6話
『連続通り魔殺傷事件』
人々を恐怖に陥れるこの事件を解決するため、現在も捜査が行われている。
身長187センチ体重87キロの筋肉質の男、馬場晋太郎も、この事件を捜査している刑事の1人だった。
馬場はまだ3年目の若手だが、優れた観察力と冷静な判断力があり、この霧嶋警察署に赴任してきてから多くの事件で成果を残す等、その実力は買われている。中には馬場の事をあまりよく思ってない上司たちが数名いるが、それだけ馬場の能力が優れているという事だろう。
だがそんな馬場にもこの事件だけは正直何の手掛かりも掴めてなかった。
何せ犯人を特定するような物が一つもないのだ。犯人の目撃情報もなし、被害者の証言も『覚えていない』と手掛かりなし、さらには被害者の証言から得た事件現場に向かってみてもそこには最初から事件などなかったかのように何の形跡すら残っていなかった。さらにはそこに被害者の血痕すら存在しなかったのだ。
「……」
全くの無。本当に犯行など行われているのかと疑いたくなる。ここまで完璧な犯行ならば通り魔なんかでは無く組織が何かの目的の為動いているとも考えられる。
「被害者には全く共通点がないことを考えればやはりただの通り魔なのかと思うが……」
事件について頭を悩ませている馬場に声が掛けられた。
「まーだ考えてんのかよ、これはどっか頭のネジが外れてる野郎がやってんだよ」
そう言うのは馬場の上司の小堺。
「被害者は子供から老人までバラバラだし目的があるなんて思えねえ。本当にだれかれ構わずやってんだとしたらマジで頭がイかれてる奴だ」
「確かにそうかも知れないですけど、でも気になることならあります」
「なんだ?」
「11です。」
「11?11がどうかしたのかよ?」
「この数字、気になりませんか?被害に遭うのは毎月11日、被害時刻も11時」
「でもそれだけだろ。11って数字もたいして関係ないように思えるし、そもそもそれが何の意味があるんだ?」
「何かの儀式だとしたらどうでしょうか。決まった日にち、時刻に決まった事を行う。それが人を傷つけることなら……」
「は?儀式?何言ってんだよお前?そんなオカルトみたいな事考えてねえで、もっとまともな事を考えろ」
「被害者の数を合計すると10になります。今日被害者が出れば11になります。そして今日は7月11日、私は今日の午後11時頃に必ず犯行が行われると考えています。もちろん犯人は明確な目的を持って」
「目的だぁ?こんなもんただ人を切ってるだけだろうがよ。目的なんか見あたらねえ」
「11……」
「確かにこれからも犯行が行われる可能性は高いだろう。だから今霧嶋町周辺には200人体制の厳重な警備が張られてる。不審な奴がいれば即調べられる」
確かに小堺が言うことは正しかった。だが馬場には11に拘る理由があった。
最近設立された宗教団体『草葉之陰』。聞いた話では中々怪しい事をしているようで、中でも気になったのは11人の血を集め1人の骸に注ぎそれを捧げる事により、神の力の一片を手に入れることが出来ると言った儀式めいた教えだった。まだ小さな団体だが馬場はこの団体をマークしていた。
そんなとき馬場はあることを思い出した。
「そう言えば、霧嶋町でアイドルのコンサートってありましたよね?」
「ああ、何かあったなそんなのも、確か今日じゃなかったか?」
その言葉を聞くと馬場は荷物も持たずに部署から飛び出して行ってしまった。
「おい!どこに行くんだ!」
そんな小堺の言葉など、今の馬場には届かなかった。