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恋のカタチ  作者: 稚明
8/12

彼の事情

この回は岸本くんsideの話になります。

話の時間軸が違いますのでお気をつけください。

産まれた時から一緒の女の子を意識し始めたのは中学に入ってからだった。


俺と愛奈は家が隣同士の幼馴染みだ。

母親同士が仲が良くてよく遊んだ。


中学に入ってはお互い新しい友達や環境になり、小学生の時より同じ時間を過ごすことはなくなっていた。


「なぁ、夏樹!お前の幼馴染み、この間2年の先輩に告られてたぜ!」

そういう噂もよく耳にした。

「たぶん、付き合わねーよ。」

自信があった。愛奈はよく言っていた

「夏樹と冬我にぃと遊んでる方が楽しい」からと。


中二の冬のことだった。


「ねぇ、夏樹。相談があるんだけど」

めずらしく頬を染めてまるで女子のように俺に言ってきた。

「んん~いざ言うとなると、恥ずかしいんだけど...」

「なんだよ、早く言えよ」

「と、冬我にぃは、そのぉ~彼女、とか、いるのかな?」

予想外の相談だった。

「.....」

「?夏樹?どうしたの??」

「いや、うーん、どうだろ。うちに女の人連れてきてないから彼女はいないと思うけど」

「そっか!なら、まだチャンスあるんだ!よしっ!」

さっきのしおらしい愛奈はもうなかった。

「お前、兄貴のこと、好きなのか?」

「ふふふ。うん!大好き!」満面の笑みで言った。

俺の前にはしらない女性がいた。小さい頃から見慣れているはずなのに。兄貴と3人でいたときもみていたはずなのに。愛奈は俺じゃなくて兄貴のことを見ていたのか。。。

そう思うとふつふつの心が沸騰しているように思えた。

「バレンタインチョコを渡す時に、言おうと思う。」

だから夏樹も協力してね!と今まで見たことない顔でいう。

沸点が頂点に。頭がグルグルと回っていた。

「ん?夏樹?どーしたの?」

俺の今の心境も知らないくせに彼女はいつものように笑顔で接する。

「いや、うん、わかった」俺がその時言えたのはそれが精一杯だった。


自分ですら気づいてなかった。

まさかこんなタイミングで愛奈のことを好きだと気づくとは思わなかった。

違う、俺は、どこかで、愛奈は俺のことが好きだと、勘違いしていたのだ。

告白されてもOKをださないのも、誰にも告白しないのも、実は俺から離れたくないからだと、どこかで自信をもっていたからだ。


愛奈(あいつ)の口から、言われなければ

俺はずっと勘違いをしたまま過ごすところだったのだ。


バレンタイン翌日、兄貴に「愛奈が会いたいって言ってたから会ってやって」とつげ、兄貴は愛奈の元へ行った。

もし、ふたりが付き合うとなったら俺はどうしたらいいのだろう。2人の幸せそうな所に踏み入れる勇気など俺にはなかった。

羨ましさと嫉妬に押しつぶされるに違いない。

心のどこかで「うまくいきませんように」と願った。



次の日、愛奈から報告を受けた

「へへへ、冬我にぃにとって、私は、ただの妹なんだって。それ以上には、見えないんだって。」

顔は笑っていたが今にも泣きそうだった。

「そうか。」俺はそんなことしか言えなかった。

期待通りの展開を心の中で喜んでいたから。

「でも、諦めないの!まだ、チャンスはあるし!」

そういって愛奈は笑った。


そんな一途で負けず嫌いででも少しほっとけない彼女が俺は好きなんだと、彼女の満面の笑を見る度に思った。

愛奈が兄貴を諦めるチャンスが訪れたら

その時は俺のものにする。


彼女を笑顔にできるのは俺だけなんだ、と。



そして1年後、兄貴に彼女ができた。

諦めないといった愛奈もさすがにそれ以上は行かなかった。

「そーだよね。冬我にぃ、かっこいいもん。優しいもん。私以外にもそういういいところに惹かれて好きになる女性いるよね....」

どんなに頑張ったって、結果決めるのは相手なのだ。

それをもう知っていたかのように愛奈は言った。

「お前にだってある。いつも楽しそうに笑うとこ、一途なとこ、諦めずに頑張るとこ、俺はずっと見てた。

愛奈のこと、好きだから」

「.....ありがとう。でも、まだ私冬我にぃのこと好きだから。ごめんね」

あっけなかった。自分の気持ちを伝えて相手の返事を聞くまでの時間は一瞬だった。


俺自身、びっくりするほど、愛奈のことが好きだった。

高校に入るや否や、愛奈はモテていた。

兄貴に合わせたいためか少し大人っぽくなっていたのも理由だろう。年上の人に声をかけられることが多くなっていた。


俺の気持ちに限界がきて、に愛奈と2人で花火大会に言った。

ここで俺の告白が上手くいかなかったら、もうやめよう。そう覚悟をしていた。

答えは予想外にも受け入れてくれた。

今思えば、兄貴の代わりだったのかもしれない。愛奈の本当の気持ちまではわからなかった。


付き合うことにはなったけど、それ以上のことは無かった。一緒に帰ったり休日は外出したり、抱きしめたりすることはあったけど、キスはなかった。「まだ早いよ」とはぐらかされていた。

ひとつ言える事は、必ず兄貴の話題がでることだった。彼女とはどうなってるのか、喧嘩とかしてないのか、家につれてきたりしてるのか、昔の兄貴ならこうだったねとか、、、

俺といる時間に兄貴が侵食する。

だんだん俺は分からなくなってきた。

愛奈のことは好きだけど、今もこうやって兄貴に嫉妬しているけど、それは異性としてなんだろうか?それとも幼馴染みとしてなんだろうか?

わからない答えを心にためてしまって、

あの高校二年の冬、俺は愛奈から離れようと決意した。


離れたら恋しくなって好きという再確認ができるかもしれない。

愛奈が本当は兄貴じゃなくて俺のことを好きだと気づくかもしれない。

そう思って「時間を置かせてほしい」と言った。


そんな状況のなか、俺は有本さんと出会う。

俺にとって有本さんは都合のいいニセ彼女のはずだった。

愛奈以外の女性と付き合うことで、愛奈のことを好きという再確認ができると思った。


それなのに、有本さんは、そんな俺に

優しくしてくれた。真剣に弱いところを受け入れてくれた。

俺はだんだん気持ちが揺らいでいたことに気がついて、愛奈の事ばかり話してしまっていた。


愛奈への気持ちが消えないように必死だった。



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