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ESCAPE  作者: 蛞蝓
9/18

8話

「クソッ!!」

『連続通り魔殺傷事件』

警察の努力も虚しく、これで11件目の犯行が起こってしまった。

警備を何時もより数倍厳重体制にしたにも関わらず、コンサートが行われ人の出入りが多くなるこの時期に犯行は行われた。

「もっと早く気が付いていれば……」

馬場はあの後コンサートの帰り駅周辺の人だかりで犯行が行われると踏んで単独で駅に向かっていた。だが、馬場が着いた頃にはすでに……。

「今回の被害者は高校生だそうだ、ライブ帰りにこの駅から自宅へと帰宅する筈だったが、目撃者の証言によると改札を抜けたところで倒れたそうだ。すると辺りが血で染まったそうだ」

「恐らく改札付近で刺されたのでしょう。被害者の様態はどうなりましたか?」

「幸い一命は取り留めたそうだが、重傷でまだ意識は戻ってないらしい。早く目を覚ましてくれればいいんだが」

「そうですね、生きていてくれるだけで救われますからね」

病院に着き車を止めると今回の被害者である佐伯陽介の病室へと向かう。看護師の案内で連れてこられた場所は集中治療室だった。

そこには佐伯陽介の両親が不安げな表情で我が子の様態を見守っていた。

「今はまだ意識が戻っていないので、少しの間しか面会する事は出来ません」

看護師はそう言うと病室を後にした。

「刑事さん、犯人はまだ見つからないんですか」

佐伯陽介の父親が重い口を開く。

「私達も、全力で捜査に取り掛かっています」

「私もこんな事言いたく無いんだが、この事件はずっと続いているんだろ?確か陽介で11人目のはずだ。私には警察の力不足だとしか思えない」

お父さん、と佐伯の母親が制止の声をかけるが一度発言した父親の言葉は止まらない。

「あの通り魔のせいで私たちはみんな怯えながら暮らしているんだ!今回の事件だってアイドルグループのコンサートで人が多いときを狙われた!コンサートに来ている人たちが狙われるかも知れないとは思わなかったのか?そこに気が付いてコンサートを中止にでもしておけば息子もこんな事にならずに……」

馬場は感じていた、自分達警察の不甲斐なさを。すでに被害者が11人も出し、未だに犯人の手がかりすら一つもない。馬場は自分達が余りにも情けなく思った。

しかしそんな馬場の考えは遮られる事となる。

「陽介ーーーー!!」

病院内に響き渡る大声に全員が振り返る。

大声で叫びながら駆け込んできたのは高校生ぐらいの少年だった。

「陽介!おい陽介!返事してくれ!おい!」

少年は陽介の様態を見て青い顔になるとガラス越しに訴えかける。

「何してるんだ君!彼は集中治療を受けている、早く離れるんだ!」

思わず馬場が少年をガラスから引き剥がす。

「クソッ……!!何で陽介がこんな目に……」

「蓮弥君………」

陽介の父親は蓮弥に優しく寄り添った。それはさっきまで馬場を責め立ててた興奮状態からは想像出来ないほど優しいものだった。

この蓮弥という少年は佐伯陽介の友達だろう。

「こんばんは。私は霧嶋警察署の刑事課に勤めている馬場慎太郎と言います」

そう言って馬場は蓮弥に警察手帳を見せる。

「佐伯陽介君について、少しでも知っていることがあれば話してほしい。つらいとは思うが私もこの事件を早く解決させたいと心の底から思っている」

蓮弥は涙で腫らした目を拭うと頭を縦に降った。

「ここでは何ですから、場所を移しましょう」

そう言って馬場は蓮弥の肩を支えながら、病室を後にした。

「今日僕達は、rememberのコンサートに行ってたんです」

二人は病室から日との少ない待合室へと移動していた。蓮弥はその後も今日あった出来事を出来るだけ詳しく馬場に伝えた。

「そして帰りの分かれ道で別れて、僕は家に帰りました。陽介とはそこで最後です」

「分かりました、詳しく説明してくれてありがとうございます」

そう言うと馬場は一枚の名刺を蓮弥に渡した。

「これは……」

そこには携帯電話の番号も記されていた。

「もし何かあったら私の方に連絡して下さい。どんなに些細なことでも、気になることや気付いた事があれば私に連絡して下さい。力になります」

「あ、ありがとうございます。」

陽介はそれを受け取り、ポケットにしまう。

「私は今回の事件の犯人を絶対に捕まえたいです。本当に関係のない人達がこうして被害にあってる。陽介君のお父さんの思いを聞いたとき私は本当に自分が情けないと思いました」

蓮弥は馬場の話に耳を傾ける。

「もうこれ以上被害者を出すわけには行きません。ですが、今回の事件についての手掛かりが少なすぎるのも事実です。ですから、何か少しでも変わった事があれば知らせてほしいのです」

「分かりました。僕も陽介やほかの人たちをこんな目に遭わせる犯人を絶対許せないので、僕に協力出来る事があれば何でも協力します」

それから馬場はもう1人の刑事と霧嶋署に戻っていった。

蓮弥はしばらく虚無感に襲われていたが、少しして蓮弥は決心した。

「まだ犯人が近くにいるかも知れねえ……」

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