって天使と話したいに決まっている」


 「誰が悪魔よ、誰が」


 軽口を叩き合っていると、フェイが戻ってくる。


 「なんとか聞き出せました!蒼吾さん達の武器は、三階の武器庫にしまってあるそうです。そして、その階層には、謁見の間もあると」


 「そ。ならサクッと武器を回収して、そのまま謁見の間に向かいましょっか。騒動の原因くらい、突き止めて帰んないとね」


 「おう! 三階に急ごう!」


 武器庫と、謁見の間。

 二つの目的地を目指し、俺達はまた走り出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「フォルティスお前……ほんとにその荷物持ってるだけで捕まったの?」


 「そーよ。全く意味わかんないわよねぇ、旅に必要な最低限の道具くらいしか入らないっつーの」


 ちょっと前まで俺は、武器を大量にしまっている巨大な箱や、そもそも巨大な武器なんかを想像していた。捕まるくらいなんだ、見るからに怪しいモノを持っていたんだろうと思ってた。

 全くそんなことはなかった。


 「しかし、思ったより難なく回収出来たな」


 ガイの言葉通り。俺達は誰にも邪魔されることなく武器を回収した。

 なぜか武器庫の周りに、誰もいなかったんだ。

 謁見の間って、イズモがいる場所のはずなのに……その謁見の間がある階層に兵士が一人もいないなんておかしい。


 「様子が変だ……謁見の間に急ごう、みんな!」


 武器庫を後にして、謁見の間を目指す。四人で脇目も振らずにひた走る。


 やがて謁見の間の扉にたどり着くと、なぜか身体が震えた。


 「この中には、一体何がいるんでしょうか……?」


 「分からん。だが、確かめて見ないことには始まらん」


 「だな。……開けるぞ」


 異常な気配に身体を震わせながら、ゆっくりと扉を開いていく。

 扉の先にあったのは……。




 紫色を帯びた木と、人の死体に埋め尽くされた、まるで地獄のような光景だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ