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悪党がゆく  作者: ばん
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顔合わせと作戦会議

 小一時間後、アジトに全員集合していた。八時にはまだなってない。

 さて、どうしたものか。とりあえずアレだな、アレ。

「よし、全員揃ったところで自己紹介だ。俺はオニヅカだ」

「あっしはマッチ」

「俺はポンプ」

「私はナナリーです」

「俺はソージです」

「僕はセージです」


 ……こいつら。空気読みすぎなんだよ。もっとこう……あるだろ。ないのか?ないっぽいな。


「双子の見分け方はそのリストバンドで見分けてくれ。でだ、こいつらは俺が孤児院から里親になって引き取って面倒を見ることになった」


 マッチが俺を見て、またなんかするってわかってる顔をしている。


「双子にはたくさん食べて、とりあえずポンプが鍛えてやってくれ。対術な。筋トレはまだはえーから」


 ジロっと双子を観察してるポンプ。まぁ大丈夫だろう。


「わ、わたしは何をすればいいんでしょうか?」

 さっきから紅一点で居心地悪そうにしてるナナリーは今回の作戦の要である。

「標的はギルド長だ。俺の勘では相当溜め込んでる。それを孤児院に寄付させる」

 ここで教会や孤児院の現状について説明しておくことにした。


「なんだか良いことをしようとしてるのに、なんで悪事を働く気分になるんでしょうか」

 まだまだ悪事慣れしていない綺麗なナナリーだが、そのうち染まるだろう。

「そりゃあ私利私欲の為にやるんだからに決まってんだろ。利用できるものは利用する。いいじゃねぇか、有効活用してWINWINだ」


 双子がポカーンとしてるな。今回は見学させとくか。


「有効活用されるのはギルド長のお金なんですよね?不正とか横領なんてギルド長がほんとにしてるんですか?」

 そう、そこがまだ不明なとこなんだよなぁ。でも状況的に黒以外ない。

「お人よしっていうか、こういうのに免疫がないというか……」


 ついついぼやいてしまうが、説明しないとな。


「では聞こう。まず、なぜ冒険者ギルドが街に1つしかない?」

「それは1つで十分だからでしょう」

「冒険者ギルドが二つあったらどうなるかな?」

「とりあえず、どっちにも登録しますね」

「十分だと言ったのに?」

「登録するだけなら損はないですし、依頼の数だってギルドが二つあれば増えるから……?」


「そう。そのとおり。パイの奪い合いが起きる。ギルドが二つあれば、より高い報酬の依頼があるギルドに持ってくだろ?」


 ポンプと双子がついてこれてないな。パイか。アップルパイ出せばわかるか?【お取り寄せ】


「それはそうですけど、じゃあなんでギルドが二つないんです?」

 目が思いっきりパイにいってるが、いい質問です。

「さぁな。俺にもわからん。でも、二つあったほうがいいってのはわかったろ?」

 そう言いながら六等分に切ってやる。

 パイのせいで話どころではなくなったので、休憩しつつメシだ。


「とりあえずメシにしよう。【お取り寄せ】」

 ハンバーガー各種セットで。テリヤキ多めで。




 あんなことを言ったが、自分たちでもう1つギルドを作ってしまって、金儲けすることもできる。そして冒険者ギルドを潰してまた一強になるってのも迂遠だが出来るだろう。おそらくそういう歴史だと考えている。結局は生存競争で生き残ったのが今の冒険者ギルドってことだろう。


「さて、腹いっぱいになったところで、続きな。この際、二つ目のギルドとかはどうでもいい。ようするに、あったほうがいいものがない状態ってのは腐敗の温床になるってことがわかればいい」

「どうやって腐敗してるか調べるんで?」

 調べるのが仕事なマッチはほんと仕事熱心でよろしい。ボーナスを出そう。

「ギルドから店に卸してるだろう?まずはそこからだ。マッチはギルドがどこと契約してどれぐらい卸してるか調べること」

 おそらく、取引先はそんなに多くないはずだ。大口なところと癒着してるだろうし。

「兄貴、俺は?」

 マッチの次はだいたいポンプに指示出すからなぁ。今回は裏切りとかは無し。

「ポンプとナナリー、双子と俺はダンジョンに潜って、ハニーキラービーの乱獲をして巣を撃滅。蜂蜜集めだ。それをギルドに毎日持ち込む」

 この前、ナナリーから聞き出した金策の1つに蜂蜜集めがあった。さすがに4人ではハチの大群は危険でやめたらしいが。

「確かに蜂蜜は高価で買い取ってくれますが……」

「果たして、どれぐらい値下がるかな?」


 蜂蜜の需要は高い。甘味に飢えた女将とミミーちゃんみたいに群がる。現時点では範囲魔法を使える魔術師がいてやっとこ狩れるぐらいであまり出回らない。範囲魔法を使えるぐらいだったらもっと深層で稼げるしな。


「わかりましたけど、そううまくいくんでしょうか?」

 学習能力がないのかな。ちょっとナナリーの評価下げよう。

「うまくいかせる。その為に色々やってんだろ。そして罠にはめんだよ。お前もそうだったろうが」


 この世界にも、もちろん悪人はいる。悪徳商人・悪徳貴族・盗賊……etc

 ギルド長が不正するかしないか?競争も監視もしないで良心に任せっぱなしなんてまずありえない。私腹を肥やすに決まっている。俺から見れば真っ黒だ。仮にそうじゃなくてもお金持ちには気前よく寄付してもらわないとな。


 涙目になってるナナリーは放置してまとめよう。


「ソージ、セージ。俺たちはこういうことをしてる。今回はギルド長が悪者だ。溜め込んだ金は教会に寄付させる。そして、俺たちは見返りとして孤児院にいる人材を確保できるようになる。これはいいことかわるいことかわかるか?」


「うーん、いいことかな??さっき食べたハンバーガー?すっごくおいしかったし」

「孤児院のみんなもここに来れば一緒に暮らせるしおいしいもの食べれるし、いいことなんじゃないかな?」

 どうもソージの方は感覚派っぽいな。言葉が足りてない。

 まだこういう判断はダメダメなんだなぁ。子供だし仕方ないか。

「目の前のことだけ見たらいいことなんだろうよ。お前らはさっき来たばかりだから判断するには早い。正解はまだわからない、だ」


 今回の一件が終わったらこいつらにレポートを書かせよう。

 なんかちょっと凹ませてしまったけど、ちょっとは考えるようになるだろう。


「それじゃ、二人には仲間になる儀式をする。こっちきて頭出せ」


「「はい」」


「【インストール:日本語】 それじゃ解散。明日また集合な」






 めんどくさいがナナリーを宿まで送る。途中から放置したが、正直、双子の方が手がかかるしかまってる暇はないけど、大人な分、きつめでいこう。


「そういや、双子に魔法の才能はあったりしなかったか?」

「魔力は感じられましたけど、使えるかどうかは試してみないと」

「使えたら才能有りで、使えなかったら宝の持ち腐れか。ダンジョンで試すか」

「それがいいですね。媒介は私が用意しておきます」

「あーわからんから任せる。才能があったらナナリーが先生な。話は変わるが、今回の一件、どう考えている?」

 さっきからちょっと上の空だったからどうせ今回のことを考えてるんだろう。

「そう、ですね、なぜギルドが1つしかないか考えたこともありませんでした。ギルド長が不正をしてるってオニヅカさんは決め付けてますけど、私は会ったこともありますし、いい人そうだったんで……」


 まぁそうなるよなぁ。いかにもいい人が裏で悪事を働いてるパターンなんて、バレない限り騙し続けることができるし。


「ナナリーの抱いた印象は正しいだろう。そりゃ冒険者が働けば働くほど懐があったかくなるんだ。ニコニコ笑顔もするさ」


「だからといってまだ決まったわけではないです!」


「そうは言うがなぁ。じゃあギルド長はいくら給料貰ってていくら資産があるかナナリーは知ってるか?他の誰かでもいい」


「それは……知りませんけど」


「な。こういうのは疑いだしたらキリがないんだ。だから私は潔白ですよ。って示す必要がある。ある程度、資産を公開するのが疑われなくする方法だ。それでもうそっぱちな情報を公開するってこともあるがな」


「それじゃあなにを信じたらいいんですか。私もうわからなくなってきました」


「双子にも言っただろう。まだ判断するには早い。わからんことはわからん」


 疑心暗鬼になるのもいいけど、いずれわかることをぐちぐち悩んでも仕方ないだろうに。その点、ポンプのやつの割り切りはいいんだよなぁ。筋トレさせるか。でもまぁ、前衛もできるように鍛えるのは確定だな。前衛の状況判断の的確さを身に付けさせる方がナナリーには良さそうだ。後衛でちまちま魔法撃ってるからぐぢぐぢ悩むんだ。


 バトルメイジはロマンだな。

まじめにがんばります

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