表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Hand In Hand  作者: 和希
21/31

21

彼を遠ざけて、傷付けて、胸が痛まないわけではない。

あんな困惑した表情や、悲しい表情をさせたいわけではない。


ただ、譲れないだけ。


遼という存在を、遼を好きでいると、想い続けると決めた私の決意を譲れないだけだ。


その為にはなんだってする。他が邪魔なら、容赦なく切り捨てる。


遼を失った痛みも、遼と一緒に居た思い出も、全部私だけのものだ。


誰かに話してこの痛みを分かち合ったり、遼のことを思い出話にしたりなんてしない。


だって、私はまだこんなにも遼のことを想っているのに、まだこんなにも好きなのに、


遼を過去になんて、できる筈がない。



(─…過去に、)


過去になんて、しちゃいけないんだ。













それから私は、矢島 圭介を徹底的に避け始めた。






『また、来るから』


矢島 圭介はその言葉通りに、休み時間毎に姿を現した。


けれど私は、トイレへ行ったり、他の教室へ移動したりして彼との接触を避けた。


一回だけ隙を突かれ、話し掛けられたが、まるで彼の声なんて聞こえていないかのように無視をして。


無視だなんて、子供っぽいって分かっている。避けてるだけじゃ、きっとアイツは諦めないだろうってことも、分かっている。


だけど、私にはこの方法しか思い付かなかった。


アイツを避けて、無視して、関わらないようにする以外でしか、私は私自身の守り方を知らなかった。




「楓ちゃん、」


「─…。」


「楓ちゃんっ」


終礼が終わり、いつものように私に会いに来た彼のことも、無視をする。


周りの人間は不思議そうに私達のことを見るが、そんなものには構っていられない。


私はただ、無言のまま、帰宅する為の道を歩く。



けれど、そんな私に流石に痺れを切らしたのか


「…楓ちゃん!」


矢島 圭介は私の左腕をグッと掴んだ。





「─…何?」


これはどうやっても無視はできないと思い、そう冷たく言い放つ。その声は自分でも驚く程低く、彼を避けるという私の決意が本気だと、ハッキリと示していた。


彼に掴まれた腕が、まるで氷のように冷たく感じて…火傷してしまいそうだ。


「…昨日のキスで怒ってるなら謝るから、無視はやめてほしい」


いつもの底抜けに明るい声とは違い、どこまでも真剣な矢島 圭介の声。


その声色から、私に無視をされることが彼にとって、相当な痛手となるのだということが分かった。



「……。」


「…ごめん、」


私の目を真っ直ぐ見る彼の瞳は微かに揺らいでいて、不安と悲しみが瞳を通して伝わってくる。


『…キスで怒ってるなら、謝るから…』


違う。

私は別に、コイツがしたことに対して怒りを感じているわけじゃない。

腹立たしいとか、憎らしいとか、そんな風に感じているわけじゃない。


だから別に、コイツに謝ってもらいたいわけではないんだ。



「─…楓ちゃ、」

「私はアンタの気持ちに応えられない」


矢島 圭介の言葉を遮り、私は言う。




「好きだと言われても、キスをされても、私はアンタに同じ気持ちは返せない」


どれだけ好きだと言われ優しくされようと、私がアンタを好きになることはできない。


誓ったから。遼を失ってしまった時、私は、遼以外の誰かを好きになることはしないって。そう誓ったから。


「だから、アンタとは付き合えない」


その誓いを破ることはできない。



「私のことはもう諦め…」

「諦めない」


先程までの声とは違い、力強くそう言う彼。


私の左腕を掴んでいる彼の手に、グッと力がこもる。


彼のその手の強さが、その声の真剣さが、彼の『本気』をありありと示していて、


「楓ちゃんが好きだから、そんな簡単に諦めるなんてできない」


──鼓動が早くなる。



「…なに、言って…」

「しつこいって分かってる」


明度の高い色の髪が、陽光に照らされて更に明るく光り、その間から覗く瞳の力強さに射抜かれてしまいそう。

飲み込まれてしまいそう。



そして彼は、


「でも、理由もなく諦めるなんて絶対に嫌だ」


動揺している私に、その言葉を発した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ