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恋のカタチ  作者: 稚明
5/12

変化

「ふぅ~、よし!」

顔の熱が冷めたのを確認して、自分の頬をバシっと叩き教室に戻った。


きまずい空気だったが、何事もないように次の授業の準備をした。

「侑香、大丈夫?」

「ん?大丈夫だよ~てか、何がだよ~もう」と

笑って誤魔化した。

心配してくれた友人、希美(きみ)ちゃんはまだ心配のようだ。

「侑香は解りやすいくせに誤魔化すよね」

「え?」

どう言うこと?と聞こうとしたとき次の授業のチャイムがなった。


「県外の大学にいく」

それを聞いた時、気持ちがざわついて落ち着くために教室を出たのにその時の私はあの夏を思い出していた。

ふぅ~と深呼吸をしてまた空を見る。

2年の夏から今までのことを振り返りながら脳内と心の整理をしようと思う。



あのデートの日、帰ってからずっとベットの上でうつ伏せになっていた。

なんであんなことをしてしまったんだろ。

なんでこんな心臓がバグバグなりやまないんだろ。

息ができなかった。

聞かされた話が頭の中をグルグルして、自分自身がわからなくなっていた。

その中ではっきりわかったことは、岸本くんは軟派な人ではないということだった。

混乱している最中に岸本くんからLINEがきた。


「今日はごめんね、ありがとう(^^)」

「有本さんに話してよかった」


余計混乱した。なにがよかったのか

私はずっと恥ずかしくて帰り道の記憶がないぐらいなのに。


そんな気持ちのまま夏休みが終わろうとしていた。


「有本さん、25日暇だったら花火大会いかない?」

久々に岸本くんからのLINEだった。

これがきっと決定打だった。

気づかないようにしてた。今思うとその時どこかで期待していたのかもしれない。

もしかしたら、岸本くんは....

「暇です。大丈夫ですよ」と返事をした。

心臓のバグバグはこないだのデートのときと同じように鳴っていた。


生憎浴衣というものを持ち合わせてなかったので

薄ピンクのワンピースと白い薄手のカーディガン。こないだのデートと同じ感じの私服で待ち合わせに向かった。

待ち合わせ場所にはすでに岸本くんが来ていた。

スマホの画面をみながら少し微笑んでいた。

「お、お待たせしました」

「こんばんわ。行こっか」

緊張の温度差が挨拶でわかった。

「有本さんなんか食べたいものあったら言ってね。おごるから」

「そ、そんなおごるとか...!」

「こないだお世話になったし」

「あぁ~~すみませんすみません!」

思い出したくない記憶を引きずり出さないで~!

「ははは、俺は嬉しかったよ?実は愛奈以外の女性にあんなことされたの初めてだったから...」

といって岸本くんは笑いながらこっちを見て

「すごくドキドキした」

「そ、な、んな、慣れてるく、せに....」

また顔が熱くなっている。

「慣れてないよ。そーいう有本さんはなれてないよね?いままで彼氏いたことなかった?」

「そういうことは、聞かないで」

「ははは、ごめんごめん。つい、」

といいかけて彼は口に手を当てた。

「?」

「りんごあめ、食べる?」

話題を変えてきた。

「うん、たべる」

岸本くんはほんとに奢ってくれた。

「はい、有本さんの」

「あ、ありがとう。ほんとに、いいの?」

「いいから、食べなよ」

今まで知らなかったけど彼はほんとにどんな時でも笑ってた。何を言われても何をされても悩みなんかないように見えた。でも違ったんだと気づいてしまった。

「花火までまだ時間あるし、絶好スポットあるからそこまでいってみよう」

岸本くんはエスコートがうまかった。下調べしてくれたんだろうか、私のために?と考えたら嬉しくなって思わず笑顔になった。


思い出している自分にいまならあの時の自分に言えることがひとつある。

変な期待などしないで。と。


「すこし登るんだけどいい?あの辺の丘にベストポジションがあってね!去年そこで愛奈に...」といいかけて私の方をみた。

「....ごめ、そーいう意味じゃないから!変な誤解してたらごめん!」

「ふふふ、変な誤解って何よ、わかってるよ」

と彼に合わせた。私のためじゃなかったことに少しがっかりはしたけども、そもそも私と岸本くんは付き合ってないし、偽物だし。。。


じゃあ私たちってどんな関係なのか?


「一年前、この丘を登るときの記憶、あんまり覚えてなくて。唯一覚えてるのは愛奈の笑顔だった」

私と同じだ。

「俺、その時、登りきっても気持ちが変わらなかったら愛奈にもう1度告ろうって思ってた」

「うん」

「登りきった時、ちょうど花火の一発目があがって、愛奈がそれをバックに俺の方を見て笑ったんだ。あぁ好きだなって思った」

「うん」

「でも、それは俺だけの気持ちであって愛奈は同じ気持ちじゃなかった」

「どういうこと?」

「その後、愛奈はこう言ったんだ」


夏樹、花火綺麗だよ~!

冬我(とうが)にぃも、彼女と見てるのかなー?

いいなぁ~彼女さん。


「嫉妬、したんだ。連れてきたのは俺なのに。その笑顔をみてるのは俺なのに。って。」

だからもう兄貴に心をとられたくなくてもう1度告白したんだという。

「そしたら愛奈、なんて言ったと思う?」

「え?」

「いいよって。いった。気持ち切り替えなきゃって、いつまでも冬我にぃのこと思ったって悲しいからって。俺と付き合うことを決めてくれた」

「なんか、それって」

「悲しいから寂しいから、思ってくれる(ひと)ならだれでもいいみたいな感覚でしょ?俺はそれでもいいと思った」

違うよ、岸本くん。

「でも、やっぱり無理だった。そんな気持ちで付き合ってもらっても釣り合わなかった」

「だから、別れたの?好きなのに?」

「....うん。やっぱバレてるよね」

約束してから今日までの日、今日待ち合わせ場所に行く時、ここまで登ってくる時、全部の時間が嘘のように、海辺の砂のように舞って飛んでいくように、私の気づきそうな気持ちは飛んでいった。

「なんか、ごめんね。女々しいやつで。」

「そんなことない。むしろ、羨ましい。愛奈さんが」

「でも、俺もそろそろ切り替えなきゃな。愛奈ばっかりに構ってちゃいけない、よな」

気持ちの入れ替えを祝福するかのように彼の後ろで花火が上がった。

「岸本くん、花火上がったよ!みてみて!」

私の気持ちをら悟って欲しくなくて話題を変えた。

「おおー!綺麗!やはりベストポジション!」

「綺麗だね。ありがとう、岸本くん」

あっという間に終わった。

綺麗に咲く花火は一瞬で消えた。

まるで私の気持ちのようだなと、私は微笑んだ。

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