表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

なんとなくって、なんだろう?

 ニュースで風俗で働く女性に対するアンケートが公開されていた。質問として「なぜ、風俗で働いているのですか?」という主旨のものがあった。一番の理由が、「お金のため」である。それは、風俗に限らず、仕事である限り収入が一番であるのは自然だろう(もちろん風俗が、他の仕事に比べて、短期で多くの収入を得ることが可能という意味も含まれていると思う)。ただ、過去のアンケートから増えた意見として、「なんとなく」というものがあった。


 「なんとなく」とは何か。これは、たまに耳にする理由である。塾でバイトをしている僕は、中学生や高校生と接する機会がある。「なぜ、その高校がいいの?」「なぜ、その部活に入ったの?」と尋ねると、20%ぐらいの人が「なんとなく」と答える。「何と無く」は、文字通り、何かがないのである。この場合の何かとは、理由や目的である。だから、「なんとなく」は、「理由がない」と言っているのである。


 しかし、そんなことはあるのだろうか。たしかに、人間はすべての行動に対して、理由を準備しているとは思わない。朝、起きたら9時だった。その理由について尋ねられても、そこに理由はない。目覚めのがその時間だったという理由は、理由でなく原因だ。朝、二種類のパンがあって、片方を選んだとしよう。それ選んだ理由はあるのか?と尋ねられたら、「なんとなく」と言いたくなる。だから、人間の行動すべてに理由が伴っているわけではない。


 とはいえ、部活を選択するとき、進学先を選択するとき、人間が意識的に選択するときに理由がないとは考えにくい。理由がないとは、他でもよかったことを意味する。しかし、選択をしたからには、他を選ばなかった理由があるはずだ。それは、消極的なものかもしれないし、理由としてはいいにくいものかもしれない。しかし、理由はあるのである。


 風俗で働く理由が「なんとなく」とは、人様に言うような理由ではないとか、理由をいいたくないという拒絶を意味していると思う。だから、ニュースとしてはもう一歩、踏み込む必要があるのではないか。つまり、「なんとなく」と言わせる背景には何があるのか、と。


 ただここまでくると、理由を尋ねる僕のほうが度がすぎているのかもしれない。あらゆることに理由を求めるのは、ただ僕たちが納得したいだけかもしれない。つまり、僕たち第三者は、納得するための物語を作りたいという欲求のために、納得のいく理由を求めているのかもしれない。それは、嘘の理由を創作し、満足してしまう危険性がある。殺人鬼が「なんとなく殺したかった」という動機を告白しても、多くのひとは信用しない。育ちが変わっていたのではないか、残酷な趣味があったのではないか、と考え、もっともらしい答えを人々は期待するかもしれない。

 「なんとなく」は、ほんとに「なんとなく」ではないか。朝のパンの選択も、風俗も、殺人動機もほんとうに「なんとなく」であると考えてもよいのではないか。もちろん、状況次第では身勝手な行為ではある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ