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Hand In Hand  作者: 和希
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小さなその箱に入っていたものは、


見覚えのあるネックレスだった。




「…え、」


ハートの形をしたリングが付いている、シンプルでだけど綺麗な光を放つそれは、


私がいつか遼と出掛けた時に、魅入ってしまっていたものだった。


素敵で欲しいと思ったけれど、ショウウィンドウに飾られていたそれは、とても手に出せるような金額じゃなかった。


だから、欲しいなんて一言も口にしなかった筈なのに、それがどうして今ここに…。



───カサッ



何かが擦れる音がして、箱の中に小さなメッセージカードが入っていることに気が付いた。


恐る恐るそのカードを開いてみる。



白い紙に、少し癖のあるその字は、紛れもなく遼のもので、



『誕生日おめでとう』



たった一言だけ、そう書かれてあった。




「…それは、楓ちゃんに持っててほしいの」


息子の気持ちだから。



そう言って、私の手を優しく包み込む遼の母親の手。


その上に、私の涙がポタポタと落ちてその手を濡らしていく。




『誕生日おめでとう』



遼が最期に残したその言葉は、私の心に酷く深くそして、何よりも強く、悲しみと愛しさの色を残していった。




歪む視界の中、何度も何度も遼が書いたその文字を読む。


私がこのネックレスを欲しいと思ったことに、気付いてくれていた遼。


そしてそれを、誕生日プレゼントに買ってくれた遼。


本来なら、嬉しくて幸せで仕方がない筈なのに、どうして今、私はこんなにも不幸なんだろう。


どうして、あの時、このネックレスに見とれてしまったんだろう。


もしもあの時、私がこのネックレスを気に入っていなければ、


もしも誕生日が、この季節でなければ、


もしも今日、女の子が飛び出さなければ、車が通らなければ、遼が庇わなければ、


今でも遼は、生きていた筈なのに。


私に優しく笑いかけてくれた筈なのに。



「──…っやだぁ」


これが現実だなんて、

遼がもう居ないなんて、


そんなの認めたくない。


「やだよ…っりょう…」


頭では、いくら現実だと分かっていても


受け入れたくなんかないんだよ。












だけど、どれだけ沢山の涙を流しても、


声が涸れるまで叫んでも



『ずっと一緒な』



そう言ってくれた遼は、二度と帰っては来なかった。





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