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diary8


今日は、人間界から勇者なる者が魔界に入ったと報告が入りました。



時々、こうやって人間界から人がやって来ます。

ベル様の代になってからは初めてですね。


先代の時は、何度か拝見しております。

愚かな人間たちは、皆先代の前に沈みました。


魔族は、人間界に特に何もしておりませんのに、こうしてやってくるのです。

なぜでしょうか。





ベル様は、その報告を面倒くさそうに聞き流しておられます。

生返事しか返しておられませんもの。


聞き終わったら、とっとと報告していた兵士を追い出してしまわれました。



その後、お行儀悪く机に両足を投げ出され、何やら考えておられる様子。

私、黙ってそれを見守っておりました。



しばらくして、ベル様は「よしっ」といって、執務室を出て行ってしまわれました。

私、勿論後を追いました。



辿り着いた所は、獣の所でした。

何をするのかと思ったら、ベル様は獣と御戯れになっておられます。

どうやら、獣と何をして遊ぼうかとか、そういったことを考えておられたようです。


獣との御戯れは、それはもう凄うございました。

壁がもげ、草木は薙ぎ払われ、地面には大小さまざまな穴が空き、空気は振動して風が吹き荒れています。

まるで、この周辺が破壊しつくされそうな勢いです。(実際破壊された


私ですか?

当然吹き飛ばされましたわ。


ベル様は私がいたことにこれっぽちも気づかず、楽しそうに獣と遊ばれておられます。



ベル様、獣じゃなくて、私と御戯れになってくださればよろしいのに…



遥か遠くの木の枝に逆さに引っかかりながら、遠視の能力でベル様と獣を見守ります。

こうやってベル様の成長を見届けるのも私の務めでございますゆえ。



…あら?

急にベル様と獣の上に暗雲が立ち込めたかと思いますと、眩いほどの光が迸りました。

どうやら、誰かが魔法で落雷を発生させたようです。


もうもうとした土煙が晴れた先には、宰相に怒鳴られているベル様と獣の姿が見えました。

ベル様は何か言っておられますが、今回は宰相に軍配があがりそうですわね。


ベル様は宰相に引きずられお城の中に消えていかれました。

獣はというと、しばらくその場でびくびく震えていましたが、そのうち自分の寝泊りしている厩舎へと帰っていったようです。



私はというと…


どうしましょうか…



木にぶらさがったまま考えます。

私、空を飛ぶことができませんの。


ここからお城までは距離がありますし…

落下することは簡単ですが、そこから歩くとなると少々骨が折れますわね。


悩んでここにいても仕方がありませんので、落下地点の確認を行い、行動をしようとしたところで愛しい方の声が聞こえましたの。

何をしているのかと聞かれましたので、木にぶらさがっていることを伝えると、「そうじゃなくて、なんでこんなところでぶらさがってるんだ」と呆れた声で言われました。

ありのままを説明致しますと、ベル様は「そ、それはすまなかったな」、と私にはもったいないお言葉を頂き、私を木から救い出してくださいました。

私、本当に本当に嬉しくて。

ぎゅーっとベル様に抱きつきましたの。


ベル様は困った顔をされるだけで、引き剥がしたりせずにお城まで連れて行ってくださいました。



城に着いて私を下ろすと、罪悪感があったのか、私に何かしてほしいことはあるか、とお尋ねになられましたの。

私、即座にお願い致しましたわ。

なにをって、獣とではなく、私と御戯れになってください、と。


ベル様はとてもびっくりした顔をされた後、「では、戯れるか」と意地の悪そうな顔でおっしゃります。

私、是の言葉に天にも昇る気持ちでその言葉を聞きましたわ。






オチですか?

勿論ありますよ。


その後は、ベル様と遊ばせて頂きました。

…つまり、私の「戯れる」とベル様の「戯れる」は違った訳ですわ。


少しがっかりいたしましたけれど、ベル様と一緒にいられるだけで幸せです。




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