嫉妬
自分に嫉妬気持ちがあるなんて
知らなかった。
きっと教えてくれたのは彼らだった。
今更、彼らのことを妬むなんて思ってないし
壊れてしまえなど思わない。
ただ、タイミングが悪かった
それだけのことだ。
図書室に来たのはいつぶりだろう。
今は受験生の勉強場となってしまっている。
少し優越感を覚えつつ迷惑にならない程度で座れる場所を探した。
読みたい本を見つけ席につき読み始めたが、このあと岸本くんに会って話をするというのとが何故か頭から離れなかった。何を言われるのだろう。今更、何があるんだろう。
違う、私はいつも彼に期待しすぎていたんだ。
文化祭の最後に友人の希美ちゃんに私の心の中を見抜かれてしまって、私は自分自身よく分からない状態になった。
「お疲れ様!侑香」
文化祭の片付けも終わり、時刻は19時。
教室はいつもの姿に戻り明日からまた勉強漬けになるのかと考えたら、億劫になった。
「岸本くん、どこかなー?帰ったのかな?」
明らかにわざと私に聞いてきた。
「し、しらないよ」
「ねぇ、告白しないの?こーいうイベントの後って気持ちが高揚してるから案外OKもらえるかもよ?」
「岸本くんは....好きな人いるから、無理だよ」
「もしかして元カノ?」
「.....うん。本当はまだ好きらしいの。」
「でも、別れてるんだからチャンスあるじゃん!」
「うーん...私、好きって気持ちがよく分からない。岸本くんが私に構うことあるからそれを好きと感じてるのかもしれないって思うことがあるの」
自分にだけしてくれること、自分にだけ弱いところを話すこと、それを知っているのは自分だけという、「特別感」を「好き」と勘違いしているのではないだろうか。
「侑香さぁ、岸本くんが元カノとより戻して欲しいの?」
「え?いや、その、、うーん」
「岸本くんの気持ちは置いといて。侑香はどう思うの?諦めないっていったということは少しは独占欲や嫉妬があるんじゃないの?」
独占欲?嫉妬?
「侑香しかしらない岸本くんのこととか、あるでしょ?それを私とかほかの人とか元カノが知ってたら嫌にならない?」
確かに嫌だった。でもその気持ちには蓋をしていた。
「....そういう気持ちになることが好きってことなのかな?」
「それにプラス、その人を大切にしたいかどうかだよ。愛おしく思う場面なかった?」
その言葉にふと思い出したことがあった。
初めてのデートのことだった。
「あるんじゃん」
希美ちゃんにはなんでもお見通しだった。
「認めちゃいなよ?例えば彼に好きな子いても、諦めないって思ったなら頑張りなよ」
希美ちゃんは私の心の蓋をこじ開けたけど、ちゃんとゆっくり優しく開けてくれた。
愛奈さんのことを知っていたし彼もまだ彼女を思っていることも知っている私が、そんな彼を好きになって、しまうなんて、いけない事だと、どこかで思っていたのかもしれない。
「ありがと、希美ちゃん」
「友達として当然のこといったまでよ!あと、1人で抱え込まないこと!話したいことあったら私にいいなよ?」
ありがとう。希美ちゃんには感謝しきれなかった。
でも、全てまでは言えなかった。
私は弱かったのだ。また、自分で心の中の蓋をしてしまったのだ。
弱い自分が嫌いだから。強がって優先すべきものを彼の気持ちにした。
弱いから、いま、彼と会うまでの時間がとても辛い。胃が痛くて帰りたい。本音を言うと、会って話すことなんてない。
でも、彼は県外の大学に行くといった。
もう会えないかもしれない、このまま離れてしまって私の気持ちは蓋をしたまま社会人になってしまうかもしれない。
そう思ったら最後に私の今の気持ちだけでも伝えようと思った。
岸本くん、わたしはあなたに恋をしていました。と。