心境
高校生活で一番記憶に残っているのは
2年の夏だった。
戻りたくても戻れない、そんな夏だった。
一年の冬に岸本くんとLINE交換をしてからは
何回かやりとりをした。元カノはあれから何回か話をしたいと岸本くんにいい寄ってきていたけど彼は頑なに断っていた。なにか理由があるんだろうけど、聞くに聞けなかった。むしろ聞いちゃいけないと思っていた。
2年になって、また岸本くんとは同じクラスだった。
今思えば3年間ずっと同じクラスだった。
私たちの仲は友達以上恋人未満の関係を続けていた。
何かあるわけでもない。帰りは一緒に帰るだけのニセ恋人をし続けた。
友達にも「付き合ってるの?」と何人かに聞かれたし男子達にも茶化されたりしたが、岸本くんのナイスフォローで夏休みに突入した。
「夏休み、会えないけど、どうする?デートする?」
岸本くんからのLINEだった。
デートなんて1度もしたことなかったし、まぁ、楽しい人だし、夏休みの間に元カノが確かめにきてもあれだし、などなど理由をつけて
「やりましょう!デート!」と返事をした。
いや、まてまて、デートって何着ていけばいいの?
動揺した。簡単にOKをだしたけど、デートの経験もない私には何をどうしたらいいのか分からなかった。
とりあえず雑誌やネットで調べて準備をした。
「どこかいきたいとこある?」と聞いてくるから
なんと答えたらいいのか分からず一晩悩んだ。
デートをするってだけでこんなに大変なのかと実感した。
結局、ショッピングモールで映画をみてショッピングをした。
「有本さんは私服だと、イメージかわるね?いつもそーいう私服なの?」とスタバでコーヒータイムをしている時に岸本くんが聞いてきた。
結局水色のワンピースに薄手の白いカーディガンを着てきた。すこし気合いは入れてみてはいた。
「こ、こんなもんです」
彼は褒め上手だなと思った。こうやって女子達を落としてるんだろうか。元カノさんもこうやって口説いて....
「有本さん、今日のデートどうだった?たのしかった?」なぜかニヤニヤしながら聞いてきた。
「た、楽しかった...というか、まって何ニヤニヤしてるの?」
「だって、顔赤いもん」満面の笑みで言う。
「!!!」自分でも気づいてなかった。言われてだんだん顔の熱が体全体に伝わってきた。違う、これは夏の暑さのせいだ。
「有本さん、かわいいね。」
「き、岸本くんは軟派だよね」
「そんなことないよ?硬派だよ?」まだニヤニヤしてる。悔しくて私はつい言ってしまった。
「そーやって元カノさんを口説いたんでしょー?」
2人の間で元カノの話はタブーになっていた。
彼の顔が笑顔から真顔に変わった。
「...口説いても伝わらなかったけどね」
「え?」
「ちょっと場所、変えようか」
何を言われるのか全然わからずスタバを後にした。
今いるショッピングモールの屋上に空中庭園という場所があってそこのベンチに二人並んで座った。
「有本さんさぁ、俺と前の彼女、お似合いだと思った?」
まさか彼から元カノの話題がでるとは思わなかった。でも気づいてしまった。岸本くんはどうして彼女と別れたのか、私に聞いてほしいのだ。
「お似合いだと、思ってたけど....」
「だよね~。クラスの奴らも羨ましがってた」
彼は空を見ながらポツポツと彼女の話をし始めた。
「彼女、愛奈は俺の幼なじみで、小さい頃からずっと一緒だったんだ」
「中学3年の卒業の時、俺から愛奈に告ったんだ」
意外だった。彼女の方からの猛烈アタックだと思っていた。
「でも1回振られたんだ。再度、高校生になって、夏休みに花火大会誘ってまた告って、晴れて恋人同士になった」
「そう、だったんだ」
「で、なんで俺が、あいつのこと好きだったのに自ら振ったのか、聞きたい?」すこし笑いながら私を見て言った。
顔は笑っているのに泣いているようにも見えた。
「うん、聞かせて?」
興味がなかったといえば嘘になる。でも彼がどうして彼女を振ったのか、私が知りたかったのだ。