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Hand In Hand  作者: 和希
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心臓が痛いくらいにギュッとなる。上手に息ができない。


恋愛ドラマなどで『夢なら覚めないでほしい』という言葉をよく耳にするけれど、まさか自分が本気でそう思うなんて想像もしていなかった。


好きな人の腕の中で『好き』と言われることが、こんなに幸せなことだなんて、知らなかった。



「─…っ、」


答えなくちゃいけない。


真っ直ぐ気持ちを伝えてくれた遼に、私も遼が好きだって、言葉にしなくちゃいけない。


じゃないと、

何も伝わらない。



「…っわ、私」


唇が震える。遼に聞こえるか聞こえないかくらいの、か細い声しか出すことができない。


「うん」


だけど遼はそんな私を、急かすでも、焦らせるでもなく、ただゆっくりと頷いて続きの言葉を待っていてくれる。


そんな風に、

優しい遼だから、


こんな私を見下さないでくれた遼だから、


他の誰でもない

遼だったから



「…っ好き」



「っ」



「好き、だよ」



好きになったんだ。





傍を離れたくないって、

ずっと傍に居たいって、


そう思ったんだ。



「…うん、ありがとう」


「─…っ」


「ありがとな。…楓」



囁くように言われたその言葉が、私の涙腺を破壊する。


遼のその『ありがとう』は色んな意味を含んでいると分かったから、


言ってくれてありがとう


選んでくれてありがとう


こんな気持ちをくれて

ありがとう


優しく穏やかな遼の声が、その全てを私にちゃんと伝えてくれたから。


それが、

堪らなく愛しくて


「っ」


どうしようもなく涙が溢れた。





「…楓、顔挙げて」


遼の温かい手が、私の頬にそっと触れる。


しかし私はこんな泣き顔を見られたくなくて、首を左右に振り、顔を挙げることを拒否した。



「楓、キスしてぇ」


「っ」


「キスさせて?」


甘い甘い遼の誘惑。


それは酷く魅力的で、

…ずるいと思った。


好きで仕方ない人に、そんな風に言われて、断れる女の子なんて果たしてこの世に居るんだろうか?



戸惑いながらも、ゆっくりと顔を挙げる。


重なった視線。遼のその瞳は、泣きたくなるくらい優しいもので、




「これからは、ずっと一緒な」




初めて触れた遼の唇からは、溶け出しそうな程に甘い、レモンの香りがした。












『これからは、ずっと一緒な』




あの日、遼によって紡がれたその言葉。


それを疑うこともなく、ただ純粋に信じていた。


ずっとだとか、永遠だとか、そんな言葉を信じるなんて子供だからだと思うかもしれない。


けれど、少なくともあの頃の私は信じていた。


ふたりの未来はこれから先も続いていくのだと、無条件に純粋に思っていた。




──…だけど、今なら言える。



ずっとだとか、永遠なんて言葉は存在しないのだと、そんな言葉があること自体が間違いなのだと。



どれだけお互いがお互いのことを想っていても、どうすることもできない事があるのだと。




そんな事実、知りたくなんてなかったのに、私はただ純粋に、『ずっと』という言葉を信じていたかったのに。







現実は、どこまでも無情で、なんの前触れもなく私達に牙を向ける。

















────遼が死んだのは



それから半年後、



凍てつくように寒い寒い冬の日だった…──。





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