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Hand In Hand  作者: 和希
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3








ザァザァと音を奏でながら、落ちてくる雨の雫。


その様子からして暫くは止みそうにないなと、放課後の昇降口で私はひとり肩を落とした。


…あのお天気キャスターめ、化粧ばっかに気をとられてないでちゃんと仕事しろっつの。


今朝、私が見ていたニュースのお天気キャスターは、降水確率10%だと微笑みながら言っていた。


勿論その言葉をまるまる信じてしまった私は、当然のように傘を持っていない。


「─…どうしよう」


バスで通学している私。

けれど、いくらバス停が高校から近いと言っても、雨の中を歩いて行くのには結構な距離がある。


(びしょ濡れでバスには乗りたくないな…)


私は再び、止みそうにない雨を見て、灰色の空を睨むように見上げた。




「…楓ちゃん?」


ふと、背後から私の名前を呼ぶ声がして、私は声のする方へと振り返る。


「どうしたの」


そこには不思議そうな顔をして、こちらを見ている矢島 圭介の姿があった。


「……。」


今日は終礼が終わったにも関わらず、私の元へと来なかったコイツ。


珍しい事もあるもんだなと内心ホッとしていたのに、


(最悪だ)


よりにもよってコイツに会うなんて。



「…アンタこそ、どうしたのよ」


「ん?俺?俺は委員会があったから」


私の無愛想な声にも、表情を曇らせることなく質問に答えた矢島 圭介。


だからか、コイツが今日私の所へ来なかったのは。


「でも、楓ちゃんに会えるなんてマジラッキー。実は今日会いに行こうとしたら、委員会の先生に強制連行されたからさぁ」


そうやって聞いてもいない事をぺらぺらと話すコイツ。


先生に強制連行されるくらいだから、きっと何回も委員会を休んでいたんだろう。


先生も、この問題児のせいで余計な手間が増えて可哀想に…。




「で、楓ちゃんはどうしたの?」


「─…別に…」


傘を持っていないとコイツに言うのがなんだか癪で、私は言葉を濁す。


けれどコイツは、そんな私の様子に気付いたのか、気付いていないのか


「…ひょっとして、傘忘れた?」


そう首を傾けた。


両手に傘らしきモノを持っていない私に対して、コイツの右手には藍色の傘が一本、しっかりと握られている。


なんだか少しだけ、コイツに負けた気分…。



「じゃあさ」


コンコンと地面を蹴り靴を履きながら、私の方へと一歩近付いたコイツ。



「一緒に帰ろっか」


「……。」



この時私は、つくづく傘を持っていない自分を、恨まざるを得なかった。






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