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始まり
『あの悲惨な事件から今月で11カ月目となります。皆さん、くれぐれも今日は夜道を1人で歩かないなど細心の注意を払って行動するようにしてください』
ニュースキャスターが原稿を読み上げる。
悲惨な事件というのはここ、霧谷町周辺で起こっている通り魔事件の事だった。
『それではこの通り魔事件に詳しい八木沼先生にお話を伺いたいと思います』
八木沼と呼ばれた大柄な男性は、自分の見解を述べ始める。
『そうですね。この通り魔事件は謎が多い事件なんですね。今までの被害者は10人に上りますが、全員いつ刺されたのか分からないと証言しているんですね。傷口は差がありますが大体深さ3センチで10センチ近く切られているんですね。こんなに大きな傷なのに、気付かない筈はないんですよね』
『そうですよね。普通そんなに切られたらすぐに気が付きますよね。それに、犯人の目撃証言も全くと言っていいほどないんですよね』
『はい、そのせいで警察もなかなか犯人を捕まえられないというのが現状なんですね。』
そんな世間を騒がせている通り魔事件の中心地、霧嶋町に菊池連弥は住んでいた。