表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/15

第13話 Ωコード・リライト ― 記録の境界 ―



世界は、裏返っていた。


空は黒く、海は赤く。

街の建物は上下逆さまに浮かび、時計の針が逆回転する。

悠真は瓦礫の上に立ち尽くしていた。

周囲に広がるのは、記憶と現実が混ざり合った“記録の裏側バックコード”。


> 『……ここが、世界の“裏面”。

記録が書き換わる前の層――存在の原文だ。』




「原文……? つまり、俺たちの現実は“上書きされた世界”だったってことか。」


> 『そうだ。そして、オメガはその“ペン”だ。』




遠く、空に巨大な光の裂け目が浮かぶ。

その中心で、オメガが静かに立っていた。

人の形をしているが、その輪郭は常にノイズで揺らぎ、誰にも確かな姿を見せない。


> 「……Z、行くぞ。今度こそ終わらせる。」




> 『ああ。俺たちの記録は、俺たちで上書きする。』




ベルトが反応し、悠真の身体を白と黒の光が包み込む。

二つの記憶が完全に融合する瞬間――

内部で何かが弾けた。


> 『システム統合――成功。新形態、コード:デュアルレコーダー。』




金属の音が響き、装甲が変化する。

白と黒が交互に重なり合う、双極の戦士。

その両目には、赤と青――YとZの記憶が共存していた。


「行くぞ、オメガァァァァァ――!」


轟音。

二人の拳がぶつかるたび、時間の流れが歪む。

過去の景色、未来の断片――全てがこの戦いの中で再生と消失を繰り返していく。


> 『Y……思い出せ。お前が最初に望んだ願いを。

戦うことじゃない。“記録すること”だ。』




「記録……?」


> 『そうだ。この力は破壊のためのものじゃない。

失われたものを、もう一度“書き留める”ための力だ。』




悠真は目を閉じた。

頭の中で、母の声が聞こえる。


> 「人の記憶はね、誰かが覚えている限り、消えないのよ。」




その瞬間、ベルトが純白に光を放った。

オメガの攻撃が止まり、黒い世界に亀裂が走る。


> 『コード・リライト――起動。』




悠真の意識が拡張し、全ての記録が光の粒となって舞い上がる。

失われた街、人々、笑い声――

一瞬だけ、世界が元の形を取り戻していった。


> 「……これが、“記録の力”……。」




オメガは静かに目を閉じる。

その表情は、どこか安らいでいた。


> 『……やっと、完全になれたな。Y、Z、そして俺。

これで――記録はひとつだ。』




光が収束し、すべてが静まり返る。

気づけば悠真は、あの日拾ったアタッシュケースの前に立っていた。

周囲は元通りの街、朝の光が差し込んでいる。


「夢……じゃないよな。」


> 『夢じゃない。お前が選んで“書き直した現実”だ。』




悠真は微笑んだ。

空の青さが、涙で滲んで見えた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ