12
彼の隣りに堂々と座ることができない自分が、堪らなく恥ずかしかった。
───ガラッ
そんな風に思っていると私のすぐ側にある教室のドアが開かれて、私は俯いてた顔をそっと上げた。
私の視線の先、ドアを開いたのは、私が今一番会いたくなかった彼、
(─…遼、)
少し夏バテ気味でダルそうにした遼だった。
私は無意識の内に手のひらをギュッと握り締める。
その手は少し汗ばんでいて、自分がどれだけ緊張しているのか嫌という程分かった。
遼の足が一歩、また一歩と座席に向かって進んでいく。
私はそれが怖くて、
遼が彼女達の居るあの特等席に行くのが、
私の前を通り過ぎて行くのが怖くて、
目を瞑り、彼から視線を逸らすように俯いた。
現実を受け入れることさえできない自分が、心底嫌になる。
どうして私は、こんなに臆病になってしまったんだろう。
「─…なぁ、なんでそんな俯いてんの?」
──その声は 紛れもない、遼のものだった。
私は予想外のことに驚いて、俯いていた顔を慌てて上げる。
開けた視界の先、私の隣りに座っているのは
間違いなく遼で、
(─…なんで、)
私はそう思わずにはいられなかった。
クーラーの当たらないこの席に、遼が座る理由なんてどこにもないのに、
どうして遼はここに腰掛けたんだろうか。
他にたくさん席が空いている中、どうしてこの席に、
私の隣りに。
「なっ、遼君、どうして今日はこっちに座らないの…?」
そう思ったのは私だけではなく、彼女達も同じだったようで驚いた様子でその言葉を口にした。
「んなの、あんたらには関係ねぇじゃん」
けれど遼は、そんな彼女達の様子を欠片も気にすることなく、そう一掃した。
そんな遼を見て、何故だか胸の奥が温かくなる。
別に遼が私の隣りがいいからと言ったわけでもないのに、遼のその一言で私の心は随分と軽くなった。
だってそれは、少なくとも彼女達ではなく、私を選んでくれたってことでしょう?
なんて、そんな自惚れた優越感にも似た感情が私の中を駆け巡る。
けれど、そんな私のささやかな優越感でさえ
「じゃあ、私達がそっち行くから、退いてくれる?新堂さん」
彼女達のたった一言で粉々にされてしまうんだ。
(─…なん、で?)
先にここに座っていたのは私なのに、せっかく遼がここに座ってくれたのに、どうしてそんな勝手なことを言われなくちゃいけないんだろうか。
私が彼女達より大人しくて、地味だからってどうしてそんなことを言われなくちゃいけない?
確かに彼女達の外見は人より優れているのかもしれない。でも、外見が優れているからって、内面までもが優っていると決まってはいない。
それなのに、どうして彼女達は
「地味な新堂さんは、遼君の隣りには役不足だよ」
人を傷付ける言葉を、平気で言えるんだろうか。




