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ドレッドノート  作者: 岩裂根裂
第2章・平和を脅かすもの
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第12話・海に囲まれて、強さを求めて

 「ふぃー、なんとかハマシブキ到着!」


 「結構歩きましたねぇ……ふぅ」


 「二人とも、お疲れさん」


 百鬼の三人が去って、そこからまたしばらく歩いて。赤い夕日も沈んでいって、空が紫色に染まり始めた頃。

 俺達はようやく、港町ハマシブキに足を踏み入れた。

 港町というだけあって、この時間でも人がいっぱいだ。ツキノミヤに住む人達も、村の人間も、何かを買うならまずここにくる。

 この時間帯にはもういないけど、別の大陸から行商人なんかが来ることもある。他にも、シンガジマの海の幸を買いに来る人なんかも。

 のどかな村で暮らしている俺にとっては、活気に満ち溢れてる、って印象だ。


 そんなことより。ここは海の幸が漁れる港町だ。

 当然、その海の幸をふんだんに使った料理が多い。

 さっきから魚が焼けるいい匂いが漂ってきて、正直我慢の限界だった。


 「腹減ったなぁ……」


 「私も、もうお腹が空きすぎて……」


 「ふふ……宿に行って、メシにするか」


 ガイの提案に、フェイと二人、目を輝かせる。

 この町にある宿といったら、メシが美味い『ウズマキ亭』だ!

 メシの匂いにつられてしまうがなんとか耐え、ガイの後ろをついていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ぷはー!美味かったー!」


 「ふぅ……ごちそうさまでした。本当に美味しかった……」


 「うん。やはり、魚はいい」


 ウズマキ亭の料理に、俺もフェイもガイ大満足。

 やっぱりハマシブキで漁れる魚は美味い。


 「でも、生き物の目玉を食べるのは、もういいです……」


 少しだけ不満そうなフェイ。

 マグロ、と呼ばれる魚の料理が運ばれてきた時、ガイが『マグロは目玉が美味い』と言ったのが原因だ。

 何事も経験だと、フェイはマグロの目玉を食べてみた……けど、口に合わなかったみたいだ。

 まぁ俺もあんまり好きじゃないんだけど。


 「健康にいいらしいけど、食感がなぁ」


 「はい、ヌルヌルとしていて……」


 「あまり目玉を悪く言うなよ、俺は好きなんだ」


 時折冗談なんかも交えて、俺達は和気藹々と食事の時間を過ごした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 食事も終えて、すっかり夜に染まった頃。

 俺とフェイは夜の海を眺めていた。


 「綺麗……」


 「なっ!すげーだろ、海って」


 「はい……!ソムラで見上げた星空みたいに、綺麗です」


 「夜の海もいいけど、夜明けや青空、夕焼けに染まる海も中々だよ。明日の朝、また見に来よう!」


 「はい!」


 ウズマキ亭に戻る。フェイに用があると告げて、俺は一人、町の外に向かった。明日も色々あるなと、ぼんやり考えながら。

 外には、大剣を振るガイがいた。


 「来たか」


 「そりゃ来るよ。旅に出ても修行は続けないとな。早速やろうぜ!」


 「ふっ……そろそろ、1本くらい取ってくれよ」


 「余裕あるじゃねぇかよ……本気でいくぞ、ガイ!」


 「来い!」


 天蒼刀と大剣をそれぞれ構え、走り出す。

 大剣を振り下ろすガイ。腰を落として、十字に構えた刀でなんとか防ぐ。でもやっぱり重い。

 けど、俺も負けない。なんとか上体を起こしていって、鍔迫り合いに持ち込む。

 ほんの数秒、でも俺にとっては長い時間。ギリギリという金属が削れる音と、二人の息遣いだけが聞こえている。


 勝負が動く。ガイが大剣を俺の天蒼刀から離し、後ろに下がる。

 力を前に押し出してた俺は、自分の足だけでは身体を支えられず、そのまま倒れ込んでいくような姿勢になってしまう。

 ガイはこれを見逃さず、俺の頭目がけて大剣を振る。


 俺はギリギリのところで大剣を避けて、地面にしゃがみ込むような体勢を作る。

 ガイ目がけて右に持つ刀を突き出すが弾き飛ばされ、またも大剣が振り下ろされる。

 なんとか地面を転がって攻撃をかわし、弾かれた刀を拾う。


 「やるようになったな。本気を出しているつもりだが……」


 「へん!俺だっていつまでもやられっぱなしじゃないっての!」


 ふん、と鼻を鳴らしてはみるが、俺は限界間近だった。対してガイは、まだ弱っている様子を見せない。

 息も切れてきた。一旦集中を切らすとすぐこれだ。当面の目標は、スタミナを鍛えないと、誰にも勝てない。


 なんてことを考えていると、ガイは既に目の前に迫っていた。ヤバイ!

 慌てて後ろに下がり、刀で防ぐ構えを作る。けどただ構えただけじゃ、ガイの攻撃を防ぐのは無理だ。力が違いすぎる。


 「そんな構えじゃ、頭が飛ぶぞ!」


 「っ!分かってらぁ!」


 ガイに向かって走り出す。守りではなく攻めの姿勢だ。ガイの攻撃を避けて反撃すれば、勝機があるかも。

 けどガイは、そんな俺の動きを読んでいたかのように、こっちに向かうのを止める。俺の足は、止まらない。

 ガイは少しだけ身をかがめて、俺の刀を弾き飛ばした。

 大剣を突き出される。俺の負けだ。


 「くっ……クッソー!また負けぇー!」


 「いや、今のは惜しかったぞ。お前の最高速度に追いつくのに、こっちも精一杯だった。スタミナがもう少しあれば、俺を崩せたかもな」


 「畜生……スタミナ強化、するしかねーな。また修行、付き合ってくれるか?」


 「いくらでも付き合うさ」


 「おっし!俺、もっと強くなる。次はぜってー勝つからな!」


 「ああ、いつでも来い」


 これで298戦目。次は299戦目。

 やっぱり負けるのは悔しい。でもそれ以上に。


 「やっぱガイとの勝負、楽しいよ」


 再戦を誓って、俺達は宿に戻る。


 ウズマキ亭では、しばらく放ったらかしにされたフェイが、頬を膨らませて待っていた。

ゲームだと「フェイと過ごす」「ガイと修行」みたいな選択肢が出そう。

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