出会い
青春の時にしかできない恋愛模様をお届けします。 あの時の出会いが言葉が後悔が幸せが 今に繋がるラブストーリーです。 ほぼ趣味で書いていますので 気軽な気持ちで読んでいただければ幸いです。
運がないことは知っていた。
自分の思っているとおりにならないのは
タイミングが悪いんだと言い聞かせていた。
私、有本侑香は
この冬でこの高校を卒業する。
受験はせず、就職をすることに決めていたので
すでに内定をもらっている私は、あと残す2ヵ月すこしは自由だった。
その自由な時間は自分の為に使おうと思っていた。
友達と思い出作りに遊びに行ったり、卒業旅行の計画を立てたりした。寂しさはそれほどなかったけどあるとすれば後悔だった。
授業中、ふと窓から見える空を眺めている時に
この3年間を思い返した。
始まりは高校一年の冬だった。
あの日の出来事は今でも思い出しては微笑んでしまう。
授業が終わり、用もなかったのでそのまま帰ろうとしたとき校門の前で言い合いになっているカップルがいた。彼女の方は涙を浮かべながら彼氏に訴えかけているのに、彼氏の方は冷めた顔で「ごめん」としか答えていなかった。
なにがあったんだろ?私には関係ないけど。と、
思いながら素通りしようとした時、右腕をギュッと捕まれ、
「俺、こいつのこと好きだから。もう無理」
と、その彼氏が彼女に告げた。
(え、まって?わたし、え?)
混乱している私をみた彼女が疑いの目で私を見る。
「うそつき....なんで、そんなうそつくのよ...」
彼女のゆうとおりだ!嘘バレバレもいいとこだよ!
彼氏くん!と思い、彼の顔に目がいった。
彼は同じクラスの岸本くんだった。
余計私は動揺した。
「嘘じゃねーよ。俺は侑香と付き合うから」
突然の名前呼び。突然の呼び捨て。
何が起きているのか混乱してきた。
「だからお前は、俺よりもっと優しい奴と付き合った方がいい」
「なに...それ....」
「ごめん。」
私はこの空気に耐えられなくなって
「と、と、とりあえず!今日は帰った方がいい、かと!」私がいうことではないと思ったが言ってしまった言葉は取り消せない。。。
「....わかった。でも、私諦めないから」
そういって彼女は帰っていった。
なんとも言えない空気が流れていたので
岸本くんの顔をおそるおそる見た。
「俺だって、諦めたくねーよ。」
ぼそっと言った。すこし泣きそうな顔で。
「な、何があったか知らないけど、とりあえず、聞いていい?」
「あ、ごめん。有本さん。巻き込んじゃって」さっきの泣きそうな顔からいつもの笑顔に変わった。
「あーでも言わないとわかれてくれなくてね」
「やっぱり嘘だったわけね。びっくりしたよ、もう!」
「ごめん、ごめん。でも、この際、やってくれない?」
「え?何を」
「ウソ彼女」
「は、え?!わ、わたしが??!!」
「あれ?彼氏いたっけ?それとも好きなやついた?」
「いや....生憎いないけど...」
「巻き込んじゃったついででごめんだけど、やってほしいな、ウソ彼女」
人に頼み事するような態度と言葉ではないなと、思ったけども、実際彼氏も好きな人もいないし、毎日の平凡にスパイス要素が入るなら、悪くないかもしれない。
今思えばなんでそんなこと思って
簡単に引き受けたんだろうって思う。
後悔?と聞かれたらそうなのかもしれないが
私にとっては後悔以上のものだったのだ。
「いいよ」
「え、ほんとに?ほんとにいいの?」
「ただし、私に好きな人もしくは恋人ができた場合はやめるからね!二股はできないからね!」
「うん!もちろん!いやぁ~ありがとう~助かる~」
「こっちは迷惑ですけど」
「無理になったら、やめてもいいからね」
「当たり前よ」
そしてLINE交換をしたのが
彼、岸本夏樹との始まりだった。