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第一章 ⑤

《狩り当日》


奏と額、そしてその他の獲物と呼ばれる者達を乗せた護送車は第一セクターブラッディ・ターミナルの校庭へと向かっていた。

すでに厳戒態勢をしかれた第一セクターは閑散とし、車窓から流れる景色に人影を捕えることは出来なかった。粉塵を上げ走り行く重厚な護送車の音だけが通りに響いていた。



「お姉ちゃん、僕達これからどうなっちゃうの?」

揺れる車内で、不安げに額は奏を見つめた。


「大丈夫よ、お姉ちゃんが一緒にいるから。」

恐怖でつぶれそうな心を必死にこらえながら奏は精一杯の笑顔で答えた。



ガタンッ!!

激しく車が揺れ肩がぶつかり合った。



「クソ!何が狩りだよ。都合のいい公開処刑だろうが。ウダウダやってねえで、一思いに殺れってんだよ。なあ、ペトロ。」

奴隷区の大柄な男が言葉を吐き捨てた。


「おい、黙ってろマルコ!下手なこと聞かれたら、ここで俺達殺られちまうだろうが。」


暫くするとその男達は不敵な笑みを浮かべながら奏と額に話かけてきた。


「なあ、お嬢ちゃん達、制服を着てるってとこみるとターミナルの生徒か?いったい何やらかしたんだぁ?」

「僕達、何にも悪いことなんてしてないもん。」

「はあ~?何もしてねえのに狩りに出されるって何だよそれ。ケヘヘヘッ。」


「笑うな!」

額は男を睨みつけた。


「威勢のいいガキだな~お前みたいな奴が一番最初にられちまうんだよ。」

男達は一斉に笑った。


奏は額の手をギュッと強く握った。

(お願い、神様。私達を助けて下さい。お願い・・・お願い・・・)


その時突然、一番後に座っていた金髪の男が冷たく言い放った。

「みんな条件は一緒だろう。他人ひとの心配してる暇があるんだったら自分の死に方でも考えてろ。」


「おい、ドノバン?柄にもなくこのガキどもに同情でもしてんのかよ。」


「あぁ?何だとぉ?」


「悪りぃ、悪りぃ。あ、そう言えばお前、生き別れの息子がいたんだっけなあ。」


「・・・・」

ドノバンの顔色がサッと変わった。


「マルコ、そのへんでやめとけって。」

「おぅ、スマン、スマン。こいつに息子の話は禁句だったよなあ。でもよお、もう会うこともねえんだからとっとと忘れちまえよ。所詮俺らは奴隷民なんだからよ、ケヘヘヘッ。」



ウゥッ・・・


いきなりドノバンはマルコの胸ぐらを掴み押し倒した。


「てめぇ、殺されてえのか?」



「いいぞ、やれ、やれ!!」

「ドノバン、やっちまえ!」

騒ぎは収まる気配をみせず狭い車内は二人を煽る声がひしめいた。

そしてドノバンの拳がまさにマルコの顔面を捕えようとした時、護送車が急停止した。


ドン!!ドン!!ドン!!

騒ぎに気付いた護送兵が強化ガラスの窓を思い切り叩いた。


「静かにしろ!開始時刻に間に合わなければお前ら全員ここで銃殺だぞ!」

護送兵は小窓から銃口を向けた。



「この次は殺すぞ。」

マルコの耳元でドノバンは冷酷にささやいた。



そして車内は静まり返った。



ドックン、ドックン、ドックン。

恐怖と不安で今にも張り裂けそうな心臓の音だけが奏の耳には強くこだましていた。



一方、第一セクターブラッディ・ターミナルではドルンガが今か今かと護送車の到着を首を長くして待っていた。


「遅い!これでは開始時刻に間に合わん!護送兵は一体何をしているんだ!!」

ドルンガの怒鳴り声が校庭に響き渡った。




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