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「相手のために…」「相手を思って…」は、相手が判断すること

 僕もしばしば、この理由を使ってしまう。使うたびに気をつけない!と思う。

 たとえば、ある人に対して隠し事をしていたとする。そのことが発覚して、その人に「どうして隠していたの?」と質問され、この理由が飛び出したりする。「このことを知ったら、あなたが気を使うと思って」「あなたが知らない方が幸せかと思って」など。つまり、「あなたのことを思って、隠していたのであって、悪気はない」らしい。


 しかし、「相手のために」論法は、往々にして「自分のために」である。先の例で言えば、「あなたにバレたら、自分が気を使うから」「あなたが知ったら、自分が幸せではないから」と書き換えることができる。

 もう少し具体的な状況で考えてみる。自分には、すごく変わった趣味があるとしよう。それは、自分の好きな人が知ったら、自分のことを嫌いになるかもしれないような変わった趣味である。そのことが好きな人にバレて、「どうして今まで言わなかったの?」と詰問される。それに対して「私にはこういう性格があることを知ると、あなたが苦しむから」と答える。このときの本当の理由は、「私にはこういう性格があることを知ると、自分が苦しむから」だといえる。


 このようなすり替えられた言い訳は、「相手のため」という善意の印象を装っているところがいやらしい。素直に、隠し事は自分のためにしていたと認めればいい。認めることができないものであれば、そこには穏便に済ませてやりすごそうとする、やらしさがあるといえる。


 本当にその行為が、相手のためであったのかどうかは自分ではなく、相手が決めることである。それゆえ、「なぜ、隠していたの?」ときかれたら、「このようなことをしたのは、あなたのためです。あなたのためになりましたか?」と質問で返すのが正しいことになる(喧嘩に移行しそうではあるが・・・)。それで相手が否定的な態度を示したら、素直にあやまらないといけない。相手のためにならなかったのだから。


 僕が、このようなエッセイを書いているは「読者のためです」と言えば、読者の反応がそれに対する回答となる。実際のコメントがそうであるかもしれない。実際に本を出版している人であれば、売り上げがその回答に当たる。そして「読者のためになった」とはいえないような売り上げ数が導かれたら、その著者はお役御免となるわけだ。

 このことから、「相手のために」という理由が商売、経済の世界でも働いていることがわかる。


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