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夏の暑い日差しと、蝉の鳴き声が私達ふたりを包む。
けれど、私の手が遼に離される気配はない。
遼に握られたその箇所が、火傷しそうに熱く感じる中、私はただ黙って遼の後ろを付いて行く。
『俺、コイツが居なくなったら困んだよね』
さっき遼が言った言葉。
それが頭の中を何度も何度もリピートして、離れない。
あの消えてしまいたい程の痛みを感じる中、彼女達を一掃し、私を連れ出してくれた遼。
その全てが信じられなくて、まるでこの夏の暑さにやられてしまったかのような、白昼夢を見ているような、そんな感覚。
遼は一体何を思って、その言葉を言ったんだろうか。
どうして私を連れ出してくれたんだろうか。
「…ちょっと、ここで話そうぜ」
今まで歩みを止めることのなかった遼が、ある小さな公園の前で立ち止まった。
私は遼の提案に頷いて、私達はそこにあるベンチに腰掛ける。ちょうど日陰になっていて、思っていたよりもずっと、過ごしやすい。
周りの状況を冷静に見ているなんて、意外と余裕だなと自分自身思った。
けれど、それとは逆に冷静でいないと自分を保てない気もした。
また自惚れて、くだらない期待をしてしまいそう。
隣りに座ったのだって、こうして連れ出してくれたのだって、何か特別な理由があるんじゃないかって、勘違いしてしまいそう。
(…駄目、だ)
私はそんな考えを否定するかのように、首を軽く左右に振る。
期待はしない。無駄な期待をして、傷付くのはもう嫌だ。
「ほら、お待たせ」
そう言って、公園にある自販機でサイダーを買ってくれた遼。
「…ありがと」
その缶を受け取り、タブを上げ、口付ける。シュワシュワとした炭酸独特の喉ごしが暑い日差しを緩和してくれるような気がして、心地よい。
こんな時にまでレモン味のサイダーを飲んでいる遼を見て、なんだか彼らしいなと思った。
「…あのさ」
遼が缶をそっとベンチに置き、私と視線を合わせる。
絡んだ視線、遼の瞳がいつになく真剣で、缶を握る自分の手に思わず力が入ったのが分かった。
そして、遼の口から紡がれたのは
「…俺と一緒に居るのは、苦痛か?」
私が考えもしていない言葉だった。
「─…え?」
私は遼が何故そんなことを言ったのか分からなくて首を傾げる。
苦痛なのは私の方ではなくて、遼の方なんじゃないのだろうか。
こんなに地味で、面白みのない私と居るのが苦痛なのは、どう考えても遼の方なんじゃ…、
「俺と一緒居ることでさっきみたいに、余計なことを言われるのは嫌だろ?」
(…あ、)
遼のその言葉を聞き、遼が何を言いたいのか分かった。
遼は自分と居ることで、周りから色々と言われることに、苦痛を感じていないかと聞いているんだ。
「自分が他人より優れてるとか、くだんねぇ自信を持ってる奴がお前に色々言ったり、したりするだろ?」
「─…。」
「そんな嫌な思い、お前にはしてほしくねぇから…」
苦笑して、肩を落とす遼。その表情はきっと、言われてる私よりも寂しそうなんだろうなと考えると、思わず胸が締め付けられる。
「だから、お前が俺と居たくないっつーんなら…ちゃんと、離れるから」
その言葉を吐き出すと同士に、遼はまた寂しそうに笑った。




