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願い事  作者: たかまち ゆう


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5/10

5. 再挑戦

「あなたの願い事を一つ叶えてあげましょう」

 ペットボトルから顔をのぞかせて僕がそう言うと、その女性は顔をしかめた。

「またあんたなの……。幻覚じゃなかったのね」

「ええ。何か願いはありますか?」

「あるわ。一生食べるに困らないだけのお金が欲しい」

 来た。

 即答だったところからすると、きっと、前回僕が帰ってから、後悔して願いを考えたんだろう。

 お金に関することは、僕が今まで色々な人から聞いた中で、一番多かった願いだ。

「なるほど。具体的に、いくら必要なんですか?」

「え? ええと……。じゃあ、三お……いやいや、待って。私がここで金額を言ったら、あんたはどうするの? どこかから盗んででもくる?」

「そんなことはしませんよ。偶然の積み重ねであなたが儲かるように、確率を調節するんです」

「なんだか凄いわね。でも、お金が儲かった分、別のところで不幸になるなんてことがあるんじゃない?」

「さあ。それはあなたの心掛け次第ではないですか?」

「…………」

 女性はしばらく黙って何か考えていたが、

「……やっぱり、いいわ。だってこういう話って、欲をかくと不幸な結末になるに決まっているんだもの」

「願い事はない、ということですか?」

 やや意外に思いながら僕が訊くと、女性は頷いた。

「ええ。地道に頑張るわ」

「そうですか。では、契約の権利を放棄するということで、よろしいですね。さようなら」

 僕はペットボトルの中へと去った。

「さようなら。……もったいないことしたかしら」

 最後にそんな声が聞こえた。

 この女性は、大きなチャンスを逃した。けれどきっとこの先も、詐欺の被害に遭うことはなく、自分で言った通り、地道に頑張っていくのだろう、と僕は思った。

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