童子丸5歳
安倍晴明の幼少期の姿を、これまでの話より真実に近く話しています。
童子丸(5)には、5歳年上のお姉さんがいた。
名前は、竹田 真葛(10)。真葛は、運動神経がとびぬけて良かった。
真葛の父親の竹田豊作(36)は、『和泉だんじり』が好きで、大阪府和泉府中に住むと決めたのだった。豊作の血筋を遡ると、加賀藩の馬番の竹田権兵衛が祖先だった。
竹田家よりも少し上流階級の山内家の長女の山内みや子(33)は、童子丸の母親で、本を読むのが大好きな才女だった。(この話には関係ないが、童子丸の母親の妹の話では、著者の庚と、みや子は飄々とした雰囲気がとても良く似ているようだ。)
竹田豊作と山内みや子は、恋愛をして、金沢から大阪府に移動した。先祖からは祝福されない恋だった。この時代の中流階級の一軒家を建てて、童子丸と真葛を産んで幸せそうに暮らしていた。
竹田の家の近くには、信太の森があった。童子丸と真葛は、ここを遊び場にしていた。
真葛は、魚とり用の大きな槍を持って、小川で夕飯用に、鮎を取っていた。真葛はとても運動神経が良く、二つの物体の重心が重なった時が感覚的に分かるのだった。真葛が鮎を仕留めると、近くで見ていた童子丸が、「お姉ちゃん、すごーい」と声をあげた。
真葛と童子丸は、運動がとても得意だった。時間があれば、信太の森に行って、槍を使ってチャンバラごっこをしていた。
真葛「童子丸は、全然私に勝てないな。」
童子丸「姉様が強すぎるんだよ。もっと手加減してよ。」
真葛「お前は、男に産まれた。敵に隙を見せると、殺されるぞ。もっと精進しなさい。」
真葛が話し終わるのを待たないで、童子丸が真葛に切り込んだ。
童子丸「やーっ‼」
真葛「隙だらけですよ。男の子なのに、だらしない‼」
真葛は、童子丸の後ろに回り込んで、槍の持ち手の方を童子丸の首と背中の境目に当てた。
童子丸「降参、降参、姉様には勝てないなぁ。」
と、槍を捨てて両手を挙げて、肩をがっくりと落とした。
森の木が茂っている方から、ガサガサと物音がした。
真葛「童子丸、槍を持て‼何か来るぞ‼」
童子丸「はい。」
ガサガサという音は大きくなり、一匹の猪が真葛の方に猛突進して来た。
真葛は、猪をよけて、大きく上にジャンプした。
童子丸は、槍を持って固まっていた。
猪は童子丸の方に、向きを少し変えて、突進して来た。
童子丸は、猪の頭に槍をさした。
猪は槍を刺された痛みで唸り声をあげて、槍を抜こうと頭を振った。
次の瞬間、真葛が猪の背中の上にジャンプして、物凄い力で猪の心臓めがけて、槍をさしていた。
猪は動かなくなった。
童子丸は、猪の頭に刺さったままの槍を持って、ペタンと座り込んだ。
童子丸「あ、あ、あねさま、お見事です。」
真葛「童子丸、一人で来ていたら、死んでいたかもしれませんね。」
童子丸「僕は、姉様についていきます。この御恩は、一生わすれません。」
真葛「はいはい、わかりましたよ。この猪を家に持って帰って、夕飯にしましょう。」
童子丸「はい。」
真葛は、猪の前足を持った。童子丸は、猪の後ろ足を持って家まで運んだ。
母親のみや子は、「正しい日本語を綺麗に話しなさい。」といつも言うので、二人は敬語で話す事が多かった。
みや子は、家に近づいてくる二人の気配に気が付いて、家から出てきた。
みや子「真葛、猪を仕留めたのかい?」
真葛「はい。お母さま、今日は猪を焼いて食べましょう。」
みや子「二人共、下ごしらえを手伝ってくださいね。猪の肉は臭いからね。下ごしらえをちゃんとしない と食べられませんよ。」
真葛、童子丸「はい。お母さま。」
真葛「お母さま、お父様には、童子丸が猪を仕留めた事にしてください。お父様に、また真葛が仕留めた。と言うと、お転婆過ぎて、お嫁に行けるか心配されますから。」
みや子「(クスッと笑って)大丈夫、言いませんよ。」
みや子は、子供との約束をしっかり守る母親だった。みや子が「言わない」と言うと、絶対に言わない。
真葛は、安心して、「お母さま、ありがとう。」
家の外で、焚火を焚いて、猪を焼いた。
豊作が帰ってきて、「今日は、ご馳走だな。真葛のおかげだな。」
童子丸「お父様、今日は、姉様じゃなくて、僕が仕留めたんです。」
豊作「そうか、そうか、童子丸も大きくなったなぁ。」
と、童子丸の頭を撫でた。
童子丸「お父様、信じていないのですね?」
豊作「よくやった、童子丸。おかげでお肉がお腹いっぱい食べられます。」
真葛は、自分の功績にならないで、内心ホッとしていた。
これを書くのに、安倍晴明の話を参考にしています。また、自分の家族の血縁を調べるのに時間がかかり、連載は少しずつになりそうです。辛抱強い、読者の皆様、有り難うございます。




