004-000 夢か現か②
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* 木々を避けて、走る。
* 獲物は、目の前にいる。
* アレは、上物。
* 黒い化猫は、強者の氏族の証。
* さぞかし、美味しいだろう。
* 命をかけた、追いかけっこが終わる。
* ソレが、叫ぶ。
* 『レン! 今の内に逃げて!!』
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パッと目を覚ましたのは、既に外が明るくなり始めていた頃だった。
私は稀にこのような夢を見る。現実味があり過ぎて、実際に夢の中と同じような格好で目覚めることが多かった。今もまるで動物のような体位で、ぬいぐるみを獲物に見立てたかのように強く左手で掴んでいる。
でも、いつも思い出せないのは、それに至るまでの前提。
さっきまでの夢だって、鮮明の割には私が動物になる経緯が解らない。まして妖怪の化猫を捕らえるなんて、普通の動物ではないだろうし。
考えながら準備をして、帰路とは逆の順路で学校に向かう。
もっとも、最近は夢のお陰で早朝に目覚めてしまうことが多くなってきている所為で昔ほど遅刻はしなくなったし、誰も居ない教室での読書は何とも言えない優越感に浸れたので、授業中に寝る頻度は多くなっても特に問題はなかった。
しかし、今日に限っては先客が居た。それも、出会ったばかりにも関わらず面倒そうな相手と知り、教室に入ることを躊躇ってしまう。
「そないな、あからさまに拒絶せんでも」
「するわ!」
思わずツッコミながらも溜め息をつく。
「何でおるの?」
「おったら悪いんか? っちゅうか、ウチの教室やし」
「せやのうて ……」
「朝早いと静かやん? 喧騒は苦手やで」
「何か、期待外れというか ……」
「昨日の集会が?」
私は黙った。花菜子は私の心境を解っていて敢えて言ったのだと思う。
「まぁ、気にしのうてええと思うで。しばらくは任務といっても、個々に課されるようなことはないはずや」
「せやね」
私が自席まで歩んで鞄を置くと、花菜子が思い出したかのように手を打った。
「そういえば、関西弁、直さへんの?」
昨日は色々とあり過ぎて、すっかり忘れていた目標を思い出す。
まぁ、昨日まではそのうち治るとは思っていた。でも、関西弁を使う花菜子の傍に居れば、恐らく釣られて使ってしまう気はする。
ただ、
「それもまた一興かな」
考えずに出た言葉が本音なのだろうと思った。
それからは、自然と花菜子と共に行動することが多くなった。
校内では任務や仕事の話はほぼしない。いや、実際には花菜子との会話から、この学年には既に数名の ”監視役" が居ることが解ったので話さない、という言い方が正しいかもしれない。ただ、花菜子も相当な読書家らしく、主に本の話題で盛り上がることが多かった。
しかし、花菜子は私以外のクラスメイトには警戒しているようで、特に猪塚に対しては、猪塚から珍しく声をかけても睨み付けるだけで返事すらしなかった。
気にはなっていたものの、花菜子の様子から他人が怖いのだろうと感じていただけに、私もどうすればいいのか解らなかった。
それが大きな事件になるとも知れず。




