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プライベートアイ  作者: 空渡 海
1/1

ドッペルゲンガー その1

 ある7月の昼下がり、二人の男が町中を駆け回っていた。一人は片目に眼帯をつけており、もう片方は全身真っ黒だ。


「いい加減観念しやがれこの野郎!」

「...........」

 

 眼帯の男が話しかけても、黒づくめは返事をしない。


「こっちはもう2時間ずっと走りっぱなしなんだよ!」

「...........」


 そう言いながらも二人の鬼ごっこは続いてく。




 こうしてさらに30分ほど経っただろうか。とうとう、黒づくめは袋小路に追い詰められてしまった。


「.........」

「ふふふ....これで最後だっ....とぉおお」


 突然、眼帯の男が掴みかかった!しかしもう一人はヒョイと塀に飛び移って避けた。


「フッ」

「この野郎、いい度胸してんじゃねえか。ちょっと反則技だが、仕方ないか」


 そういって男は右目の眼帯を外す。すると、中から赤い瞳が出てきた。


孤独な目プライベートアイ


 男がそう呟いたその瞬間、あたりの雰囲気ががらりと変わった。


「!?」

 驚いて逃げようとする黒づくめ。しかし見えない壁に囲まれたように動けない!


「さあ、これで終わりだっ!」

「フニャァァァァゴ!!」






_ _ _ _ _ 




「本当にありがとうございました!」

「いえいえ、いいんですよ。これが仕事ですから」

「..........」


 とあるビルの一室に一組の男女.....と1匹のふてくされた猫が座っている。男はさっきの眼帯の男。女は派手な身なりをした中年の女だ。




「ああそうだ、謝礼の方を払わないとね」

「いえ、料金はいいです」

「えっ、どうしてですか?」

「契約時間は2時間でしたからね。オーバーしてしまった分のお詫びですよ」

「あら、3分オーバーぐらい別になんにも気にしませんのに」

「僕のプライドが許さないんですよ」

「あら、プロなんですのね。じゃあ、そういうことならお言葉に甘えさせてもらいますわ」

「また、何か問題が起きましたら、是非この便利屋ネヴァコをご利用ください」

「ええ、そうさしてもらうわ」


 そう言って女は出て行った。


「ふう、やっと終わった」


 男.....ネヴァコはソファにもたれかかり、天を仰いだ。部屋の中はつけっぱなにしていたラジオから音楽が流れている。最近のドラマで使われていた流行の曲だ。



「.........ちょっと早いけど、今日はもう帰るか」


 そう言ってソファから立ち上がってラジオを切り、帰り支度を始めた。尤も、帰り支度といっても愛用している焦げ茶色のショルダーバッグを背負うだけだが。

 店の表に出て鍵を閉め、『営業中』の看板を『本日の営業は終了しました』にひっくり返す。もう何年もやってきた慣れた作業なのにふと時々新鮮な気持ちになる。これまでの経験上、そういうときはよっぽど機嫌がいいかよっぽど疲れているかのどっちかだ。まあ、今回は後者だろうがな。



 事務所から自宅まで徒歩でおよそ30分。遠くも近くもない距離だ。いつものようにイヤホンを耳に挿し、のんびりと帰る。空はもうすでに真っ赤に染まっており、道は帰宅ラッシュの人々で溢れかえっている。


「今日の夜ご飯は何にしようかな」


 そんなことを考えながらゆったりと歩く。十字路を右に曲がると急に人はいなくなり、ひとりぼっちになる。耳からは一昔前にはやった懐かしの歌。好きな曲ランキング上位に入る曲だ。



 そんなこんなで歩いていると家に着いた。ぼろぼろになった古い一軒家だ。鍵を差し込み、ひねる。.......ん?感触が軽い。俺が開ける前から開いていたようだ。


「ただいま」

「あ、おかえりなさーい!」


 そういって中から1人の女の子が出てきた。高校生ぐらいか。黒髪ポニーテール、制服にエプロンをつけている。


「やっぱりお前か、マユ」

「へへへー、待ちきれなくて先に入っちゃった」

「いったい、毎回どうやって入っているのやら」

「おっと、それは愚問だなー。ネヴァは私の能力知ってるでしょー!」

「はは、愚問か。そうだな。それで?今日のご飯は?」

「えっとねー、肉じゃがとほうれん草のおひたし、それに豆腐とわかめのお味噌汁!」

「お、美味そうだな。早速ご飯にするか」

「はーーーい!」


 こうして食卓に着く。机の上には綺麗に盛り付けられた料理が並んでいる。


「「いただきます!」」



「ん、お前また料理の腕上げたな」

「えーほんとー!?嬉しいなー!」

「ああ、お前もう完全に主婦だな」

「そんなことないよー!!まだピッチピッチの高校生ですー!」

「いいのかー?華の高校生がこんなおっさんの家に出入りして」

「ネヴァは私の命の恩人だからいーの!」

「だからぁ、あれは俺が助けたんじゃなくてお前が自力で助かっただけだって」

「そんなことはどーでもいいの!ネヴァが私を助けてくれたことには変わりないんだし!はい、この話はこれでおしまい!」

「やれやれ」


 そんなこんなで話しているうちに食べ終えてしまった。


「「ごちそうさまでした!」」


「あ、食器は後で私が洗っておくからそのままでいいよ!」

「お、そうか。助かるな」

「どういたしましてー!」



 食後の一息。それは俺にとって欠かせないもの。ご飯の後の休憩が一番休まる気がする。


「あ、そうそう。今日もマユの____」


  ピーーーンポーーーン


俺の一言はチャイムによって遮られた。


「こんな夜にお客さん?」

「そうみたいだ」


 玄関の方に向かい、ドアを開く。


「どなたですか?」


 そうしてドアの向こうにいたのは綺麗な女性の人だった。


「あの、ここがネヴァコ探偵事務所ですか?」




 







 





 

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