00『最強の種族は何か?』
プロローグ
地表より一万メートル上空。
雲海のさらに上に、石造りの古城は浮かんでいた。
その最奥、煌びやかに彩られた王座に腰掛けるのは、ただ一柱。
天地を創り、世界の理を定めた最高神グレイドである。
彼は天井を仰ぎ、愉快そうに口角を上げた。
「なあ、セフィル。
最強の種族とは、どの種族だと思う?」
玉座の脇に控えていた一人の女性が、わずかに視線を動かす。
名をセフィル。神々に仕える神人種の一柱。
「……その問いに、今さら意味はありません」
「つれないことを言うな」
グレイドは肩をすくめ、続ける。
「世界最大の大陸、ウラギ大陸。
その全域を支配する、風と森の民─風人種か?」
「否」
即答だった。
「ならば、霊峰デガンジャにて、
一生を鍛錬に捧げる巨人種はどうだ?」
「否」
声は先ほどよりも冷たい。
「では、大いなる空の覇者。
領土を持たぬ竜人種か?」
「……否」
三度目の否定には、隠しきれない呆れが滲んでいた。
「では――」
「結論は一つです」
セフィルは言葉を遮り、淡々と告げる。
「最強の種族とは、
天地を創造せし神の血を継ぐ、我ら神人種。
それ以外にあり得ません。世界の常識です」
「まったく……」
最高神は頭を掻き、つまらなそうに笑った。
「少しは遊び心を持てぬものか。
まったく─いじりがいのない」
短い沈黙が流れる。
やがて、彼はふと思い出したように問いを重ねた。
「ではセフィル。
二番目に強い種族は、何だ?」
セフィルは大きく息を吐き、答えなかった。
その問いの答えを――神々でさえ、まだ知らないからだ。
だが、いずれ明らかになる。
時が、それを示してくれる。
かの『祭』の開催まで、残された時間はわずかだった。
最高神グレイドは、青ざめた表情で控える従者たちをよそに、
まるで未知の地へ旅立つ少年のような笑みを浮かべる。
「次は、どの種族が二番目になるのか。
余は、楽しみで仕方がない」
─『第十回神位血種祭』開催まで、あと十五夜─
作者コメント
作品完結目指してほどほどに頑張ります!




