diary5
今日、ベル様の生誕祭が行われました。
御年9歳になられました。
初めてお会いしたときより、少し背も高くなられ、魔王様として板についてきたように思います。
ベル様は集まった皆様にご挨拶をされ、その後はご飯を食べ酒を飲みゆったりと過ごしておられました。
時々、ベル様に声をかけている方もいらっしゃいましたが、概ね平穏に時間は過ぎていきました。
生誕祭が終わり、片付けも一段落ついた頃にベル様に呼び出されました。
どうされたのかと思いお部屋へ伺うと、赤い顔をして椅子に座り、酒の入ったグラスを傾けていらっしゃいました。
私をご自分の前の席へ座るよう言われ、そうしますとグラスを差し出されました。
お前も飲め、とおっしゃられますので、一言断りを入れてからお飲みしましたの。
そのお酒が存外アルコール度数が高いようで、美味しいのですけれど酔いが回ります。
私、お酒はあまり強くないのです。
ベル様を見ると、赤い顔でおいしそうにお酒を飲んでおられました。
じっと見ていますと、ベル様と視線が合いました。
すると、お顔を近づけてきて口付けられました。
それと同時に口移しでお酒を飲まされました。
いつの間にそんなことを覚えたんだと思いましたけれど、ベル様からのお酒を飲まないことなんてあるはずもなく、おいしく頂きました。
どれくらい唇を合わせていたのか、お酒が回っているせいでよくわかりませんが、とりあえず気持ちがいいです。
ふと離れた唇はすぐにベル様のそれに塞がれて。
私、年甲斐もなくベル様の口付けに翻弄されてしまいましたの。
お酒の力もあったのか、とりあえず身体がふわふわしてしまって、腰砕けの状態になってしまいました。
そのうちベル様の身体の力が抜けていき、私の胸に体を預けて眠ってしまわれました。
…これで終わりですか?
なんて、言えませんよね。
ベル様を寝台に寝かしつけ、私も自分の部屋へ帰って寝ることにします。
次の日、昨日はありがとうございました、とお礼を言うと、ベル様は首を傾げて考えておられます。
まさかとは思いますが。
でも、そのまさかでした。
ベル様は何も覚えておられませんでした。
どうも、生誕祭が終わって自分の部屋に帰り、酒を煽り始めたところまでは覚えているらしいのですが、私を呼んだことは記憶にないとおっしゃられました。
恐々と、「呼んだのか?」「俺は何かしたか?」としきりに尋ねられますので、ありのままをお話致しました。
私、酒を飲んで酔っても吞まれたことも記憶を失くした事もありませんの。(少し自慢
するとベル様は顔を真っ赤にしてそれを隠すように手で覆い、「忘れてくれ」と小さくおっしゃられました。
えぇ、忘れることがあるはずないじゃないですか。
しっかり日記に書きとめておきますとも。