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003-000 鬼の隠れ里

 海近くの山上公園に入り、複数個所に跨る特定の場所で決められた魔法陣を発動させることで、隠れ里への門が開く。

 門の中は全面真っ白の箱のような狭い部屋に見えるが、そこで外出を許可された際に渡される通行手形を利用した魔法陣を描くことで、異界への最後の門が開く仕組みになっている。


 門番に通行手形を見せて個室に通してもらい、そこで着用を義務付けされている上半分の黒い面を装着する。この黒い面は鬼の面と異なり、魔法石と呼ばれるモノから造られている物質なので、物質を気体化する固有の能力を持たない限りは、常に所持していなければならないモノだった。

 ちなみに、私のお父さんは黒い面を開発し、今も製造し続ける里唯一の研究者。しかし、製造方法は死神様と幹部、お父さんくらいしか知らない機密事項なので、その代償として私は幼少期から里の中での1人暮らしを強要されている。


 里で支給されている私服に着替え、無事に関門を通過して自宅に急ぐ。


 全体的には江戸時代の大きな屋敷を想像してもらえば里以外の人間には解りやすいかもしれない。

 門を出れば漆喰の壁が存在し、左右に縦断する廊下が3本。それが里を取り囲むように存在する。一番手前の廊下は主に侵入者への対策を講じる為に存在し、一番奥の廊下を右折すれば研究所、左折すれば学校や商店街がある。中央の廊下は住宅地に続いているが、右の方面は主に幹部が住んでいて、更に奥には死神様が住まう城が存在している。当然ながら監視の目も厳しいので滅多なことでは右折はしない。

 私ももちろん、中央を左折して白い壁の合間を進んだ。


 やがて古いアパート、又は団地のような約5階建ての建物群が見えてくる。古くて狭い部屋は2階建てで、新しくて広めの部屋は7階建て。一般的な団地とは異なり、住所が存在しないので、建物に割り振られた番号は無い。が、代わりに1層ずつ階段の色が異なるので、その色の組み合わせなどで自宅を記憶していた。ちなみに、私の建物は珍しい3階建て、色も紅白なので覚えやすい。

 自宅に戻ると真っ先に明日の準備をし、支給されている服装に着替える。里では、上半分が隠れる黒い面と黒い服が基本的なスタイルで、私服を着れるのは外界へ外出を許可されている者だけと定められている。これも、人間以外の妖怪が容姿に囚われずに仲間意識をもって仕事をする為だと死神様はおっしゃられていた。


 自宅を出て、時計回りで城へと急ぐ。黒い面から鬼の面への切り替えは、素顔を見られずに出来るのであればどこで行っても問題はなかった。なので、中央広場で行われていた謎の儀式を傍目に切り替える。

 なお、周囲にも同じように切り替えを行う者は多かったので、基本的に他者を気にすることなどないのだが。


「(花菜子は既に中に居るのだろうか ……)」


 などと思っていた私がいて驚いていた。

 もっとも、挙動不審な行動は極力避けなければならないのが里の掟。一度、花菜子のことは忘れて集会の内容に集中することに決めた。


 集会の内容は、鬼の面の仲間が各色1人ずつ、計3人増えることと、死神様への報告の時間割を変更することの2点だけだった。

 ちなみに、赤色系の鬼の面は特攻隊で、青色系の鬼の面は里や要人の防衛隊。その2色は緑色系の隠密とは異なり、黒い面しか与えられていない住民から勝手に臨時チームを編成して率いることが許可されている。

 しかし、私はそのことよりも、紹介された新しい鬼の面の3人が、花菜子の言う通り円と瞳と純の3人なのではないか、と勘繰っていた。だが、残念なことに鬼の面を装着すると大元のオーラの色は変化してしまう。だから特定には至らなかった。それに、この件からも花菜子が幹部であることはまず間違いない。


 自宅に戻ると先客の気配がした。が、何故かオーラが解りにくかったので訊ねる。

「キイロか?」

 問われた先客は私の前に姿を現した。羽生 黄(はにゅうきいろ)―― 外界では何者かに追われている存在らしく、身を隠す為に私と義理の姉妹の契りを結んだ、血の繋がらない妹。もっとも、私の義理人情ではなく死神様から命じられた護衛の任務中に家主から頼まれたことが事の発端。

 しかし、黄の実力は相当なモノで、今では死神様の妻、女神様の侍女を任されているらしい。女神様は城内にいらっしゃるので、当然ながら私よりも内部事情に詳しい。


 そんな黄が自宅に居る時は、大概は何かしら、大きな仕事を頼まれる時だけだった。それも、女神様からの秘密裏の仕事が多い。今回もそのあたりだろうと直感した。


「どうした?」

「・・・」


 口を開きかけた黄だったが、しばらくして口を閉じてしまった。


「…… 確認、しに来ただけ」


そう呟いてどこか悲しそうに微笑んだ。


「確認? 何の?」

「任務に失敗していないか、どうか」


 女神様が外界に出たがっていることは、何となくは知っていた。元々外界の、それも有名どころの氏族の血筋だとは耳にしている。しかし、死神様の許可が下りないらしく、実家に帰れない現状を嘆いているらしい。

 だが、そういう住民はごまんと見てきた。そして悪化した者は死神様の指示で処分し続けている。

 もっとも、流石の死神様でも妻を処分する気はないのだろう。随分と前に死神様に咎められ、仕方なく女神様から預かった手紙を渡したこともあるが、その1通以降は見逃してくれているのか、門番に発見されても死神様に咎められたことはない。

 が、このことは黄にも、女神様にも伝えてはいない。


「伝書鳩くらいなら、例え失敗しても処分はされないと思うけど」

「そうね。貴方なら心配は無用でしょうね」


 答えた黄はそのまま窓から立ち去ろうとした。なので引き止める。


「学校には馴染めそう?」


 黄は無言、無表情で振り返る。が、すぐにその場を去って行った。

 理由は聞かなかった。でも、何故か死神様の許可を得て、黄は私と同じ学校に入学することになった。どうやって許可を貰ったのかは解らない。ただ、女神様が本腰を入れて『外界で何か』しようとしているのだとは思う。その為には、私ではなく黄という存在が必要になったのだとは思う。


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