表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/15

第一話 拾ってはいけない鞄



夕方、通学路の脇にそれは落ちていた。

黒いアタッシュケース。誰かの忘れ物にしては、やけに古びていて、金属の部分には焦げ跡のような黒いシミがついている。


「なんだこれ……?」


高校二年の**真木陽斗まき・はると**は、しゃがみ込んでケースを手に取った。

意外に軽い。鍵もかかっていない。


少しだけ――ほんの、好奇心で――開けてみた。


中には、銀色のベルトのようなものと、奇妙な形の装置がいくつも並んでいた。

筒状のもの、カードリーダーのようなもの、液晶が光る小さな端末。

どこか、特撮ヒーローの“変身アイテム”を思わせる。


「……オタクのコレクション? って感じか」


呆れながらも、陽斗はケースを閉じ、近くの交番へと歩き出した。



---


交番の中。

対応したのは四十代くらいの警察官。

どこか覇気のない目で陽斗の顔を見つめ、淡々と尋ねた。


「拾得物、ね。中身は確認しましたか?」


「はい。なんか、変身ベルトみたいなおもちゃが入ってました」


その瞬間だった。


警察官の目が――赤く光った。


「……視たのか」


低く、濁った声。

背中の制服が裂け、無数の黒い脚がうねるように伸び出した。

皮膚がひび割れ、骨が変形し、

瞬く間に“蜘蛛の化物”がそこにいた。


陽斗は言葉を失い、ただ後ずさる。


「な、なんだよこれッ……!」


机が弾け飛び、蛍光灯が割れ、闇が一気に満ちていく。

その手にはまだ、アタッシュケースがあった。


そして――ケースの中の“ベルト”が、淡く青い光を放ちはじめる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ