#1 バレた?
初めまして!読もうと思ってくださり、ありがとうございます!
では、どうぞ!
「ふふふ……」
締め切った部屋の学習机の上は、漫画や紙で溢れていた。その机とセットだったであろう回る椅子の上で、一人の女が口元をニヤリとしながら漫画を読んでいた。電気をつけていないのに、なぜか女の周りだけが禍々しく暗くなっていた。その女は漫画を読み終わったのだろう。背伸びをした後眼鏡を外した。
「今日も天悪が素晴らしかった……!」
そう言い、一人でにこやかに笑っている女の名は荒木咲夜。腐女子だ。腐女子とは、男同士の恋愛が好きな人の事を言う。二次元キャラに対して愛が深すぎる場合も使ったりするが、咲夜は前者の方だった。だが腐女子は世間から気持ち悪がれ浮いてしまう存在のため、クラスメイトはもちろん仲の良い女子にも隠していた。
咲夜が余韻に浸っていると、ドアがバン!っと開け放たれた。咲夜がその方向を振り向くと、一人の男が立っていた。
「咲夜。もう学校行く時間だぞ。」
男はそう言って部屋に入ってくるなり、咲夜の腕を掴んだ。
男は荒木翔夜。咲夜の二個年上の高校三年生で今年受験。翔夜は運動神経が良く、バスケット部の部長をしている。頭も良く将来は医者になりたいと思っている。そんな非の打ち所のない彼だが……
「兄!朝ご飯はどうしたの?」
「これだ。」
そう言って翔夜が差し出したのは……真っ黒の何か。そう。非の打ち所のないように見える翔夜の欠点は、かなりの不器用だということだ。両親は共働きで今はアメリカにいる。小さい頃は咲夜たちを気にして日本内にいたのだが、もう高校生。咲夜たちの押しで両親は安心して海外に行った。そのため朝ご飯は一番起きるのが早かった人が作るのだが、いつも一番は翔夜。時々咲夜が起きて作ったりするのだが、夜更かしをしているのがほとんどのため、ほぼ毎日黒焦げを食べるのだ。
咲夜はもう諦めており、立ち上がって下に降りた後夜ご飯のあまりのシチューを温め直した。翔夜もまだ食べていなかったのか、自分の皿も出した。
「おはよ……」
咲夜たちが食べていると弟の奏夜が目を擦りながら降りてきた。奏夜は今中学三年生。今年高校受験で、私とは違う高校に行こうとしているみたいだ。特に女が苦手なため、私とはあまり話そうとしない。そのために違う高校、できれば男子校に行こうとしているらしい。腐女子の咲夜にとってはそれも良いネタになってしまうのだが。
奏夜はぼーっとまだスイッチが入っていないまま席に着いた。奏夜も運動神経が良く、サッカー部のキャプテンとしてチームを引っ張っているらしい。
奏夜も席についてもしゃもしゃと食べ始めた。一番器用なのは奏夜で、奏夜が朝ご飯を作ればいいのだがとにかく寝起きが悪く、起きるのが一番遅いのだ。
そんなこんなで、三人はご飯を食べた後一緒に家を出た。
「キャー!荒木先輩ー!」
「こっち向いてー!」
奏夜と途中で別れたあと、咲夜は翔夜と一緒に学校の門を潜ったのだが、歩いていると女子の視線が集まる集まる。咲夜は居心地が悪くなって離れようとするが翔夜がそれを許さなかった。翔夜は女子には爽やかな笑顔を見せて優しくするが、咲夜には少し腹黒いところを見せる。ちょっとドSだ。咲夜はため息をつきながら階段近くまで一緒に行った。一年生は一階にあるが、三年生は三階だった。翔夜はニコッとしながら咲夜に手を振って上がっていった。咲夜はやっと解放されたと思いながら教室へ向かった。
今五月でそろそろクラス内でグループが出来てくる頃合いだった。当然咲夜もグループに所属している。咲夜のグループはアニメ好きのグループで、暇さえあれば二次元のことばかり話している。咲夜にとって居心地の良いグループだった。その中でも仲が良い女子の机に行った。
「おはよう、璃子ちゃん。」
「ん。おはよう、咲夜。」
彼女は中武璃子。一番気のおける友達だった。アニメグループに所属しているがそこまでアニメのことを知らない彼女に、好きなアニメのシーンの話をするのが好きだった。璃子もそれを楽しく聞いている。大人っぽくて頭が良い彼女は、学級委員長をしていた。
咲夜はそのあと自分の席にカバンを置き、教科書を整理するため、中を見た。すると……
「あ……!」
そこには腐女子の大好きな内容のアンソロジー漫画が入っていた。咲夜は青ざめながらカバンを閉めた。しかし、咲夜の後ろに一人の男子が立っていた。咲夜はそれに気づいてパッと男子の方を見た。その男子はいつも暗くクラスで浮いている笹原裕樹だった。見られてしまっただろうか……?ドキドキしながら彼を見ていると、彼は真顔で(前髪で目元が見えないためわからないが)カバンを指差した。
「それ……BL?」