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だけど、私は
(ちゃんと、離れる…?)
遼が言った言葉に、頭が真っ白になった。
それは、どういうことなんだろう。
私の為を想って?
それとも、
「遼は、私と居るのが嫌…?」
本当は私と居るのが恥ずかしいってことなんだろうか。
私の為を想っているフリをして、本当は私から離れたいと思っているんじゃないのか。
もし、そうだとしたら、私には何も言えない。離れていく遼を止めれる程の自信なんて、生憎私は持ち合わせていない。
「違う!」
私の震えていた言葉を聞いた瞬間、遼は慌てた様子で顔を上げる。
そして真っ直ぐに私の瞳を見つめて、すぐさま否定の言葉を口にした。
「っ、違う…?」
「ああ、それだけは絶対に有り得ない」
そう強く言い切る遼。
その瞳は真情を吐露しているかのようで、嘘を付いているようには思えない。
「俺がお前と一緒に居るのが嫌だなんて、思うわけないだろ…?」
その言葉を聞いて思う。
…ああ。そうだ。
遼はこういう人だった。
ほんのちょっとしか共有した時間はないけれど、分かる。
さっき、彼女達に言ったように、遼は自分の思ったことはちゃんとはっきりと言う人だった。
初めて私に笑いかけてくれた時だって、彼女達に怒りの声を発した時だって、
遼は自分の意志をきちんと表していたんだ。
じゃあ、本当なんだろうか、
『俺がお前と一緒に居るのが嫌だなんて、思うわけないだろ…?』
そう言ったことの中に嘘は一つも無いんだろうか。
もし無いんだとしたら、私は…
「遼と一緒に居てもいいの…?」
これからも遼と一緒に過ごせる時を望んでもいいんだろうか?
コンッと、地面に缶が落ちる音が聞こえてきたかと思うと、
「…んでそんな可愛いこと口にすんだよ」
私はそう呟く遼の腕の中に居た。
(─…え?)
私は突然のことに上手く思考が纏まらなくて、ただ戸惑うばかり。
目を大きく見開く私の視線の先には、遼が動いたことによって落ちた、レモン味のサイダーがシュワシュワと地面に大きなシミを作っている。
「りょ、遼…?」
困惑しながらも、やっとの想いで遼の名前を呼んだ。
そんな私の声を聞くのとほぼ同時に、
「もう余計なことは言わせねぇから」
まるで名前を呼ばれた返事代わりのようにそう言った遼。
「お前…楓が俺と一緒に居てもいいって思ってくれるんなら、
俺は楓の傍に居たい」
「えっ…?」
肌を通して伝わってくる遼の鼓動と熱に思わず息を呑む。
そんなこと、言わないで。期待してしまう。
遼が傍に居させてくれることを許してくれた今でも十分幸せな気持ちなのに、これ以上を望んでしまう。
駄目だと思っていても、自分じゃ自分を止められない。
制御が、効かない。
「…りょ、」
「好きだ」
─…え?
「楓が、好きだ」
その言葉を聞いた刹那、時が止まったような気がした。
幻聴?幻覚?
それとも、都合のいい夢なんじゃないんだろうか。
だって、私の聞き間違いじゃないとしたら、今 遼は
「…私を、好き…?」
確かにその言葉を言った筈だ。
でも、だけど、そんな筈ない。そんなこと、遼がこんな私を好きだなんてこと、ある筈がない。
そう思ってたのに、
「ああ。…好きだよ」
遼はそんな私の戸惑いとは裏腹に、もう一度ハッキリと、その言葉を口にした。




