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diary7


今日は朝からお城が騒がしく、何事かと思っているとベル様が手入れの行き届いた庭園を歩いておられました。

一人ではありません。

隣には、知らない女性(女児?)がおりました。


2人で仲睦まじく歩いているではありませんか。

私、大層ショックを受けてしまいまして、こっそり後を付けることに致しましたの。


あの女はどこの誰ですか。



2人は始終和やかに笑みを浮かべ、お話を弾ませていらっしゃいます。

遠くてお話の内容まではききとれませんが、読唇術(侍女の必須科目です)から大体の話の内容は予想できます。

どうやら、ベル様の昔馴染みのようですわ。

ベル様が魔王の座に納まり、彼女は都合を付けて会いにきたようです。

話の内容も、だいたいが故郷の話のようでした。


ベル様は私がみたこともないような優しい笑顔を浮かべており、幼い彼女に嫉妬を覚えます。



これ以上私、見ておれませんでした。



侍女の仕事をするべく、城内へ入りました。

けれど、当然仕事が手に付くはずもなく、どうしても2人が気になるのです。


結婚するなど言われたらどうしましょうか。

私、発狂してしまうかもしれません…



その日、彼女は遠方から来たということで城に宿泊なさるようでした。

どうやら、ベル様が勧めたようです。


私、嫌でしたけれどベル様の命令です。

侍女としてお部屋を準備させていただきました。

雑にこなすことだけは侍女としての矜持が許さず、完璧に仕上げます。



お部屋の準備ができたとベル様にお知らせに参りました。

ベル様と彼女は、城内のサロンで寛いでおられました。

声をかけると、「ご苦労」とベル様に労いの言葉をかけていただき、彼女を案内するよう仰せつかります。


私はベル様といたいのです。

じっと見つめましたけれど、その思いはこれっぽちも伝わらなかったようです。


表情には出さず胸中で嘆息して、彼女を客間へご案内致しました。


その間彼女は一言もしゃべりません。

部屋へ辿り着くと「ありがとうございます」と小さくお礼を言われました。


彼女を改めて観察します。

目と髪の色は赤茶色、腰ほどまで伸び、艶やかです。

ベル様と同じくらいの身長で、愛らしい顔立ちをされています。

その顔は、真っ赤に染まっていました。


どこに恥らう要素があったのでしょうか…

疑問が募りますが、答えが解るわけではないのでその疑問を放置します。


彼女は頭を下げると、ささっと扉の中へと消えてしまいました。



私、とりあえず彼女が誰なのかベル様の口から聞きとうございます。

足早にサロンへと来た道を戻りました。


サロンについた頃にはすでにベル様はおられませんでしたので、ベル様のお部屋をお訪ねしました。


ノックをして名乗ると「入れ」と返事が返ってきます。

部屋の中で、ベル様はご機嫌そうに寛いでおられました。


単刀直入に聞きましょう。


ツカツカとベル様の目の前まで歩いて、膝を付きます。

彼女が誰なのか尋ねると、「ルーだ。ルーラミルティ。俺の妹だ」と簡潔なお返事を頂きました。


妹。


しばらく頭の中でその事実を反芻して、飲み下しました。


妹君でございましたか。


私、心底ほっとしております。


結婚する、未来の婚約者だ、などとベル様の口から聞くことがなくて良かったと。




私、ベル様をお慕いしている感情がいかに大きいか思い知りましたわ。




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