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悪党がゆく  作者: ばん
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マーティの受難

諸々の説明を省略して説明すると恐いお兄さんな俺が女神にお願いしてチートを貰った。顔が恐いっていうのは女神にも有効だったようだ。

こっちの世界の治安は悪い。力こそパワー!じゃなくて、いや、うんまぁ、だいたい腕力でなんとかなる。そんな中でも絶好のカモなのが冒険者だ。

俺がいちいち冒険ギルドに所属してダンジョンに潜って一攫千金とかゴブリンやオークをしこしこ狩るなんてことはしねぇ。英雄?勇者?知りませんよそんなこと。どこの世界だってピンハネはある。労せずして楽をする。なんていい響きだ。ノウハウだってある。実力行使がものを言うならチートがある俺はまさに最強。おっとそろそろいい時間だ。今日も元気に集金にいくか。


肩で風をきって大通りを歩く。散々暴れたせいかだれもかれも道を譲る。ここが神室町じゃないのが残念だけどな。ちっ、ホームシックってやつなのか。ガラでもねぇ。


おっと、ここだ。冒険者どものたまり場になってる酒場。さてさてお仕事モードだ。今日も頼むよ表情筋ちゃん。


店の入口でゆっくり店内を見渡す。今日のカモを探しているとだいたい俺を知ってるやつは顔をそらす。だけど、例外もいる。俺に気付かないやつら。危機察知能力がないとかちょーウケる。よくそんなんで冒険者とか名乗ってるわー。

ま、理由はわかるんだけどね。大抵、ダンジョンでお宝でも手に入れて浮かれてんだ。勝って兜の緒を締めよってな。さてと勉強させてやりますか。


まず位置取り。近すぎず遠すぎず。そして観察。どれどれ、真面目そうなリーダータイプがいるな。テンプレは楽でいいんだけど分け前が減るんだよなぁ。

もう何回絡んだかわからないそこそこ可愛い嬢ちゃんが注文を取りに来る。


「いらっしゃいませぇ~ご注文はお決まりでしょうかぁ~?」


わざとらしい舌っ足らずの愛想を振りまいてるフリをして俺がイラッとする事をしてくる看板娘のミミーちゃん(18歳/彼氏募集中)


「いつもの頼むぜ」と返事をしつつ、ちらっと獲物の方を見る。これで通じる。ツーとカー。

貰ったチートの一つ【地獄耳】で情報収集だ。ふむふむ、35層で出てくるソードフィッシュの話をしてるな。確かフ●ンネルみたいに剣を操るうっとおしいモンスターだ。となると、何か特殊効果付きの剣でも出たか。基本ボロ剣なんだけどな、ツイてるぜ、俺が。


さて、情報収集もしたし、メシも食べた。ターゲットはいい感じに酒が入ってる。やりますかー。


「ヨォ、嬢ちゃんこっちにきて一緒に呑もうじゃねぇか」

「仕事中なんで困りますうぅー!!」


ミミーちゃんに絡む俺、ちょっとマジで嫌がってる風のミミーちゃん。よいではないかーよいではないかー


「おい!そこの君!」


騒がしかった店内が一瞬でシーンとなる。ここで素早く返さないと、あっちゃーってあいつらに同情した空気になる。


「アァン?なんだおめぇ」

「女の子が嫌がっている。その手を離せ」

「俺の勝手だろ。あんたに指図される謂われはないぜ?」


売り言葉に買い言葉。ま、大安売りしてんのは俺だけど、無駄に正義感出してるこいつもわるい。あとはメンチきってヤルカ?ヤンノカ!?ヤレンノカ?でオッケー。


「やるんなら外でやりな!」

と、今まで静観していた女将さんの一声。女将さんもグルです。伊達に女将やってない。自分とこの看板娘を絡まれて放置とか普通はありえない。


顎クイッすればついて来る。店前パターンと路地裏パターンがある。俺の狙いはドロップ品の剣だから店前。羽振りが良さそうだったら路地裏で身ぐるみ剥いじゃうパターンになる。


「マーティ大丈夫?」

「ああ。心配ない。ちょっと行ってくる」


あーあ、せっかくパーティーの女の子が、って確認しただけかよ。大丈夫じゃなさそうだったら加勢ですか?考慮しておこう。なかなか可愛いし、知り合いの奴隷商に売り飛ばせる。そして買い取る為に頑張るマーティくんか。そういうのもいいかもしれない。


「そんなに心配ならそっちの嬢ちゃんも参加していいぜ?」

「ふっ、か弱い女性に絡む酔っ払いが随分と自信があるじゃないか」

「言ってろ。そんで要求は?こっちはなんでもいいぜー」

「そうだな、僕が勝ったら彼女に謝ってもらおう。あとは皿洗いでもしてもらおうか!」

「お、二つね。はいはい勝てたらやってやんよ。俺が勝ったら、その剣とさっきのお嬢ちゃんを貰おうか。げへへ」

「ちょっと待ちなさいよ!全然釣り合ってないじゃないの!」

「やれやれこれだから女ってやつは。くだらないとか思ってんだろ?それが男のプライドってやつなんだよ」

「カレン、大丈夫だよ。僕が勝つ。その条件でいい」


「おう。じゃあ、そこのお前合図頼むわ」


ギャラリーもいるし言質は取ったしやるか。

いくらなんでも俺がぼろっちいショートソードしか持ってないからって油断し過ぎだぜマーティくん。だって使わないもの。ステゴロだもの。


「「武神の名のもとに」」


キンっと刃を合わせる。決闘はそういうルールらしいから軽くて使いもしないショートソードなんか持ってる。


「始め!」


と、同時に剣を鞘に仕舞っちゃうおじさん。

不思議に思ったみたいだけど最初から負けるつもりだったんだな?ってそんな顔をしてるマーティくん。そんなわけあるかっ。構えから指でチョイチョイとかかってこいよ挑発してみる。

突っ込んでくるのをかわして軽くジャブを放つ。一撃て終わらせると娯楽にもならない。わかりやすく一撃離脱。ちょっとは力量差がわかったかな?

当たらなければどうということはないのだ!

その後もヒットアンドアウェイで顔を集中的に狙う。明日は腫れてること間違いなしデス。ちょっとイケメンだからね、仕方ないね。

そんなにダメージを与えてないけど、俺はかなり動いているからちょっと大袈裟に肩で息をして運動不足で疲れちゃった風を装う。チャンスですよ!

相手はこっちが紙一重で回避しているのが不思議みたいだ。そうしなぎゃカウンターにならないじゃん。もー分かってないなぁ。ジャブを三回に一回ぐらいの頻度にしてそろそろ見せ場にしよう。


「くっ、なぜ当たらない!」

「そりゃ避けてるからな。しょーがねーなー突っ立っててやるから当ててみろ」


「いくぞっ!ハアアアア!」


パシッ。真剣白羽取り!

おおおおお!盛り上がっとる。


やられた本人は驚いてるけど、そろそろオシマイの時間だ。

手を離せば引くにしろ切り返すにしろ隙ができる。


「アッパーカット!」

相手は飛ぶ。そして落ちる。


マーティに駆け寄っていくカレン。手間が省けてよろしい。

「おい、カレンとかいったな。そいつの剣持ってこっちゃ来いや」

「マーティ?しっかりしてマーティ!」

「話聞いてねぇーな。ん、そうだ、他にも仲間いただろー?」


辺りをキョロキョロ探すとなんか剣呑な雰囲気のおっさんと魔法使いの女の子の二人さんがいて近付いてきた。

「あんたらマーティのパーティーの人だろ。やんのかい?どちらにしろ約束通り剣とそこの女は貰っていくぜ?」

「そんなことできると思ってんのかい?」

「そりゃ決闘の結果だからなぁ。何の問題もないだろ」

「あの剣もカレンもマーティのもんじゃねぇ。あいつが勝手に決めただけだ」

「いや、しらんがな。女も承知しとったし、あんたらも何も言わんかった。なんもかんも終わった後で無効や言われてもそりゃ筋通りませんわー」

「ジークさん確かにこの人の言う通りです。ここは一旦引くしか」


なんか話は通じるんだけどすげー小物っぽいな魔法使いの女の子。

少しは冷静になったのか考えてる風なジーク

「一つ聞きたい。あんたはカレンをどうするつもりだ?」

「さてな。言う必要性を感じない。わかんだろだいたい。じゃあな」


男と長々話す趣味はないのでさくっと済ませちまおう。カレンのところまで歩いていく。やつの剣を拾いカレンに話し掛ける。


「おい、黙ってついてこい」

「なんであんたなんかにっ」


【スリープ】もうめんどくさいので眠らせて担いでいく。



顔なじみの奴隷商のところに連れていく。もちろんマシなとこじゃない。悪そうなやつはだいたい友達的な感じの店だ。


「これはこれはオニヅカさま。いらっしゃいませ」

「おう。見たらわかる感じの要件だ。なかなかの上玉だぜ?」


でぷっとした体型に似合わず素早い動きで顔を覗き込む奴隷商。


「一応どういった経緯なのかお伺いしても?」

「なーに、いつものカモさ。マーティって奴だ。そうだ、アンディ、ちょいとした要望がある」

「なるほど。確かCランクパーティーの」

「ふむ。一人前になってお宝手に入れて浮かれちまった感じだな、まさに。ま、ついでにそのマーティなんだが扱い易そうでな」


ほうほう。と頷いてはいるがタプンタプンしてるよ。アンディ。

とりあえず荷物を引き渡して中に案内されてドカッとソファーに座る。


「それでだ、さっきの女の名前はカレンだ。奴とデキてるっぽい。社会の荒波第二弾いってみよう」


とりあえず思いついたことを喋っていく。アンディにどこと利害関係があるか知らないのでそこらへんは勝手に調整するだろう。

悪巧みはとにかく楽しい。なんせマーティの受難はまだまだ始まったばかりなのだから。

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