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悪党がゆく  作者: ばん
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新メンバー加入

 冒険者とは、ダンジョンに潜ったり、モンスター退治や盗賊討伐などがありますがぶっちゃけそんなに人の役に立つ仕事ではありません。なんだったら、騎士や衛兵の方が治安維持に腐心しています。たまに冒険者の中からすごい活躍をして英雄っぽい人が出てなんとかその地位を認められているだけに過ぎません。

 実態は一攫千金を目指しているギラついた人達の集まりなのです。ダンジョンのレアドロップや宝箱、モンスターの魔石や珍しい素材。そういったもの活用して商売をしてるのは商人ですし、経済効果に一役買ってるぐらいなものです。

 だからそうそううまい金儲けなんてありはしないんです。全員ライバルですし。

 ギルドに入った私たちを見る視線のそれは、哀れみなどというよりひどくニヤついた下卑たものでした。人の不幸は蜜の味ですか、そうですか。


 「僕は向こうで依頼を見てくる。ジークは受付に頼んでメンバーを募集の広告を頼む。ナナリーは情報収集だ!」

 

 そう言ってバラバラになりましたが、そういうのはギルドの入り口で言っちゃっていいものなんでしょうか。他の冒険者たちは私たちが入ってきた時点で事情をわかっていたようですし聞き耳を立てていたんですよ。なにがナナリーは情報収集だ!ですか。ちょー恥ずかしいです。もうやけっぱちです。あそこの三人組にしましょう。


 「あの、すいません」

 「なんだい情報収集のナナリーちゃんよぉ」

 「そうからかってやるなよマージ。それで何か俺たちに聞きたいことでもあるのかな?情報収集のナナリーちゃんよぉ

 「お前らそこらへんでやめてやれよ。情報収集のナナリーちゃんが困ってるだろ」


 うっぜええええ。なんですかコイツら私は悪くないじゃないですか。全部悪いのはマーティさんですし!


 「もういいですぅ。なんでもありませんっ」

 「あー悪かったって。な、お前ら。泣きそうになってんじゃねーか」


 ちっとも悪いと思ってないくせにー!なんで私がこんな目に……。

 はぁ。切り替えていくしかないですね。ちょっと持ち上げて聞き出しましょう。


 「あの、つかぬことをお聞きしますが、今までで最高に稼いだのっていくらぐらいですか?」

 「んーそうだな、やっぱ宝箱から出たマジックアイテムを売って稼いだ時か?」

 「あーあれな。ありゃ最高にツイてたな。隠し部屋を見つけたマージのお陰だ」

 「ま、それが俺の仕事だからな(キリッ」


 結局いくらなんですか!あーもうキリっじゃないわ!

 金額に固執するのはやめましょう。なんだか自分が卑しくなったようで負けた気分です。隠し部屋を見つけて儲けた、それで満足しましょう。


 「あ、ありがとうございましたー」


 そそくさと逃げ出します。他にちゃんと聞いたら答えてくれる人もいるはずです。

 その後、いくつか聞いて回ったところ、どれも似たようなものでした。なかには願掛けが大事なんだと力説する人までいましたが。そんなのナンセンスです。

 もう戻りましょう。ギルドのテーブルの一角に二人揃っています。私が最後ですか。そうですか。


 「おかえりナナリー。こっちはジークと募集の内容を決めてたんだ」

 「そうですか。それでどういう内容なんですか?」

 「とりあえず前衛だな。カレンがいない分、こっちはきついし」

 「一応、後衛も増やすか考えたんだが、あくまで臨時だからな。いつものやり方の方がいいだろうと思ってな」

 「そ、そうですか。わかりました」


 ほんとにそれでいいのでしょうか?すっごく不安です。

 あとは応募されるのを待ちます。その間に報酬の高い難易度の依頼の中から出来そうなものを検討しました。お昼になろうかという頃、一人目がやってきました。


 「ここがソードマジックのメンバー募集してるとこかい?」

 「そうです。私がリーダーのマーティです」

 「あぁよろしく。俺はポンプ、ソロの格闘家だ。前衛募集ってことで間違いないか?」

 「ええそうです。では……」


 その後、面接は進み、仮採用が決まりました。しきりにいい筋肉だってジークさんが褒めててあまりにも太鼓判を押すので、あまり乗り気でなかったマーティさんもそこまでいうなら、と実戦を見て決めるとこまで折れました。私ですか?空気ですよ。後衛ですし。



 やってきました30階層。通称ミノタウロス地獄。敵は全部ミノタウロス。タフで一撃が重く、いわゆる登竜門。ソロで倒せれば一人前を名乗れると言われています。20階層から出てくるタウロスというミノタウロスの進化前で十分に練習していればだいたい倒せるそうです。私は魔法なんで関係ないですが。


 「じゃあまず1対1での戦闘を見せてもらっていいか」

 「わかった」


 そう言うや、ポンプさんはダッシュでミノタウロスに向かっていきます。

 「ンモー!!」

 「オラァ!!」カキーン

 手甲と斧がぶつかりあい金属のぶつかり合う音が響きます。

 すごいです。ミノさんの持ってる斧がぶっとんでいきました。

 「なるほど。武器がなくなれば楽になるな。それを初撃で」

 「戦闘眼がありますな。そして彼の土俵に持ち込むと」


 なにやら解説をしている二人を尻目に、ポンプさんは楽しそうにミノタウロスと殴り合っています。いいんでしょうかこれで?


 「セイヤッ」

 ポンプさんの鋭い一撃を放った後、ミノタウロスを倒しました。

 二分も掛かってないというより、最初からその一撃で仕留められたんでしょうが、見せプレイってやつですか!すごいです!余裕じゃないですか!


 「いやーすごい!見事ですね。あそこまであっさり倒すとは思っていませんでした」

 「鍛えてるからな。それでどうだ俺は合格か?」

 マーティさんがぐるっと私たちを見て頷いたのを確認して

 「ええ、もちろん合格です。よろしくお願いしますね」


 と、正式に加入が決定しました。クール系マッチョお兄さんですか。おまけに強いし、も、問題なんてあるわけないです。


 今度は集団戦で全員で連携の確認です。ポンプさんが武器を飛ばすのと足止め役・マーティさんとジークさんで無手のミノタウロスを仕留めていく役・私は先制とフォローですね。なかなかいいパーティなんじゃないでしょうか。

 カレンちゃんが居た時はマーティさんとカレンちゃんが一体を相手取って速攻で倒してタンクしてるジークさんと私に合流って流れでしたから。


 やっぱりソロでやってた人は強い人が多いんでしょうか。自信家とか取り分が減るのが嫌だとか一人が好きな変わり者ってイメージしかなかったのに、ポンプさんはそんなのとは何か違う気がします。


 調子良く、このフロアのミノタウロスを狩りつくす勢いで進んだところでいい時間になってしまいました。午後からだったので仕方ありません。帰りましょう。



 「買い取り金額は12万ゴルドですね。よろしいですか?」

 「はい。それでお願いします」


 午後から潜ったにしてはまぁまぁの稼ぎじゃないでしょうか。

 それでもポンプさんの分を除いて、9万ゴルドの稼ぎ。あと571万……。


 「じゃ、この後、新メンバーの歓迎会やろうか」

 「あ、ランプ亭がいいです!」

 「ん?なんだナナリーはステーキが食べたいのか?」

 「ミ、ミノタウロス倒したからそんな気分なんです!」

 「それもそうだな。よし行こう」


 まったく、この前のすずらん亭がいいとかなったら困るから空気呼んだのに、なんですかその食い気かよ的な視線は。乙女の気遣いが全然わかってませんね。


 「新メンバーポンプの加入を祝って、乾杯!」

 「かんぱーい」


 ポンプさんの歓迎会ということでちょっと根掘り葉掘り聞いてしまいました。

 聞くも涙、語るも涙です。村をモンスターに襲われ両親を亡くし、村長に奴隷として売られそうになったのを知り逃げ出してなんとか街まで辿り着いたけどスラムで過ごしていく中で身体を鍛えることでやっと食えるようになった、と。

 

 「あの時、逃げ出さなければ奴隷になって誰かに買われてコキ使われる人生もあったかもしれない。どちらの人生もありえた。……そう思うとな」


 と、ぽつりと、はっきりと強い意志を感じるような声でポンプさんが漏らしました。全員水を打ったように聞き入ってしまいました。ポンプさんは私たちのだいたいの事情を知ったうえて協力していてくれたんだとその時わかりました。

 なんていい人なんでしょう。もうポンプさんには足を向けて寝られないです!


 しんみりしまいましたが、その後は私たちのことやカレンちゃんを助けるためにお金が必要なことなどを話してポンプさんも協力してくれることになりました。

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