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悪党がゆく  作者: ばん
13/43

侵入ミッションとサンストンの処遇

 一週間が経ち、サイクルも決まってきた。朝錬・朝飯・午前中勉強・昼飯・午後作業と鍛錬・晩飯。早急に料理番が必要だ。エンゲル係数高すぎ。三食おやつ付きって俺からすれば食いすぎだ。一食おやつ付きぐらいがちょうどいい。あいつら燃費悪いんだよ。糖尿になっちまうぜ。


「今日はここまで。晩飯までに家事済ませとけよ」


 献立はパスタとサラダとパンとスープだ。肉多めのミートスパで粉チーズたっぷりで。

 当番はナナリーか。サラダ担当だな。


「ナナリーはサラダを作れ。豆とかコーンとか缶詰のやつで」


 遠慮がなくなってきたというか、走れメロスで感動しちゃったナナリーは非常にやる気を出している。ナナリーがメロスならセリヌンティウスと言えば、もう買われてどこぞで働かされてるらしいが。うーんどうだろう。チョイスをミスったか?

 悪党になるっていったり、俺の人間不信を直してみせますといったりブレブレだろう。俺だって少しぐらい信じてるさ。銃を持たせるってのは裏切られて撃たれる危険のリスクを承知してるってことなんだからな。さすがに信用ゼロではない。


「そろそろできるから呼びに行ってくれ」


 大量のパスタが茹で上がる。パスタが増え続けるなんてことはないが体積は増え続ける。手早くソースと絡めていく。どうせ混ぜるんだから最初から混ぜてあってもいいと思う。仕上げにオリーブオイル、胡椒をミルでガリガリ挽いて粉チーズわさー。



「今夜はマッチとポンプと俺でギルド長の家に忍び込むので先に寝とけ。いただきます」

「「「「「いただきます」」」」」


 今日で裏づけは最後だ。現物を確認しにいく。ポンプは見張りだ。マッチと一緒に忍び込む。

 相変わらずたっちゃんな俺たち。パスタを選んだのも効率重視だ。おかわりはないけど、デザートを出そう。


 食後は自分でコーヒーを淹れる。夜はまだまだ長い。眠気覚ましだ。

 リビングに戻るとゲームが広げられていた。ナナリーは1人で見てるだけ。

「なんだ1人か。トランプでもすりゃいいのに」

 オセロと将棋が2強である。

「みんな強いんで見て勉強してるんです」

 ふむ。詰め将棋とかやったほうがいいと思うが。

「まぁいい。それで魔法はうまくなったのか?随分と夜遅くまで勉強してるみたいだが」

「そうですね。種類も威力も増えましたよ。魔力制御は難しくなりましたけど」

 それってあぶないやつじゃねぇか。

「成果としては十分だな。ソージとセージに適正がなかったのは残念だった」

「使えると思ったんですけどね、魔法……。5属性はダメでしたけど、私思うんです。重力とかまだ見つかってない属性に適正があるかもしれません」

「宝の持ち腐れじゃなく魔力持ちには意味があると?運命論みたいだな。いやーロマンチストだとは知らなかったぜ」

「茶化さないでください。どこかに属性がある方が普通の考え方なだけです」

 そんなもんかね。したって属性ねぇ。ゲームでよくある時空とか青魔法とか概念はわかってもどうすりゃいいかなんてさっぱりわからんだろう。

「あいつらには双子って属性が既にあるだろう。シンクロし過ぎてて怖いぞ」

 結構考え方が違うのにだいたい返事とかは同じになるし、動きも似てるってポンプ先生が言ってたし。

「シンクロ……同じ動き?……うーん」

 あー自分の世界に入ってしまわれた。ほっとこう。



 さて、今夜はギルド長のところへ家庭訪問だが、情報をおさらいしておこう。

 ギルド近くに大きな屋敷を買って住んでいる。二階建てで庭付きだ。下働きは何人か雇っているが住み込みではなく通いだ。夕飯を出したら帰る。奥さんとは数十年前に死別。子供は二人いるがいずれも成人し独り立ちして冒険者稼業で他の街にいる。人付き合いはそこそこ広く浅く。古い友人とも飲むし、若い注目株の冒険者たちとも飲んでいる。

 本人はもう65歳を超えているし、この世界じゃ長生きなほうだ。表向き派手な趣味はなかった。

 黒い噂は流れていないが気になる情報がマッチからの報告であった。当時、この街のギルド長に就任した頃、奥さんが珍しい病気だったそうだ。色々伝手を頼って珍しい薬草やら肝臓やらを集めてたらしいが効果がなく亡くなった。


 こんなところだ。まぁ予想はだいたいつく。やれやれだ。

 女子供は風呂に入ってさっさと寝た。今はポーカーをしていたりする。もう真夜中になる。時計を見て時刻を確認した。もういいだろう。


「おーい、そろそろ準備に入れ」

「了解っす」

「うっす」


 真っ黒の服に目だし帽。銀行強盗みたいだな。武装はスタンガンと警棒。あとバレた時用の煙玉。連絡用のトランシーバー。


「ハンドサインは覚えてるな?緊急時はトランシーバーを使え。では出発」


 物音を立てない訓練は日ごろから教え込んでいる。ドアとかをバタンと閉めるやつは大嫌いだし、足音もうるさいとむかつく。体臭もさせない。うちでは腋毛も剃らせる方針だ。臭いのはスラムだけで十分だ。


 スラムから裏通りへ。そのまま屋敷の裏に向かう。ポンプは角で待機だ。ホワイトボードに簡易地図を書いたけど、今度詳細な地図も作らねば。地の利は大事だ。

 ハンドサインで合図を出して進入する。

 なにかの罠がないのは確認済み。スラムにいるガキを迷い込ませたりしたがなににもなかった。夜だけ設置してるというのもない。ナナリーで魔法関係は確認済み。

 簡単に塀をよじ登っていく。マッチが先頭だ。

 裏口からお邪魔する。闇雲に探したりはしない。書斎に隠し部屋とか地下倉庫にだいたいあるのが相場だ。

 廊下に出たところで二手に分かれる。俺が書斎でマッチは地下倉庫探しだ。

 とりあえず二階にあるであろう書斎にいく。鍵はなし。侵入成功。

 口にくわえたペンライトで書斎を照らすと、大きな立派な机には書類が置かれていた。

 なになに、ギルド職員の人物評価?興味なし。こっちは?今月のダンジョンからの収益表か。これは撮っておこう。カシャ。

 って違う違う。こんなスパイをしにきたんじゃない。金だ金。

 額縁の裏とかか?うーんない。本棚の裏……は構造的にないな。天井も開けて照らして見たがなにもなし。やっぱ地下か。

 マッチと合流しよう。

 階段を下りて一階へ。こういう階段裏もアヤシイ。死角だからな。

 階段裏にまわって照らしてみる。下ではない。目の前にある階段そのものがあやしい。埋め込んでるのか?コンコン。ちょっと音がにぶい気がする。

 しっかし、これは……金属探知機が楽なんだがな。音が鳴る。仕掛けでもあるのか?

 とりあえず放置。こういうのが得意な手先が器用なマッチを呼んでこよう。

 探そうと廊下に出るとマッチがいた。ちょうどいい。ライトを照らして手招きする。

「階段裏があやしい。仕掛けがあるか見てくれ」

 うなずくマッチ。二人で来た道を戻る。

「ここだ。おかしなところがないか探せ」

 二人で入念に調べると、変な穴が小さく開いていたのをマッチが発見した。鍵穴っぽくはない。しかし穴の周りに小さな傷が何個か付いている。

「テコの原理とかでパカっと開くのかね?いや開けなくていい。穴からカメラを通そう。【お取り寄せ】」

 胃カメラでいってみよう。小型モニターを繋いでセッティング終了。

「いいぞ。もうちょい突っ込め。んーなにか写った。戻って右かな」

 黙々と指示に従ってスイッチをいじるマッチ。

「んーなんかの皮袋かこれ?見てみろ」

 マッチにも見えるようにモニターを目の前に持ってってやる

「なんかこの模様、見覚えがあるような」

 そういってちょこちょこと操作する

「あーこれあれっすよ。サンストンの店のマークっす」

 ああギルド長と旧知の元冒険者で今は商店やってるつー

「ちょっと突いてみろ」

 カチャリ。

「ま、当たりだろうな。ここまで確認できりゃ裏づけも終わりだ。撤収すっぞ。【クーリングオフ】」

 胃カメラを戻してさっさと帰ろう。



 残した形跡はないし、大丈夫だろう。ポンプと合流しよう。

 裏口の鍵もマッチがかけ直して外に出る。


「おう待たせたな。ちゃーんと溜め込んでたぜ。アジトに戻ろう」


 一仕事終えてアジトについたのは二時過ぎぐらいだった。

「今日はお疲れ。ゆっくり休め。おやすみ」

「「兄貴お疲れ様でした」」


 今日はもうアジトに泊まろう。





 翌日、目が覚めたのは10時前だった。んー、どうすっかね。そういや昨日撮った収益表があるな。どれどれ。

 なんのことはないな。黒字を出している。結構ピンハネしてることがわかったぐらいだ。個別依頼の報酬もそのまま載せてない。ちょっとずつだがピンハネしてるな。名目は手数料ってことになってるが、ちりつもだ。あと、ギルド職員は高給取りじゃないってことぐらいか。頭割りでも、こっちの平均的な給料の域をちょっと超えるぐらいだ。

 まぁこれだけ見たら疑念が強くなるぐらいなものだが、溜め込んでるのわかったしな。昼にミーティングするか。


 ギルド長を詰ますけど、サンストンはどうしようか。グルなのは確定したが……

 ノープランでいいか。ここは任せよう。



「今日は昼一でミーティングなー。じゃいただきます」

「「「「「いただきます」」」」」


 考え事をする時は煮込み料理に限る。そんなわけで昼食はビーフシチューだ。2,3時間じゃ全然だな。角煮のとろっとろも食べたい。しかしなぁ、はまるとやばいんだよな。角煮の中毒性は高い。煮卵でさらに倍になる。こっそり今度作ろう。

 ナナリーに料理適正がないのがつらい。メシマズではないがうまくもない。食えりゃいいって基準ができちまってる。俺の中で女冒険者は嫁に貰わないことが確定した。まだミミーとかのほうがマシだ。金食い虫になるけど、稼げるし問題ない。


「ソージとセージも肉ついてきたな。三食おやつと食わせてるだけある」

「「そう??」」

「風呂場に体重計と鏡あるだろ。確認しとけよ。身長もついでに測っとけ」


 俺は逆に太ってきた。まずいんだよなぁ。つい一緒に食べてるからだが、この一件が終わったら鍛えよう。

 今日はセージが片づけか。


「それじゃそろそろ始めるか」

 ホワイトボードをどかっと持ってくる。

「では、昨日の成果から話そう。結果から言えば、サンストンとギルド長の関係を示す大金の入った袋があったのを確認した。よって黒なのが確定した」

 ナナリーを除いて全員が頷く。まだ受け入れがたいか。

「次に計画を実行に移す段階だが、今回の目的はギルド長だが、サンストンをどうするかについて意見を出せ。俺は何も言わん」

 しばしの沈黙からマッチから手が挙がる。視線で先を促す。

「じゃあまずあっしからサンストンについての情報を。資産的なことを言えば彼は搾取されてる側なのでお金は持ってないっす。被害者と言おうと思えば言えるでしょう」

 ここで一度区切るマッチ。

「でも、サンストンさんも悪いことしてたんだよね?」

 純粋に疑問に思ったことをいうセージ。

「弱味を握られていたにしたって裏切ることはできる。みんなに言えばいい」

 この裏切り大好き男からすれば裏切りの機会があるのにしないのは許せないんだろう。

「そうだよ。サンストンさんも悪者だよ」

 お前ら相性いいもんな、ソージ。ポンプに影響されまくりじゃねぇか。

「ナナリーはどう思うんです?」

 マッチが進行役かぁ。このメンツじゃなぁ。

「私は……あくまでもギルド長のみでいいと思います」

「理由を話せ理由を」

 つい口を出してしまう。

「理由は、取れるものがないからです。溜め込んでるのはギルド長だけですし」

 とってつけたような理由だなぁ。

「そうですかね?店のものは売り払うことができますし、何もないってことはないっす」

 うーんがめついねぇ。さすスラ民。だがそこが限界でもある

「オニヅカはサンストンさんをどうするかって僕たちに聞いたけど、ナナリーさんの言うように何もしないってことはいいのかなぁ?」

 案外鋭いことを言うなぁセージくん。

「それでもいいじゃん。ギルド長は教会に寄付してくれるんだぜ?」

 もうちょっと考えようよソージくん。

 このままの流れはつまらんな。

「俺がよく言ってるだろ。逆に考えろって。ジョースター卿の教えだぞ」

「それはオセロでしょ?もう俺わかったもん」

「今ので僕わかった!黒を白にすればいいってことなんでしょオニヅカ」

「うんうん。じゃあ双子は黙ってろ。ここはナナリーにもう一度聞こう。サンストンは不問にした方がいいか?」

 さすがにヒント出しすぎだったか。

「私たちはサンストンさんの罪をとえる立場ではないです。けど、知っていて黙っているのは罪です。私たちもサンストンさんも」

「だが今回は秘密裏にやる必要がある。それで?」

「サンストンさんにも教会に寄付してもらうのがいいと思います」

 はっきりとだが苦しそうに答えるナナリー。

「異議があるものは?」

 全員ないようだ。

「ないようだな。サンストンは大して儲けていないから金を持ってない。でも、寄付させる。マッチの言ったように商品でも妻でも子供でも売れば金にはなる。しかしそんなものは下の下だぞマッチ。いい加減、スラム的発想はやめろ」

 ここだけは注意しておかないと。

「兄貴のようにやるってことだろ」

 案外俺のこと見てるんだなぁポンプ。

「そうだ。じゃあ、セージに聞こう。何がわかったのかな?」

「んーっと、最初にナナリーさんが何もしないって言ったけどそれじゃあサンストンさんは辛くなると思ったんだ。ギルド長は溜めてたお金がなくなるけど、サンストンさんの罪は消えないもん。教会にね、そういう人がよく来るってシスターマリアが言ってたんだ。そういう人になんて言うの?って聞いたら、いっぱい時間をかけて償っていくしかないって」

 そういう意味では似てるかもな。細く長く搾り取るのも償い続けるのも。

「正解だ。黒を白にひっくり返そうってことだな。上出来だ」

 頭を撫でてやる。頭のいい子は好きだぞぉ。

「でもそれってお金の行き先がギルド長から教会に変わっただけじゃないですか。確かにいいことだと思いますがそれでいいんでしょうか……」

 空気を読まない子は嫌いだなぁ。

「別に問題ないだろ。どうせギルド長にも死ぬまで寄付を続けてもらうんだから」

「なんですかそれは!」

「は?もしかして溜め込んでたお金を寄付させて終わりだとか思ってたわけ?そんなわけねーだろーが」

 クリティカルが入ったようだ。もーめんどくさいなぁ。

 仕切りなおそう。


「サンストンの処遇も決まったところで、ギルド長について話そう。罪状はそうだなぁ、己の地位を利用し、冒険者や商人を食い物にし、私腹を肥やした。ってところだ。ここまではいいな?」

 ナナリーも不承不承ながら同意した。

「この罪を明らかにしたところであまり意味はない。冒険者たちから袋叩きに遭うとか、金返せって暴れられるだけだ。この街でのギルドへの信頼は失墜して、誰かが後釜に座って謝罪して終わりかもな。ダンジョンがあるこの街でギルドがなくなるのは困る。だから形だけ謝って終わらせることが出来る」

 これがギルドが複数ない弊害だ。

「というわけで、表沙汰にすることはできない。もちろんギルド長には罪を償ってもらう。じゃあ具体的にどうするかをもう一度確認するぞ」


 作戦に大幅な変更は無し。サンストンの方にポンプを行かせるぐらいだ。

 いよいよギルド長と対峙する時がくる。何気に初対面なんだよな。

ま、証拠とかないんだけどなんとかなるっしょ。

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