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悪党がゆく  作者: ばん
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シスターと双子

 もうこのギリギリの生活が続いてどれくらい経ったのでしょう。子供たちには満足な食事も出せず、危険な森に採集に行かせて飢えを凌ぐなんて、神に仕える立場なのに私はとても罪深いことをしています。

 嗚呼、これからいったいどうしたらよいのでしょう。どうか私たちをお導きくださいユーフィリア様。


「シスターマリア、またお祈りですか」

 咎める様な声です。また文句ですか、と言いたいのをグッと我慢します。


 シスターサラの教育係のシスターエミリアです。お祈りだけではご飯は食えないと現実的な考えをする彼女とは対立してしまう事がしばしばあります。

 彼女の言うことには一理ありますが、シスターたるもの信仰を忘れてはいけません。救いと導きの女神ユーフィリア様はけっして私たちを見捨てることはありません。


「シスターエミリア、ここは教会です。お祈りをしていても何もおかしくはありませんよ。それより、あなた一人でどうしました?」

 この時間は確かシスターサラと子供たちに勉強を教えているはずです。

「またいつの間にかソージとセージが抜け出してしまって探していたんです」


「わかりました。私が探しますのであなたは戻ってシスターサラと授業を続けていてください」



 きっとあの二人には教会の暮らしが合ってはいないのではないでしょうか。

 いつも二人で行動してイタズラをしますが、それも大人の私たちを試しているような節があります。孤児院にやってきた当初のむき出しの警戒心は表向きなくなりましたが、やはりまた捨てられるのではないかと不安なのでしょう。





 僕たちがこの孤児院にきたのは偶然とかじゃなく、二人で居れるとこがここしかなかったからだ。それもあと成人する1年後はわからないし、明日のこともわからない。いつまでソージと一緒に居れるかなんてわからない。


「なぁセージ、腹減ったな。抜け出して何か食べ物探そう」

 孤児院での勉強はほんとなんの役に立つかわからない。そんなことよりお腹いっぱい食べたいって思いのほうが強かった。いつものようにソージが抜け出すように提案する。目配せをするだけでどうすればいいかわかる。

 

 近くの席にいる真面目ん坊のギゼーにソージが話しかける。


「ギゼー!ギゼー!さっきシスターセラが言ってたけど、そもそも女神ユーフィリア様なんているのか?」

「そうそう。誰も見たことないのに居るだなんて変だよ、変!」

 僕たちより2つ下のギゼーは僕たち2人掛かりでちょっとした疑問を言うと勝とうとしてムキになってしまうのが面白い。


「ユーフィリア様はいるよ。教会だって、王都には神殿だってあるじゃないか。いない女神様のためにわざわざこんな建物なんか建てないよ」


「でも、だあれも見たことないんだぜ?いるわけないじゃん」

「そうだそうだ。いるっていうなら証拠出せよ証拠ー」


「いる!女神さまはいるんだ!!!」

 ったく、言い返せないからって大声出すなんてまだまだお子様だな。そうじゃなきゃ困るんだけど。

「どうしましたギゼー?なにを騒いでいるのです?」

 年少組に教えていたシスターサラが注意しにやってくる。今だっ



「今頃ギゼーのやつ女神様が見えたんですか?とかシスターセラが言って困ってそうだな、セージ」

「シスターサラは天然だからね。そういえばシスターエミリアはいなかったけどさぼってんのかな。見つからないようにしないと」


 僕たちは身を屈めて素早く孤児院のボロボロの塀から抜け出した。


「どこ行く?パチェットさんのとこでも行く?」

「うーん、そうしよっか」


 近所に住んでるおじいさんでお手伝いすると育ててる果物とかくれる人だ。

 そのバチェットさんのところに行く途中、変な人とすれ違った。

「あれ何!?ビューンってあっという間に行っちゃったよ!」

「わかんないけど追っ掛けてみようぜ。おもしろそうだ」


 そう言うや僕たちは走り出していた。きっと面白いことがあるに違いないって思いながら……



 途中で見失っちゃったけど、道に跡が残っていてそれを辿ったら僕たちが住んでる教会の方向へと続いていた。


「あのおじさん、教会になにか用があるんじゃない?」

「何も持ってなかったし、どっちにしたって関係ないぜ」

「追いかけようっていったのソージじゃん。ほら、いいから行こうよ」


 教会の前にいる変なおじさんを物陰から見たけど、超顔怖い。なにあれ。


「あのおじさん怒ったシスターマリアより怖い顔してるんだけど……」

「そんなことより、あの乗り物?はどういう仕組みで動いているんだ?」


 ソージ、そんなことよりって。あ、シスターマリアだ!


「あのおじさんシスターマリアと一緒に中に入っていちゃった」

「きっと執務室の方だぜ。どうする?」

「盗み聞きに一票」「変な乗り物に一票」


 まぁこんなことだろうと思った。僕たちは双子だけど、時々意見が分かれる。


「乗り物はあとでもいいでしょ。あとでおじさんに頼めば教えてくれるかもしれないじゃん」

「だって超顔怖いぜ?じゃあお前が聞けよな」


 言うんじゃなかった。汚い、ソージ汚い。掃除しろー。



 建物の裏側にまわって執務室の窓の下で話を聞く。

「うーん?よく聞こえないや。あ、いっぱいお金出したよ」

「ってことはお金持ち??」


 これでお腹いっぱい食べられるようになる?


「とりあえず戻ろう。みんなにも伝えてあげなきゃ」


「セージは先に行ってろ。俺はもうちょい聞いていく」


 なんだろう?でも、だいたいソージが一人で何かする時って……



 しばらく経ってソージが戻ってきて僕に耳打ちする。

「あのおじさん里子が欲しいんだってさ。チャンスだぞセージ。なにがなんでもついていくぞ。大丈夫俺たちならできる!」

 え?えええ?なにがあったのさ???そしてその自信はどこから?!

「そううまくいくかなぁ?」


 そうこうしてると、シスターマリアが僕たちの前にやってきた。なにやらうれしそうな顔をしてる。


「ソージ・セージ、オニヅカさんという方があなたたちを里子にしたいと言っています。とりあえずついてきなさい」


 いつものシスターマリアの雰囲気じゃない。どこか強引だった。



コンコン


「オニヅカさんおまたせしました。希望者のソージとセージです」


 えええ?希望してないよ?シスターマリアが呼んだんじゃん。

 えっとあいさつあいさつ。


「ソージです」「セージです」


「オニヅカだ。ってお前ら双子か?」


「「うん」」


 なんか超怖い顔で一瞬で見抜かれた気がする。怖いのは顔だけじゃないおじさん

 でも、ついていくのも面白いかもしれない。あのテーブルに出したいっぱいのお金もそうだし、悪い感じはしない。よし決めた。作戦通りで


「歳は?」

「「12歳」」


「俺んとこ来るか?」

「「面白そうだし、行く!!」


 そうしてあっさりサインしちゃったけど、いつもソージが言い出したことはなんとかなるし、僕も嫌な予感とかしなかったし……


 

「おい、これつけろ。どっちの色選んでもいいが一度決めたら変えるのはなしだ」


 急に後ろから声かけないでよ。うん?なにこれ?こんなのさっきまでなかったのに?

 とりあえず選べばいいのかな?せーの


「「僕、こっちがいい」」


「じゃあ、ソージが黄色でセージが青色な。トリックに使うなよ?」


 トリックってなんだろう?でも、言い方からすると悪いことに使っちゃダメって意味っぽい。


「「わかったー」」




 本当にオニヅカと出会ってから変なことばっかり起きてる。いきなり教会にきて里親になりたいとかお金いっぱい出したり、乗り物が目の前で消えたり……





 セージと別れて盗み聞きから里子のことがわかった時に、なんかピンときた。この人についていけば腹いっぱい食べられて面白いこともいっぱいあるって。

 あの変な乗り物も触ってみたけど全然わかんなかった。でも、あのオニヅカは乗ってるし、あの乗り物のこと知ってるんだ。


 一緒にオニヅカと歩いてアジト?ってところに向かってる。色々聞いてくるけど、僕たち双子について言えることなんて全然ない。僕たちは捨てられた子だし。


「ねー僕たちのことよりオニヅカのこと教えてよ」


「ああ。秘密もちゃんと教えてやるがアジトに着いてからだ。それまでさっきのこととか聞かないと約束したらいい」


「「約束するするー」」


「オニヅカはなんの仕事してるのー?」

「それはまぁおいおいな。説明するし見ればわかる」


「歳はー?奥さんいるの?お腹いっぱい食べられる?」

「30で奥さんはいない。うまいもん腹いっぱい食わせてやるよ」


「「やったー!!」」


 やっぱり俺の勘は当たってたぜ。

 この跡も色々聞いたけど、ほとんどアジト?に着いてから話すって言われた。

 なんだかとってもワクワクする。たぶん、秘密がいっぱいですごいことしてるんだ。




「着いたぞー。ここだ」


 かなり歩いてもう日が落ちかけてる。遠いよオニヅカー


 外観は教会と同じくらいボロいのに中はちゃんと掃除されてて綺麗なイスとかソファーとかが置いてあった。


「とりあえず、お前ら汚いな。風呂だ風呂に入れ。おいマッチ教えてやれ」

 そういってさっき紹介された赤毛のマッチさんと一緒に風呂?に入ることになった。

 そんなに汚いかな?セージは別の意味で俺のこと汚いっていうけど。






 ああもうちょっと人数増えたらこれだ。だめだ、めんどくさがるな。初期投資ってやつだ。

 あいつらが風呂に入ってる間に服とか歯ブラシとか出しておこう。

 メシはなんだ、ハンバーガーとかでいいか。

 寝床もか。スペース的に二段ベッドだな。

 あとインストールもしないと。手が足りない。

「おいポンプ、あいつらの寝床作ってやれ。【お取り寄せ】」


 組み立てるのも1時間もかからずできるだろう。

 あーナナリーがいねぇ。このままじゃ二度説明しなきゃならなくなる。


 だれかいないか……

「おい、そこのお前、ハルンの宿屋にいってナナリーってやつに伝言を頼む」


 そういって、たまたまアジトの近くにいたやつを強制的に働かせる。

 ふぅ。これでいい。

うーん。難しい。

俺→ソージ 語尾が「ぜ」

僕→セージ で。


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